13.
次の日、俺は病院にいた。
奇跡的に刺し傷の場所が良く、そしてすぐに病院に運び込まれたため1日で意識を取り戻したのだろう。
「調子はどう?」
一日で全治するわけがなかった。
だから、調子が良いはずはなかった。
「うん、大丈夫」
しかし、強がってそう答えた。
「あの」
いきなりだったが俺はそう切り出した
「なんであの時俺の事を庇って助けてくれたの?」
俺の前には病院のベットに横たわる神崎がいた。
包丁を持ちフードを深くかぶった女性が俺の近くまで来た。
あ……刺される……
俺はそう思っていた。
奴が俺を刺そうと素早く近づこうとしてきた時だった。
「駄目!!!」
右から声が聞こえ、俺は勢いよく左に飛ばされた。
『うっ!』
俺ともう一人のうめき声が重なる。
地面に手を着きながら飛ばされた方を見るとそこには制服姿の神崎がいた。
その体からはナイフが生えていた。
「あぁ!?」
俺は目を見開きそれをしたであろうフードを見る。
奴は動揺しているようだった。
「てめえええええ!!」
俺は他人が刺されたのを客観的に見たからかすぐに体が動いた。
立ち上がり奴に型も何もない怒りに任せて腕をフルスイングする。奴は神崎の北方向に避ける。
俺の大声を聞きつけたのか近所の人が窓を開ける音が聞こえる。
奴はそれを聞き神崎のナイフを取ろうとするが俺が神崎と奴の間に立ちそれを許さない。
奴は諦めたように神崎の来た方向に逃げた。
一瞬追いかけそうになったがすぐに刺された神崎を思い出す。
「おい! なんで! なんでお前が!」
俺はただ叫ぶだけだった。
「良かった」
神崎は蚊の鳴くような声でそう言って薄く笑った。
「きゅ、救急車! 誰か救急車を呼んでくれ!」
俺は叫んだ。近くに住んでいたであろうおばさんがこちらを見て口を手で押さえていた。
「おい! 救急車を呼んでくれ! 早く!」
俺は焦って自分が携帯を持っていることも忘れていた。
おばさんが走って家に戻った。
「おい! しっかりしろ! 今救急車呼んだから!」
俺は神崎に向かって叫んだ。
「うるさいですよ。痛いだけですから」
「そんなのんきなこと言ってる場合かよ!」
俺がどうしたらいいか迷ってると救急車のサイレンが近づいてきた。
救急隊員の手際は見事なものだった。
「君はこの子の家族かい!?」
「いえ、でも俺を庇って、それで……」
俺はしどろもどろだった。
「君も乗りなさい」
俺も救急車に同伴したが見ていることしかできなかった。
病院に付くと神崎は治療室に運び込まれた。
俺も突き飛ばされた時の傷を軽く処置してもらうと、俺と神崎の名前や住所などを聞かれ、神崎には家族に電話するからと言われ俺は帰らされた。
家に着くと妹は呑気にテレビを見ていた。
「なんで今日は遅くなったんだ」
八つ当たりだとわかっていたが俺は怒ったように言った。
「え? 今日遅くなるよってメールしたじゃん! お兄ちゃんこそ何でこんな時間に帰ってきたの?」
と言う亜衣。
メール、最近のものしか確認をしていなかったから妹のものが混じっていたのに気付かなかったのだろう。
「そうか、気づかなかった」
俺は自分の部屋に向かった。
「なんで怒ってるの? 夜ご飯食べないの?」
「……いらない」
俺はそっけなく答えると自分の部屋に戻って布団に入った。
神崎のことを考えていた。
なんで俺を庇ったんだろう。
あのフードをかぶった人はストーカーだったのだろうか……
もし神崎が死んだら……
俺は考えないようにした。
次の日俺は無断で学校を休んで病院に向かった。
途中でお見舞いの花を買った。
病院の受付で部屋を聞いて神崎の名前の書かれた札のある部屋に入り、ベットに近づく。
「ぁ……」
神崎は俺を見ると嬉しそうな顔をした。
それを見て、初めて俺は神崎に笑顔を見せた。
救急車が来た時ってどんな感じなんでしょう??
実は自分一回も救急車乗ったことないのでわからないです・・・想像で(はぁと