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第七話 ツノムシ

旧第四ポリス地下薬品倉庫。暗い倉庫内。非常用の照明が点いていた廊下と違い、歩くのも困難なくらい倉庫内は暗かった。

そんな中、ロクがペンライトで棚の薬品を一つ一つ確認している。レナは倉庫内のドアに腕を組んで寄り掛かって、ロクの様子を呆れて見ていた。


「くっ・・・これも漢字かよ!読めん・・・せめてカタカナで表示してくれ・・・もっと漢字を勉強しとけば良かったな!」

ロクは乱雑した棚の薬品に漢字が書かれていると、顔を曇らせていた。レナはそんなロクの困った姿を嘲笑っていた。

「ふふっ!流石の雷獣も弱点はあるのね?」

「うるさいな!ちゃんと廊下を見張れよ!」ペンライトの照明をレナに当て、怒ってみせるロク。

「へいへい・・・隊長殿・・・」


「しかし、ここに侵入して敵兵と遭遇していない・・・気配すら感じない・・・なぜだ?」ロクは薬品をいくつかピックアップしながら背中のレナに問う。

「あたいらを監視してるかもよ?ここからあんたを出さない気かもね?」

「罠とでも言うのか?」

「さぁーねぇー?」レナは腕を組んだままそっぽを向いた。

「上田さんの話じゃ、かなりの兵がいると・・・?しかし・・・」ロクは小声で呟いた。その時だった。


「んっ!!」

ロクは突然顔色を変え、咄嗟に後方に拳銃を向けた。レナもその様子に驚き、頭を抱えてしゃがみ込んだ。

「なっ!?何よ突然!?こんな所で発砲しないでよね!爆発する薬品とかあるんじゃないの!?」

ロクは暗い壁際に片手で狙いを定めるが、すぐ拳銃を下ろした。

「ふっ・・・昆虫か・・・?しかも見たこともない。新種か?甲殻種?いや!?核戦争前に生息していたゴキブリと言う昆虫の仲間か・・・?」

ロクが狙いを付けてたのは、倉庫の壁に這う5センチくらいの黒いグロテスクな昆虫だった。触覚も長く、壁を素早く動いている。


「ツノムシよ!この辺には昔から居るわよ!軽く炙って食べたりすると腹の部分は海老みたいで美味しいのよ!」とレナ。

「ツノムシ?ツノなんかどこにもないじゃないか?こんなグロテスクなのをか・・・?よく食うな?」苦笑いしながら拳銃を脇にしまうロク。再び薬品を探し始める。

「ツニムシの卵は、核爆弾でも燃えたりしないって噂よ。だからこの世界にも生き残った・・・それに、人も噛んだりするから気をつけて!凄く腫れるんだから!」

「ふーん・・・心配してくれるのか?」

「そ、そうじゃないけど・・・」気がついたらレナはロクを庇う行動を取っていた。そんな自分の行動が悔しくて、レナは慌てて否定する。そんな中、ロクは再び棚の薬品を探し始める。


『この暗闇でたった一匹のツノムシの動きを感知した・・・銃を抜いたのも見れなかったくらい素早い・・・やはりこいつは・・・?』ロクの能力に驚き、警戒を強めるレナ。レナは黙って、ロクの背中をじっと見つめていた。


「さぁーて・・・こんなもんだろ!?」ロクはある程度の薬品をズボンのポケットに入れると、レナが立っていたドアに近寄った。

「隊長殿!?次はどちらへ!?」レナが皮肉混じりに言う。

「捕虜が監禁されてる所だ。お前はそこで解放する。」

「ふーう・・・ならこっちよ!」レナは大きな溜め息をすると、顎でロクを廊下側に導いた。



レヴィア1番艦。風もなく雲もない晴天の荒野に、赤黒いレヴィアが静止している。甲板のブリッチの日陰部分には20名程の捕虜が、手を後ろに縛られて座らされている。その中には、ロクによってジプシャンの制服を奪われ、パンツ一枚で座る少年の姿もあった。

「おい?ショウ?」ある少年が、小声でその少年に問う。

「なんだよ?」ショウと呼ばれた少年は、汗だくの顔を不服そうに振り向いた。


「これからどうすんだよ?このままじゃ、ポリスに連れられて捕虜になっちまうぞ。ショウ?」

「ショウ?」

「ショウッ?」捕虜の数名から、ショウと呼ばれた少年に、嘆きに近い声が飛び交う。

「うるさいな・・・てぇめぇらがドジ踏まなきゃな、こうにはならなかったさ・・・たった一台になんちゅう様だよ・・・こっちは数で勝ってたのに・・・」ショウは正面を向き直すと、今度は下を向いて呟く。他の者はその言葉に黙ってしまう。ショウは他の捕虜の、自分に向けられた視線を背中で感じ取っていた。またここにはいない、他の捕虜たちも気にしていた。


「おーい!裸でこの炎天下に甲板かよっ!せめて船の中にしてくれないか!?これじゃあミミズみたいに干からびちまうじゃないか!?」

ショウは自分の気持ちを押さえる事が出来ず、一人大声をあげた。するとブリッチの陰からひょっこり顔を出したのは、砲撃主の多聞だった。多聞はベルトの付いたマシンガンを右肩から下げると、構える事もなく捕虜たちに近寄った。


「おいおい・・・捕虜の分際で・・・で?なんでお前だけパンツ一枚なんだよ!?この船にはそんな趣味の奴は居ないぞ!」呆れた多聞がショウに近寄った。

「知るかっ!そっちのドライバーに奪われたんだよ!なんか羽織るのよこせよ!」

「な、生意気なガキだな・・・ほらよ!」

多聞は明らかに年下のショウに対して、近くにあったボロを放り投げた。ボロは空中で開くと、ショウの頭の上にかかった。ショウは縛られながらも、そのボロを調整し上手く体に羽織った。羽織り終わると多聞に向かって無言で睨んでみせる。

「食事は夕方だからな!!」多聞はそう言うと、再びブリッチの影に隠れた。その様子を見ていたショウは、ボロの下で何やら怪しげな動きをみせる。



旧第四ポリス地下6階。ロクとレナはある暗い廊下に面した、独房のような部屋の前にいた。ドアは電子式のロックを備え、ドアの目線部分には、鉄格子の窓が取り付けられている。ロクは恐る恐るその窓を覗いて見るが、暗くて中の様子が伺えない。

「おい?本当にここで間違いないのか?」ロクはレナに問う。

「捕虜はこの部屋にしかいないはずよ・・・」

「ドアのカギは?」ロクはドアノブをガチャガチャと回すが開かない。

「カギまで知らないわよ!」

「くっ・・・カギがあっても電気が通ってなければ無理か・・・?」

ロクは腰の拳銃を一丁取り出すと、電子ロック部分に狙いを定めた。

「どけっ!跳ね返るぞ!」

「う、嘘!」レナは急ぎ廊下の端に屈み、頭を両手で庇った。次の瞬間、暗い廊下には一発の銃声が響き渡った。


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