10.
あの後、夕飯を食べていると電話がなった。
とてとてと亜衣が小走りで受話器をとる。
「はい、もしもし。高橋です。」
「……」
変に間が空いた。俺は手紙のことを考えながら黙々とご飯を食べる。
「もしもし?どなたですか?」
ん、だれだ?
と思っていると亜衣は受話器を置く。
「間違い電話?迷惑電話?かも。なんも言わなかったから切っちゃった」
そういって再び食事についた。
そのときは何とも思わずに手紙のことを考える。
5分くらい後また電話がなった。
丁度立ち上がっていて電話機に近かった俺は電話を取る。
「もしもし、高橋ですけど。」
『……ぁ』
微かに声が聞こえた。
「あー、と。どちら様ですか?」
俺は訝しげに聞き返す。
『ふ…ふ…』
笑っている?何故?
と、そこで俺はある可能性に気が付く。さっきは気にもしていなかったが、これはもしかしてストーカーの…
顔が引きつるのを感じる。俺は家族にばれないようにとっさに嘘を考える。
「あ、今飯だから後でまたこっちから掛け直すから」
友達を装って今電話するなと暗に伝えてみる作戦だ。
受話器を置く。額に冷や汗が流れる。
「あー、やっぱり彼女でしょ!彼女出来たんでしょ!」
亜衣がそう喚きだすと
「あら、彼女出来たの?なおちゃん」
と母も便乗する。
「違うって。友達だよ、友達」
そう言ったものの2人は信じてない様子だった。
俺の声は少し震えていた。
ご飯を食べ終わってトイレに行く。トイレを済ましたら部屋に戻って手紙と電話に対して対策をしなければならない。
そこで、再び電話の音が鳴った。
まずい!対策が遅くてまたかけてきたか!
俺は電話をかけてきたのが例のストーカーだと確信し、慌ててトイレを出ようとすると電話の音がやむ。
切れた?いや、誰か出たのか。
すぐにドアを開けて電話のほうに向かう。
「もしかしてお兄ちゃんの彼女さんですか?」
そんな事を亜衣が言っていた。
「なに言ってんだバカ!」
早足で近づき受話器を取り上げて電話を切る。
「バカってなによ! それにしてもやっぱり彼女出来たんじゃない!」
と亜衣が言う。彼女ができただと?
「なんでそう思うんだよ」
そう問いかけると
「だってかわいい声だったしそれに彼女さんですか?って聞いたら恥ずかしそうな声出してたし」
こいつ余計な事言いやがって……!もしストーカーだったら火に油を注ぐ行為だぞ……
それより。かわいい声だった?会話したのか?
「名前はなんて言ってた?」
「え? いや、名前は言ってなかったよ。直之くんの家ですか?って聞かれたから、そうですって言って、そして私が彼女ですか?って聞いたらお兄ちゃんが来て……」
そうか、俺のときは何で何も言わなかったんだ……
いや、でも最初は亜衣に対しても無言であるような反応だったよな……
また電話が鳴るが、俺はすぐにそれを切る。亜衣が何か言っているが、俺は2階へ早足で上がった。
もう電話を掛けてもらう訳には行かない為、あのメールに返信することにした。
――どこで手に入れたのか知らないが家に電話を掛けるのはやめてくれ。
そう返信すると。すぐにメールが返ってくる。
――わかりました。
やはり例のストーカーで間違いなかったようだ。
俺はこれでいいのかと思いつつどう対応していくかを考え始めた。
あれから俺は眠らずにずっといろいろなことを考えていた。
途中亜衣が俺の部屋を訪れたがそれどころじゃなかったので無視をした。
亜衣は眠ったのかと思ったのかしばらくするといなくなった。
俺は落ち着けずに部屋をうろうろしていた。
まず例のストーカーは誰だ?何故電話番号やメールアドレスを知っているんだ?
何故今急に色々な行動を起こしてきている?どう対応すればいい?
疑問は幾らでもわいてきた、そして、そのどれも答えはわからなかった。
携帯が突然震えだす。
メールだった。
誰からだ?
確認する。
奴だ。
恐る恐るメールを開く。
――どうしてそんなに部屋をうろうろしているの? 眠れないの?
俺は驚愕に目を見開くとすぐに部屋のカーテンを閉めて布団の中に潜った。
また携帯が震えたのを見て俺は携帯の電源を切った。
13/10/19 ちょっと修正