表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
犯罪クラブ  作者: sora
1/4

1章

「面白いもの見つけてきたよ。」

ドアを壊すような勢いで、女の子が部室に入って来た。

ハルルンこと、土川春香だった。

ハルルンは運動神経が抜群なのに、運動部には決して入ろうとしない。

それなのに、大会の時には必ずと言っていいほど助っ人に呼ばれる。

そして、堂々とした結果を次々に出し、影のエースとして活躍している。

少し元気が良すぎるが、とっても良い子だ。

「もうちょっと静かに入って来れないのかい?」

静かに本を読んでいたのを邪魔されたのが気に入らないのか、少し不機嫌なのはハカセこと、隅田優だ。

ハカセは常に学年トップという成績を持つ天才だ。

常に赤点ぎりぎりの成績を取っている僕とは天と地の差だ。

「どうしたの?ハルルン?」

ワンテンポ遅れて、のんびりとした声でそう言ったのはノンノこと、橋本望実だ。

ノンノはおっとりとした優しい子だ。

ちなみに、ハルルンとユウは中一で、僕とノンノンは中二だ。

ただ、僕もノンノンも先輩としての威厳がないせいなのか、二人にはよく馬鹿にされる。

「面白いものって何を見つけて来たの?」

僕は宿題の手を止めて聞いた。

「それは、この学校の七不思議だよ。シュウさん。」

シュウというのは、僕のことだ。

本当は松田修也なんだけど、なぜかシュウと呼ばれる。

「七不思議?ふん。そんなものは作り話だ。」

ハカセは全く関心を示さず小馬鹿にしたように、そう言い捨てた。

「確かに作り話みたいなものもあるけど、作り話とは思えないようなものもあるよ。」

ハルルンは目の前にあった椅子に座って、鞄の中からノートを取り出し、メモ書きのようなものを机の真ん中に置いた。

どうやら、そのノートに七不思議のことが書いてあるらしい。

「七不思議ってこの学校にもあったんだ。知らなかったな。」

「ノンノは知らなかったの?僕はいくつか知ってるよ。深夜の零時ジャストに保健室に飾ってある人体模型が廊下を走り始めるとか、体育館倉庫に十三人で入ると出る時には十二人なっているとかいうのでしょ?」

昔友達に教えてもらったのを思い出しながら僕は言った。

「そうそうそんなの。他には、深夜の四時に女子更衣室の中に入ると制服が血に塗られたように赤く染まるとかいうのがあるかな。」

ハルルンは嬉しそうにノートを見ながら言った。

「七不思議のどこに作り話だとは思えないものがあるんだい?」

ハカセはそう言いながら本を閉じた。

どうやら、七不思議に少し興味をもったようだ。

「これだよ。十三日の金曜の満月の日に化学準備室で、人が死ぬ。どう?少し他の七不思議と違うと思わない?」

ハルルンは自分のメモ書きを指差しながら言った。

「…。」

ハカセは何も言わずに目を閉じて真剣に考え始めた。

「そうかな?僕は他と変わらないように思うけど。」

「うんうん。私もそう思うな。」

僕とノンノがそう言うと、ハカセはゆっくりと目を開けて僕達を睨みながら言った。

「全然違う。他のものは比較的簡単に条件を満たすことができる。どれもこれも1日あれば十分に確かめることができるだろう。でも十三日の金曜というのは一年間に二回あるかないかというぐらいだ。しかもその日が満月ということになると、その条件を満たすのは十年か二十年に一度ぐらいだろう。どう考えてもおかしい。もちろん、単なる作り話の可能性はある。ただ作り話だとしても…何かある気がするな。」

確かにそうだ。

七不思議なんて作り話と言ってしまえばそれまでだけど、この条件の難しさは恐怖と似た何かを感じた。

ただ、ノンノはどういうことなのかピンとこないのか、首を傾げている。

「そうだよ。それ。何だか他と違って何か引っ掛かるんだよね。」

ハルルンはうんうんと首を振りながら言った。

もしかしたらハルルンはただ思いつきで言っていただけなのかもしれない。

でも七不思議には個人的に興味がわいてきた。

それにみんなも興味を持ったようだ。

よし、決まりだね。今日の部活は…。

「じゃあ、この七不思議について調べてみる?」

僕はみんなを見渡しながら言った。

「もちろん。だってそれがこの犯罪クラブの活動だからね。」

「そうだね。部活の活動にちょうどいいもんね。」

「本を読むより楽しそうだ。」

みんな賛成みたいだ。

まあこの犯罪クラブの活動には相応しいかな。

犯罪クラブといっても勘違いして欲しくないけど、犯罪をするクラブではないんだ。

犯罪について調べて考える。

探偵のような活動だ。

まあ今まで活動なんてほとんどしたことないけどみんなこういうことになると張り切ってしまう。

ただ残念なことに結果はついてこない。

「よし、じゃあ決まり。七不思議について、調べよう。役割分担はどうする?」

「俺はネットで調べる。」

ハカセはそう言うとすぐに部室から出て行った。

どうやらコンピュータールームに行くみたいだ。

「私は、もう一度七不思議についていろんな人に聞いてみようかな。」

ハルルンはそう言うと慌てて部室から出て行った。

「えっと、私は…図書室にある新聞で調べようかな。」

「僕も手伝うよ。」

僕とノンノは一緒に新聞を調べることにした。

まあ、そんなに古い新聞があるとは思えないけど、探してみないとわからない。

それに、僕一人だけのんびりとしているのはみんなに悪いしね。

「僕達も行こうか。」

僕はノートとシャーペンを持って部屋を出た。

ノンノは少し遅れて、僕について来た。

「ちょっと待ってよ。置いてかないで。」

「ほらほら、早く行こうよ。みんなに負けちゃうよ。」

「えー。勝ち負けなんてないよ。」

「そうかな?でも楽しそうだし、何だかわくわくしない?」

ノンノは少し考えてから首を縦に振った。

ただ、やっぱりワンテンポ遅い。

 


僕達は図書室に着くと、図書室の先生に許可をもらって、書庫に入れさせてもらった。

ここには大量の処分予定の本や昔の新聞が置いてある。

「たくさんあるね。でもそんなに古い新聞なんてあるかな。」

僕は新聞の山に圧倒されながら、悲鳴のような声で言った。

「うーん。どうだろうね。でもあるかもしれないし、頑張ろうよ。」

「そうだね。頑張ろう。」

こうして僕達の新聞との格闘が始まった。

結論からいうと格闘は十分もかからずに終わった。

この書庫には一年分の新聞しかなかったからだ。

結局この学校についての記事なんて一つもなかった。

「残念だったね。何にもなかったね。」

「そうだね。無駄な苦労だったね。」

僕はため息をつきながら、ふと本棚の方を見てみると埃まみれの本と本の間に何か変なものがあるのに気がついた。

僕はその本棚に近づいて、息を吹いた。

すると大量の埃が舞った。

「げほっ。げほっ。すごい埃だな。」

「大丈夫、シュウ?」

「大丈夫。大丈夫。」

僕は埃を手で振り除けてから目を開けてみると、そこには本以外に何もなかった。

おかしいな。

何かあったような気がしたんだけど気のせいかな。

「どうしたの?そこに何かあるの?」

ノンノは僕の横に来て、僕と同じ場所を見つめた。

「何かあると思ったんだけど気のせいかな。」

僕は少し恥ずかしくて照れ笑いをした。

「そうなんだ。それにしてもここだけ埃多いね。何が置いてあるのかな。学園議事録だって。」

ノンノは不思議そうに本のラベルを読んだ。

学園議事録?

この学校の歴史でも書いてあるのかな?

僕は学園議事録を一冊取り出して、目次のページを開いてみた。

すると、本の中から古めかしい新聞記事の切り取りが何枚か落ちた。

「何だこれ?」

「えっと、全部この学校についてのことみたいだね。」

僕も新聞の切り取りを一つ拾って、読んでみた。

これは十五年前のものだ。

内容は吹奏楽部が県大会で優勝みたいな感じだ。

「他の記事はどんなの?」

「うーんと、十二年前の剣道部の全国大会出場、七年前の痴漢事件、十年前の放送部のコンクールの入賞、十五年前の…殺人事件!」

「えっ?殺人事件?」

「う、うん。そう書いてあるよ。」

ノンノは目を見開いて新聞記事をじっと見つめた。

僕も一緒になってその新聞の記事を見た。

さすがに十五年前だけあって、印字が霞んでいたりしてよく読めないけど、確かに殺人事件と書いてあった。

えっと、十月十三日金○日○○北中○校、化○準備室で、女○学○○何者か○よって、後頭部を強打○○…。

読めないところが多いけど、どういうことなのかは十分に分かった。

七不思議はともかく、本当にこの学校で殺人事件があったのは間違いないようだ。

「ノンノ、戻ろう。大収穫だよ。」

「そうだね。みんなに知らせなきゃ。」

僕は本を戻してから、殺人事件の書いてある新聞記事だけポケットの中に入れた。

この記事はもらっておこう。見つかったら怒られるかもしれないけど、問題ないよね。



僕達が部室に戻ると、ハカセとハルルンはもう先に戻っていた。

どうやら僕達が最後らしい。

「収穫は?」

僕はポケットの中から新聞の切り取りを取り出して、机の上に置いた。

「その記事ならネットにもあったな。他には?」

僕は内心がっくりとうなだれながら、首を横に振った。

「ハカセやハルルンはどうだったの?」

「私は全然。噂はたくさんあったけど、全部当てにならないかな。」

ハルルンは困ったようにそう言うとハカセの方を見た。ハカセは姿勢を正してから言った。

「インターネットにはいろいろな情報がありました。まず十五年前の殺人事件について。事件場所は化学準備室。死因は後頭部を強打されたことによるもの。毒物などの反応はなし。部屋の中にあったものは、その部屋の鍵、化学薬品がいくつか、殺人に使われたと思われる瓶、そして一番気になるのが端の溶けたプラスチックの破片。指紋は一種類しか検出されなかったが、瓶には誰の指紋もなかった。ちなみにその指紋の持ち主は、その部屋の管理を任されている岡野先生だ。岡野先生も襲われていたらしく、後頭部に鈍器で叩かれた形跡があった。しかも、この部屋は密室になっていたらしい。まあ、詳しくは岡野先生から聞かないと分からないけど。」

さすがはインターネットだ。

こんな昔の情報でもしっかりとあるんだな。

でも、やっぱりよくわからないな。

岡野先生に話を聞きに行くのがいいかな。

「す、凄いね。インターネットって何でもわかるんだね。」

ノンノは心の底から関心したようだ。

「面白くなってきたね。密室に、未解決事件に。うーん。わくわくする。」

ハルルンはうずうずとしながら、叫ぶように言った。

「よし、岡野先生に会いに行こう。」

僕は新聞記事を再びポケットの中に詰め込んで、部室を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ