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11.

 眠れなかった。

 まったく眠れなかった。

 あの後考えてもしょうがないことをずっと考えて、寝たら悪夢を見てすぐに起きてを繰り返していた。

 学校には少し早いが今は家族と顔を合わせるのも嫌なので俺は準備を始める。

 机の上には昨日買ってきた目覚まし時計があった。

 結局今日は使わなかったな。

 そんなことを思いながらダイニングに行きパン一枚と牛乳コップ一杯を食べると机に用事があるから早く学校に行く、と書置きを置いた後に家を出た。

 恐る恐るポストを確認するが異常はなく、周りを確認しても異常はなかった。

 とても眠いがまだ朝早いので学校についてから眠ろうと思い、学校へ向かった。

 


 学校に付くと運動部の朝練の声が聞こえる。こんな朝早くに始めているのかと思いつつその元気のある声は俺の不安を拭ったようで教室の自分の席に着くと猛烈な睡魔に襲われ泥のように眠った。

 


 「あれぇ? 今度は早く来すぎたのか? ほれ、起きないのかー……って、爆睡してるよ」

 後ろから声が聞こえたような気がしたが俺はそのまま眠り続けた。


 

 …………

 


 なんだかほんのり甘い香りが鼻をくすぐる。

 なんだか心地よい夢を見ていたがそんな時に限って目は覚めるもので、今回も例にもれず目が覚めた。

 周りがざわざわしている。

 パチリ、と目を開けると目の前に女の子の顔。

 爆睡していた俺の脳はいまだ再起動ならず。誰だろうなぁ、可愛いなぁなどと考えていた。

 そうして顔と見つめ合ったまま15秒ほど経過すると俺の脳は再起動を開始した。


 「ほわっ!!」

 「ひゃっ!」


 二人して奇妙な声を上げのけぞる。

 目の前にあったのは神崎の顔だった。


 「な、な、な、なんで? なにが? なんで?」


 俺の脳は混乱していた。

 そこに突然神崎が爆弾を投下した。


 「あのっ、高橋くんって童貞だよね?」

 「そ、そうだけど、ってはい?」


 俺の脳は混乱によって素直に答えていた。


 「そうだよねー、えへへ」


 神崎はそんなことを言いながら可愛い笑顔をさらしているが、質問の内容が外道じみているというか、普通聞かないような質問だった。

 正直に言って常識的ではなかった。

 というか、公衆の面前で童貞発言をさせられた!?

 周りを見渡すと聞こえていたようでさまざまな表情をしたクラスメイトたちがいた。

 笑ってる女子や不思議な顔をしている男子、驚いている男子。

 あぁ、嵌められた!?

 神崎を見ると薄く笑いながら右上に目線を向けていた。

 やっぱり俺のこと嫌いなのか、でも普通ここまでするか?


「あれぇ? 高橋起きてる、ってゆうか神崎さんと話してる?」


 未皐が部屋に入ってきたらしくこちらへ歩いてくる。

 もう一度周りを見渡してみると、どうやらお昼休みに入っているようでそれぞれが弁当などを広げていた。


「俺がお花摘んでる間になんかあったのかぁ?」


 と未皐が言う。


「あっ、それじゃあ……」


 と神崎が言うとそそくさとクラスを出ていった。

 そして未皐が後ろの席に座って話しかけてくる。


「おいおい、いつの間に神崎さんと話すような仲になったわけ? 最近嗅ぎまわってたのと関係あるのかよぉ?」

「……なんでそうなるんだよ……」


 俺は力なく答える。俺はまだ混乱していたし、色々なことが起きて頭が痛かった。

 未皐が頭にクエスチョンマークを浮かべているとクラスの男子が近づいてきた。


「いやな。いきなり神崎さんが高橋の近くに行ったかと思ったら顔を近づけてな! 俺らが何事かと思って見てたらよ、顔を近づけたもんでそりゃもうみんな注目したわけよ。したら高橋が起きて二人してびっくりしたと思ったら突然神崎さんが高橋にその、ど、DTかどうか聞きだしたんだよ。俺らも混乱するくらいだから高橋は相当だろうよ。」


 わざわざ説明ありがとう山下くんよ。


「ほえぇ?」


 未皐は変な声をあげながら首をかしげていた。


「それは確かによくわからないなぁ、最近神崎が妙な動きをしているとは思っていたがお前最近神崎となにかあったのか?」

「いや……無い事もない……な」


 こうなってる理由で思い当たる節はなかったが、神崎とのアクシデントは確かにあった。


「おいおい、まじかぁ。詳しく教えてくれよ」


 俺はストーカーの件も悩んでいて話すかどうか迷ったがとりあえず神崎のことだけを未皐に話すことにした。

 山下くんのほうをちらりと見ると


「あ、俺は聞かない方が良いのかい」


 と言うと席へ戻っていった。




「なるほど」


 未皐は頷きながら言った。


「なにか分かったのか?」


 未皐のその仕草に期待したが。


「いやぁ、全く分からないよ。うん。疑問はたくさん増えたけどねぇ」

「はぁ……」


 その回答にため息をつかざるを得なかった。


「そんなにあからさまにがっかりされると傷つくなぁ……一応お前のために考えてやってるのに」


 ありがたいと思うが実際俺の悩みはこれだけじゃなかったから相当気分はブルーだった。


「悪いな」


 ふと昼休みなのを思い出し時計を見るとすでに昼休みもあと3分程で終わろうかという時間になっていた。


「うわ、飯食ってない……」


 さらにブルーだった。


「ご愁傷様だなぁ、そもそも寝過ぎだぜって、また寝るのかよ……」


 俺は頭も痛いのでそのまま帰りのホームルームが終わるまで眠り続けた。

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