旅立ち
この国は龍を神と拝めていた。そして、この国の王家の持つ宝剣はこの龍が自分の鱗で作って渡したという伝説があった。
こんな国では、農作物の生産が盛んで国民全員裕福だった。しかし、そんな国で干ばつが起きた。これは、神の試練だという国民が出てき始めた。そんななか王子は自由を求め身勝手に旅に出た。この旅で王子が得たものとは・・・。
「それで、南の農作物の状況はどうなっている?」
最も派手な赤色の服を着た少し太った男が誰かに聞いた。
ここは暗い部屋で10人ほどの人が部屋の中心にある大きなテーブルを囲んでいた。
「ハッ。」まるでクリーニングしたてのような質素で綺麗な服を着た青年が勢いよく立って「えー・・・。とても申し辛いのですが・・・以前より進行していまして、約60%の土地が枯れ果てました・・・。」と答えた。
赤い服を着た男以外はこの青年と同じ黒く長いコートを着ていた。
彼らはこの国の大臣たちである。
王立の大学院を卒業し、卒業できるのはたった5人と言う政治学校をトップで卒業してきた者たちが大臣になれるのだ。この青年は今年が初めての仕事だった。
初々しい仕事っぷりを横目に端にいた男が静かに口を開く。
「王よ。やはりこれは神の仕業かもしれぬ・・・。神は我らに生と死の試練を与えているのだ・・・。『コロナの預言書』にもそう書かれている・・・。」
男の声はしゃがれていた。そしてその顔はまるで何千年もたった大木の表明のようになっていて、アゴが長く、目を開く力がないのか閉じているように見えた。
男は右手に持っていた水晶の玉が付いた細い樹木の杖をついて立ち上がった。
派手で赤い服を着た王はため息をついて聞いた。
「それでは預言者よ。」一息ついて、「あと何年続くのだ。その神の試練とやらは。」
「預言書にはそれらしきものが十五年は続くと書かれている。この国の国民の約三割が死に絶えるだろう。王の決定次第ではもっと亡くなるかもしれぬ。」
暗い会議室がざわめく。それを王の隣にいた側近が鎮めた。
「なんてことだ・・・。」王も頬杖をして顔をしかめる。
するとなにかに取りつかれたかのように王は両手をあげ、声を荒げて言った。
「神よなぜあなたは・・・!」今度は両手を下げ息を吐くかのように「ハーッ。もういい。休ませてくれ。会議は終了だ。」と側近に伝えた。
側近の「解散!」とともにテーブルを囲った10人ほどの大臣たちが一斉に立ち上がる。青年は下に溜まっていた重い空気がに上に浮き上がるのを感じた。青年はこの感じが嫌いだった。これを感じるのは若い自分だけなのだろうかと考えたこともあったが他の大臣たちの顔を伺うとそうでもない気がした。そんなことを考えていても空気はなくならず、いつものように周りの大臣たちと一緒に礼をした。すると王がいる反対側にある木製の二枚扉が重々しく開く。暗い部屋の中に白い光が差した。黒い塊たちは白い光へとうなだれながら静かに、ぞろぞろと吸い込まれていった。
部屋には預言者と目をつむっている王だけが残った。預言者は王の顔を見ずに杖を杖に体重を預けていた。
「私は預言しか教えてあげられない。この情報をどう使うかあなた様次第だ。預言は誰かの影響で変わることもある。・・・それと王子には気を使いなされ。」
王は「預言とは都合のいいものだな。それに今はそんな余裕などない。」っと言って椅子を降り、扉まで歩き始めた。
預言者は悲しい目で王の腰にある宝剣を見ていた。やがて王は見えなくなり、王が座っていた豪華で歴史ある椅子を見つめ、何かを諦めたかのように部屋をあとにした。
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王は、会議室のある議事堂を離れ王の住む宮廷に戻った。すると三人の若い王子の召し使いが走ってこちらにやってきた。一人は身長が高く、一人はガタイがよかった。そして、三人のなかで賢そうな顔の年配であろう男がこう言った。
「王子を見ませんでしたか、閣下」あまりにも焦っていたので、王はびっくりしてこう答えた。
「わしは見とらんが、息子がどうかしたのか?」三人の若い家来は互いに顔を見合わせ、事を言う事を決心したのか身長の高い男が口を開こうと王の目を見た。すると背の高い男からでなく王の背中から声が聞こえた。
「いいえ、何でもありません。王子は外で楽しくやっておられますので大丈夫です、閣下。」その声の持ち主は三十年間ここに務めていて今長をやっている家来だった。
王は、そうか と言い、龍のが描かれている廊下に行ってしまった。四人の家来は王が見えなくなったのを確認して賢そうな顔の男が長に聞いた。
「庭にいたのですか。すみません。ちょっとこいつが目を離したせいで・・・。」とガタイのいい男を睨んだ。ガタイのいい男は図体に似合わず小さくなっていた。
「いいえ。庭にはいませんよ。」
槍のような言葉が三人を刺す。
「え?!しかし今・・・」
ガタイのいい男はこれ以上小さくなれないようで涙目になっていた。
「ええ。嘘を言いました。あなたたちを守るために。牢屋に放り込まれる前に王子を探しなさい。」
「あっ、ありがとうございます。」そして自分の仲間に「さっ、みんなで手分けして探そう」と言ってバラバラになった。
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『龍の廊下』を王は歩いていながら思った
(預言者の言っていたことはこのことだったのか)と、王子のことを考えていた。
『龍の廊下』には天井に二匹の蒼い龍が描かれている。ここを通れる人間は王家のものだけである。
廊下を渡りきり王室のまえの大広間に出た。そして部屋の扉を開けようと取っ手を握った瞬間後ろに気配を感じた。だが王はそれが王子だとすぐにわかった。王子は小さい頃王を驚かせようと広間にある大きな植木鉢によく隠れていたものだから。しかし、ある日から王子は王と遊ばなくなり王はとても悲しんだ。そんな王子がこうやってまた遊んでくれているんだと思った王は、逆に王子を驚かそうと身構えたおうじの気配がゆっくり近ずいてきた、そして振り向いた瞬間。
「かくごぉーーー!」ドスッと王子の手が王の腹に当たった。王は王子をいつもより大きな目で見た。王子は下を向いて震えていた。そして、おうの腹にある手をゆっくり見た。その手にはナイフがあった。王子のナイフを見てやっと腹の痛みが分かった。
「何をやっているクリストファッ」王は王子のナイフを掴んだベットリとした血が自分の腕を伝って滴る。まさか自分の息子の手によって血を流すなんて、夢にも思わなかった。王子は顔を上げた。その顔には一粒の涙があった。
「すまん、父さん。俺は、俺は王にはならない。俺は俺の人生を生きてやる。」王は足の力が抜け、バタンと倒れた。クリストファは父に刺さっているナイフを抜き、腰に付いている魔法の剣をベルトごと取った。すると王は「お前なんぞにその剣は抜けん・・・」と言って気を失った。
王子は王に背を向け、植木鉢に隠してあったたくさんの荷物が入った包みを持って大広間を出た。
その後、王は側近に見つかり命に別状はなかった。そして、 GGGに王子を傷つけずに見つけ渡すよう任務を命じた。報酬は永久的に家族とともに、なに不自由のない生活を送らせることを約束することだった。
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その頃、王子はGGGのあるこの国の第二の都市に行くことを決め、危険な大砂漠を北へ横断する旅が始まろうとしていた。
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