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第六話 旧第四ポリス

ロクは静かにその石片の前に腰かけると、持っていた水筒を取り出しては、水を上からかけ始める。

「ありがとな・・・お前らのお陰でこの戦争は終わったよ・・・たくさんのプロジェクトソルジャーたちのお陰さ・・・残ったのは俺と陽、ボブくらいかな・・・?」

ロクは祈るように石に語り始め、一筋の涙を溢す。

「な、泣いてるの・・・?ただの石しか見えないけど!?」

「この戦争が終わるまで泣かないと誓ったんだ・・・それにこいつらは、俺の命を救ってくれた仲間の墓だ・・・彼らが居なかったら今の俺はない・・・」

「そ、それと・・・話を聞いていたら戦争が終わったみたいに言ってたけど、勝手に戦争を終わらせないでよね!私たちの戦争は終わってない!まだ私たちの部隊がいるじゃない!?」レナはロクの行動が、自分らを騙す演技だと思い込んでいた。

「さっき、自分を道案内に選んだ理由を聞かせろと言ったよな?」

「う、うん・・・」真剣なロクのまなざしに躊躇するレナ。


「お前には基地に戻ったら、基地に居る仲間たちに降伏を説得して欲しい。」

「ば、ばか言わないで・・・どうせあんたのハッタリでしょ!?」

「無駄な血はもう流さない!これからこの星には、お前らのような若い力が必要なんだ!既にジプシャンは壊滅に等しい。もうすぐここには、P5とP6の連合軍が来るだろう。戦わず降伏するのだ!既に食料も底を尽きたろ?捕虜の膚艶を見れば察する・・・」


「くっ・・・も、もし、あたいがそれを断ったら・・・?」

「捕虜全員の命はない!それに俺が3日で船に帰らなかったら、全員殺せと部下に命じた。だからお前は俺を無事に、生還させなければならないかな?」

ロクが初めてレナに凄んで見せた。そのロクの眼光に唾を飲み込むリナ。


「ひっ、卑怯ね!そこまで面倒見ないわよ!それにあたいに選択権はないようね?わかったわ!あんたの言う通りにするわよ・・・ただ私はただの偵察隊よ。あたいの言葉を聞く者なんて誰も居ないわよ・・・それにジプシャンでは、仲間の命なんてどうでもいいのよ!死んだらそいつの宿命だね?で終わる話なの!仲間の命より、明日の自分の命なの!あの捕虜たちの命まで私に背負わせないでよ!!」


「それがジプシャン・・・って事か?まあ、それを聞いてこっちも躊躇う事なく銃を抜けるよ。」

「くっ・・・」唇を噛み締めるレナ。

「さぁーて!行きますか!?寄り道してすまなかったな。昔と変わってなければ、入り口はすぐそこだろ?急ごう!」

「あんた、昔ここにいたの?そう言えばここも、ほぼ真っ直ぐに来たわね?」レナはロクがこの周辺に詳しいのに驚く。


「昔な・・・半年はここに居たかな・・・?思い出したくもないがな・・・」

「ふーん・・・」

二人は日が落ちた廃墟街を、再び歩きだした。



ある廃墟街の一角。既に辺りは星の明かりしかなく、風がコンクリートを抜ける音しか聞こえない。二人はある入り口の前にいた。レナは警戒することなく、その入り口のドアを開く。

「おいおい、ロックぐらいしてないのかよ!?無用心だな?管理すらしてない様子だな?」呆れるロク。二人は暗い階段を降りると、長い廊下を歩きだした。


「だってここ数年、ポリスはここを奪回すらしに来ないのよ。自然にこうなるわよ・・・で?最初はどこに行くのよ?」

「センタードームの一角に、ポリスの墓地があったはずだ?まだあるのか?」

「また墓参りなの・・・?あるわよ。敵の墓とて、排除したら祟られそうだからね・・・?放置してるわ!」

「それに地下にあった薬品倉庫だな。そこはまだあるのか?」

「薬品の大半は、本部や他の基地に送られて在庫はほんの少しよ。それでもいいの?」

「ああ!十分だ!それとここの地下に、ここの元司令官が監禁されてると聞くが・・・?」

「噂は聞くけど・・・本当の狙いはそこなの・・・?あんたここに兵が何人いるか知ってるの!?銃だって7丁しか持って来てないよね?」

「なんとかする!」

「なっ、なんなの・・・!?あんたっ!?」

レナはロクの行動が理解出来ずにいた。拳銃だけを持って、敵のど真ん中に入るロクに余裕すら感じていたのだ。二人は誰とも会うことなく廊下を進んでいく。



旧P4センタードーム。照明も点かない薄暗いその一角に、名もないポリス兵たちの共同墓地があった。二人は人影すらないその墓地にいた。

「今度は誰の墓・・・?」レナは冷たくロクの背中に問う。

「ホーリー・・・亡くなった歳は、今の君くらいかな・・・?いつも星を見ていた。それでホーリーと・・・」

「そんな話に同情なんてしないわよ!ここでは10歳未満でも兵士よ!」ロクの話を遮るように、レナが叫んだ。


「そのようだな・・・俺もたくさんの少年少女兵を殺してきた・・・その度に、早くこの馬鹿げた戦争を終わらせたいと思っていたんだ・・・子供たちが犠牲になる戦争をな・・・」

「あんたの話に耳は貸さないわよ!!さあ、次はどこよ!?」

レナは煽るように、ロクを急かした。

「薬品倉庫・・・だな?」



レヴィア艦内。上田が横になる個室に、直美が独り入ってくる。

「おじいちゃん、具合はどう?」

「まあまあってとこかのう・・・ああ、お嬢ちゃん?本当にわしの足を切らねばならんのかい?」

「顔色もだいぶ良くなったね!ごめんね!この船、ロクな薬品を積んでなくて・・・そうね・・・切らないと命に関わるわね?残念だけどね・・・」直美は上田の足の包帯を変え始める。

「そうかい・・・」上田は寂しそうに自分の足に目をやった。


「命があるだけいいじゃない!ねぇ!?」

直美が上田に掛けられる、精一杯の言葉だった。

「上の方が騒がしいが、どうしたんじゃ?」

「ああ、捕虜を何人か収容したのよ。すぐ解放するけどね!入れるとこないから甲板にいるのよ。食事作るの面倒よ!大勢いてさぁ!」

「P4のジプシャン兵か?」

「そう!あいつ優しいのか、バカなんだか分かんないのよね?ロクって艦長は・・・」

「軍から抜けたって事なのか?なぜ君らは単独でP4に来たんじゃ?」

「私に作戦の事は聞かないでよ!この船は艦長の気分次第よ!」直美の頬が膨らむ。すると部屋に雨音と勝也が入ってきた。


「おねぇちゃん!捕虜に食事出すんでしょ!?こっちは手伝うよ!」雨音が直美の仕事を手伝いながら医療機器を触ろうとした。

「じゃあ、このおじいちゃんに点滴をもう一本ね!」


「子供か?なぜ軍艦に?」雨音と勝也を見て驚く上田。

「弟と妹よ!まあ血は繋がってないんだけどね・・・じゃあ勝也!ここを頼んだわよ!」

直美が勝也と雨音に上田の点滴を任せると、急いで部屋を出ていく。


「君らは何でも出来るんじゃな?」上田は自分の世話をする二人に対して優しく微笑んだ。

「時代って奴ですかね・・・?」勝也が大人ぶって上田に答える。それは父、大場の口癖だった。

「何でも出来ないと、この世界は生きて行けないってロクが言ってたわ!」と雨音。二人は自慢げに上田の足の包帯を変えようとした。

「そうか・・・あいつが・・・?」

上田はそう言うと、ベットの下に忍ばせてあった拳銃をこっそりと取り出した。

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