第一話 再び・・・行きますか!?
中3から高2にかけて「四天王」を、高2に続編の「大陸へ・・・」を書き。高2の春休みにこの「四天王1、5」(当時)を書き上げてました。
当初は月刊地●の創刊3周年号に掲載予定でしたが、3年を待たず地●は廃刊・・・原稿がないので、記憶を頼りに書いてみます!相変わらず脚本書きです!
愚かなり人間たちよ・・・
地上を這いつくばる人間たちよ・・・
全ての神の予言通り、約束の死はすぐそばまで来ている・・・
私の息子がそれを成し得るだろう・・・
愚かなり人間たちよ・・・
災いを呼び込む人間たちよ・・・
神の名を騙り、神を冒涜した人間たちよ・・・
約束の死は、もうすぐそばまで来ている・・・
すぐそばまで・・・
第六ポリスで、ジプシャン軍の旗艦プロメテウスが撃沈して4週間が過ぎようとしていた。
その暗い倉庫にはエンジン音と空気の流動音が入り交じっていた。時折縦に大きく揺れては、体に感じる程の微動な揺れを倉庫の中で響き渡らせていた。良く見ると所々、倉庫の中の作りはいくつか逆さで、古い注意事項のパネルや階段、手摺りや渡り廊下などが逆さに残っていた。
そんな倉庫の中央には車両が一台。黄色と黒の斑模様。赤のヘッドライト。車高の低いそのボディはスピードを重視して設計されており、後輪のタイヤは前輪の二倍の大きさ程あり、車体は前にやや傾いている。
運転席には大きなのハットに口元を覆うスカーフ、長い毛皮のポンチョを着た17、8歳の一人の少年の姿があった。車内の彼が車のキーを回すと、エンジン音が倉庫内に響き渡った。獣の叫びの様なエンジン音が振動となって車内にも響いた。更にアクセルを踏み続け、爆音を轟かしエンジン音をチェックしてる様子だ。
「よく仕上げてあるな・・・?俺の注文通りだ・・・スミさんさすがだ・・・」
そう一人呟くと、他の機器も次々と作動させていく。
「問題はこいつだな・・・?」
少年の目が細まり、機器の一つのスイッチに手をあてたまま動かなくなった。
「賢くなったのはわかるが・・・こいつをどう作戦に使えばいいか・・・?上田先生を夜中に見つけたのは偶然か?」
その時、フロントガラスにインカム姿の一人の少年の姿が投影された。年は20歳前後。やや緊張している。
『いい音ですね。艦隊司令!上のブリッチまでガンガンに響いてますよ!』
すると少年はその声にモニターを睨みつけた。
「三島・・・俺を外で艦隊司令と呼ぶな・・・」
呆れた声の少年は、映像の三島を叱ってみせた。
『す、すいません!艦長!間もなくたくさんの瓦礫地帯でレヴィアはこれ以上進めず・・・』
「お前らは後方待機!」
『はぁ~!?しかし・・・』
すると映像の人物が替わり慌てて報告をする。
『艦隊司令!敵SCは約50台!!真っ直ぐこっちに・・・』
「だ・か・ら・・・俺を外で艦隊司令と呼ぶな国友・・・」
少年は怒りを押さえ、モニターを再度睨んだ。
『す、すいません艦長・・・ですが敵SC隊は間もなく当艦の射程距離に入り・・・』
「あらら?昨日の報告とは数が違うな?」
『私の目が節穴とでも・・・?敵も応援くらい頼みますよ!』
突然、少年の目が優しくなった。
「ふふふ・・・良い読みだな?国友?だが俺に意見とは良い度胸だな?」
『あ、ありがとうございます・・・』脅えるモニターの国友。
「まあその位の数なら、いい勝負になるかな・・・?本艦は敵SC隊に対して真横を向けろ!主砲、機銃一斉発射の後、この戦闘区域を急速離脱!・・・後は任せたぞ桜井!?」
深呼吸した少年が大声を張ると、モニターには三人目の少年が現れた。
『ロクさんこそ、あまり派手に暴れないで下さい。敵SCは貴重な資源ですから・・・スミメカニックに怒られたくないんで、出来れば傷つける事なく・・・』
「美品で捕獲かい・・・?なんとかする!」
『ふふっ・・・出た出た・・・』含み笑いの桜井。
「ふふっ!よし!ハッチ開けろ!!」
『久々の緊急発進ですよね?艦はお止めしますか?』
「おいおい・・・なめてんのかい!」低い声でモニターを睨む。
『り、了解!速度最大でハッチ開けます!横転しても責任取りませんよ!?』
モニターの映像が切れると同時に、車両前方のハッチが鈍い音を響かせゆっくりと開き始めた。外の光が倉庫内を明るく見せる。少年の乗る車も少しづつ光輝いてきた。
『ちょ、ちょっと!!』
フロントガラスの映像モニターには四人目の人物が映し出された。少年はその人物を見ると目を細める。15歳程の少女だった。
「どうしてお前がブリッチにいる!?しかもそこ俺の席じゃないか!?桜井!?桜井は何してる!?大体そこには勝手にな・・・」
映像が再び桜井に替わり、少年の怒った口調に慌てた桜井が答えを見つけようとしている。
『あ、あっ!?あのそのですね・・・いえ、あの!直美さんが・・・どうしてもと聞かなくて・・・』
答えが聞けないまま、再び少女の映像が切り替わる。
『あんたさぁー!私にお前なんて言わないでよね!!艦長が居ない間、私が艦長代行しますから!!』
「お前な・・・遊びじゃないんだけどな・・・桜井!?桜井は!?桜井に代われ!」呆れる少年。
『ですから・・・それは・・・』再び桜井の映像。
『陽ちゃんに頼まれたの!』桜井の映像に割り込むように直美が叫ぶ。
「なっ・・・な、なんであいつなんだよ・・・」その名前に動揺する少年の声。
『あんたは歩兵専門だから航海や船の戦術は不馴れだからだって・・・だからポリスを離れる前に航海戦術のマニュアルを渡されたの・・・』
「あいつ・・・船では俺を子供扱いかよ・・・?」
『まあ、そんな理由でここの席ね!』
「勝手にしろ・・・」
『約束したよね!?3日経ったら本当にP6に戻るわよ!?』
「ああ!なんとかする・・・」
『出た出た・・・それじゃねぇー!!』映像が切れる車内。
「ふぅ・・・ジャガー・マイライフ出る!!」
少年は溜め息をすると、車のギアを入れる。ハッチは完全に開き、艦の外の様子は砂嵐なのか、レヴィアの排出風なのか、まるで外の風景など見えない。
「さぁーて・・・・・・行きますか!?」
ロクはアクセルを踏み込んだ。
四天王 1と2分の1
【ミュウの爪痕】