初敵
なぜ3人が寒い夜に歩いていたかわからないが、クリストファの仲間になってから適当な場所を見つけ3人ずつ寝ることにして1人は眠くなったら誰かひとりを起こして回ることにした。そして朝5時30分になった。クリストファはまだ寝ていたが大人の三人は起きていた。若い青年のアリフは砂の上に布を敷いていて座りながらで刀らしきものを手入れしていた。服はアラブの黒い民族衣装を着ていた。下は先の膨らんだズボンを着ていた。マッチョな男マスタードは焚き火の火を生き返らそうと頑張っていた。マスタードはアリフと同じような服だったが両腕の部分が千切られていて筋肉質な焼けた腕が見えていた。そして最後は日に焼けていないように輝く白い肌のタルキアは料理の準備が終わりクリストファを起こそうとしていた。
「ねっ、起きてクリストファ。」
「あーあ、何だよ。って寒っ」
「かわいかったぞ、お前の寝顔ヒヒヒッ。」とアリフ。
「うふふ、それは言えてるわね。」
「ハッ?べっ別にどんな顔で寝てもいいだろうがっ」
((そう言う問題じゃないと思うんだが・・・))
「ん、なんだその変な剣は?」
「クリストファは知らないのかコレ」とアリフが言い刀らしきものを持ち上げる。そして、
「これは東洋の武器。『カ・タ・ナ』って言うらしいが・・・東洋の文字はまったく読めん。なんだあの文字は!」
「「「・・・・・」」」
「あっ、すまん。カタナはこの辺の剣とは耐久力が比べ物にならない。」
「へぇ、そんなすごいのかソレ。・・・貸せソレ」
「ハァ、いやだよ。コレ高ぇんだから。」
「いいから貸せ。俺が言うんだから」と言って立ち上がりアリフに近寄ろうとするが、タルキアが止めた。
「止めなさい。そろそろご飯ができるから。座ってなさい。」
「えっ、あ、ああ」不意打ち食らったかのように頷き座る。
「ったく。おめえバッむんんん」マスタードがアリフの口を封じる。そして小さくアリフに
「よせよ。タルキアがせっかく鎮めたのに。お前も時には考えろ。」アリフがマスタードの手を振り切り小さく
「わ、わかったよ・・・」
「さっほらご飯ができたわよ。」と言いながら飯をつぐ。それを全員無口で貰う。
「うんめー。」今日のご飯はタジン鍋にその辺に生えていた少しの植物と干し肉を煮たものだった。砂漠では水はとても貴重なので一切使わない。彼らは鍋を持ち歩いていて食料も持っていたので食料の心配はなかった。が、心配がなかったわけではなかった。
「ねぇ、この剣抜けないんだけど。それとこの本何か知ってる?俺には読めないんだが。」
そう言って鞄から宝剣と本を取り出した。そして、クリストファは宝剣の美しさ驚いた。なにせこの宝剣を見たのは夜暗いときと、お父様から奪ったときしか見ておらずしっかりとは今まで見たこともなかった。コバルトの地に金と銀の装飾にルビーとサファイヤそしてダイヤまでが付いていた。それを見た3人はもっと驚いた。
「おまえ、・・・いいもん持ってんじゃねぇか。見せろそれぇ」
「さわんなっ。代々大事にしてきたんだから。」と腕を引きアリフから遠避ける。
「ねっ、その本見せて」とタルキアが本を無理やりとる。
「あっ」タルキアは興奮してこう言った。
「ねぇ覚えてる祝10回任務達成記念でやった『古建探索チームに参加せよ』ってやつ」アリフは苦いものを噛んだかのような顔をしてこう言った
「あ、ああ覚えてる。最悪だったよ。せっかくの任務だったのに暇すぎでつまんなかったし」
「ええ全然つまんなくなかったじゃない。読めないじ読めるようになったのよ。最高だったわよ、ねぇマスタード。」
「あ、ああ」
「いいや、つまんなかった。」
「いいえ」
こんなことを2人は続けた。そしてクリストファは我慢できなくなり
「ああもう、それとこれがどう関係あんだよ!」
「あ、ごめん。そのときに覚えた文字と同じだったの。でもこのことはまだ公表しないって、まだ公表してないの。その文字がここにもあるなんて」
「読めるのか」
「ちょっと待って・・・確かこの辺にノートが・・・。あった、これこれ。」タルキアは大きさのバラバラの紙の束を広げた。
「ほら、これ」そしてアルファベットの下に確かに似た文字があった。すると珍しくマスタードが
「その宝剣にもあるぞ。」
「ほんとだ確かにねぇ貸して」そしてまた無理やり取る。
「ああ」クリストファは気の弱そうな声を上げる。
「こっちの方が簡単そうだわ。読むから。」と言って黙り始めた。そのほかの3人は冷めたご飯を食べ始めた。
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「読めたわ」クリストファ達はご飯を食べ終え自分たちの布で食器を拭いていた。そしてクリストファが
「なんて書いてあるの」
「直訳すると『自分の名を叫べ、さすれば私はそなたを助けよう。罪あるものは罰せようぞ』だって」
「どういう意味だ、それ」
「要するにお前の名前を叫んで抜けばいいんじゃないの?」
「ふうん。やるか。」クリストファは勢いよく息を吸い
「クリストファーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
・・・・・・・宝剣は抜けなかった。
「抜けねぇじゃねぇかこの野郎」
「誰に向かって言ってるんだこの野朗」
「ああ、やんのかバーカ」
「やってやろうじゃねぇか」すると毎度のごとくマスタードが止めに入る
「やぁめぇろぉお前ら!」
「「ハイ!!」」
なぜかマスタードの声を聞いて気を付けをしてしまった。マスタードの横でタルキアが座りながら読めない本の絵だけを見てはページをめくっていた。すると
「ん?ねぇこれ見て」
「これってクリストファの剣じゃないのか。」とマスタードがタルキアの指先にある絵を見て言った。
「うん、たぶんそうよ。自分で見てみてクリストファ」
「ああ・・・。確かに模様も似てるな。で、なんて書いてあんの」
「結構長いから時間かかるわよ・・・。でも先に進まないと。ステノあなたが歩かせて。私は後ろで解読するから。・・・できるよね。」
「えっ、俺!・・・できなくはないけどお前が乗るのか?」
「そうよ。だめ?」
「別にいいけど」クリストファの心臓がバクバクし始めた。
(なんでこんな・・・。いやおれはワクワクしてるんだ。落ち着け俺)
「なに赤くなってるんだよバーカ、ふん」
「な、うるせーな赤くなんかなってねーよ」
「あーー、はいはいそうですね」
「なんかムカつくなお前」
「行くわよー」いつの間にかタルキアはステノの所にいてステノを立たせていた。
「ああ、今行くよ」そう言ってアリフはクリストファの肩に肩をぶつけステノのほうに向かった。
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彼らは40度の炎天下の中ステノに乗っていた。ステノたちはゆっくり歩いていた。クリストファの乗るステノにはタルキアも乗っていた。すると、ドシンドシンと地面が揺れ始めた。
「な、なんだ」ステノたちが一斉に止まる。そして自分たちの危機が迫ってると鳴く声を出していた。すると揺らしている張本人の姿が現れる。マルムだった。マルムとは6本足の巨大なサソリの事だ。
「で、デカ!」初め見たクリストファは驚き思わず声を上げてしまった。しかし、アリフはなんともないかのようにステノから降り刀を抜く。そして
「へ、ビビってんのか坊主。大口たたいといてなんだ?」
「やってやるよ、こんなやつ」
「あんまり暴れるなよ、お前ら」マスタードは注意するだけでステノからは降りない。
「わかってるよっ」と言いアリフは刀を構えマルムに向かって走り出す。少し遅れてクリストファもナイフを抜き走り出すが少し戸惑いがあった。アリフは刀で足を切るがマルムの足はカンカン、と刀をはじく。マルムはどんなに攻撃されても痛さを感じないので他の生き物でも敵と自覚しない。そのため最初の間は暴れないが、暴れるとすごいことのなる。そしてアリフは後ろの足一本を切り落とした。
「キシャーーーー」マルムが前足二本を上げ雄たけびを上げる。これがチャンスと思いクリストファはマルムの背中に乗る。
「オラオラオラーー」クリストファはナイフをマルムの背中を刺す。がやっぱりはじかれる。しかし、少しは痛かったようで尻尾がクリストファに向かってきた。クリストファはそれに気付き背中から飛び降りる。
「グシャ」針がマルム自身に刺さる。奥まで刺さったみたいで青紫色の血が飛び出る。クリストファは半身だけ起こしマルムの最後を見届けたのであった。