04話 大団円
「お父様、お話が……」
私はキャッサの忠告に従い、父であるマーチンデイル公爵にグレゴール様のことを話しました。
「それで、グレゴール様にノース伯爵の音楽サロンに誘われました」
「父親を通さずに娘を連れ出そうとは、姑息な真似を……」
父は苦虫を噛み潰したように苦い顔をしました。
キャッサと同じく、父もグレゴール様の行動をおかしいと思ったようです。
「その男には近付いてはならんぞ」
「はい。心得ております」
「よし」
「それで、お父様、実は、ウォルター殿下のことで気になることがあるのです。ウォルター殿下は最近、ドーズ男爵家のご令嬢ととても親しくお付き合いしていらっしゃるのです」
「浮気か」
「ええ、そうなのですが。メイドが、あれは色仕掛けかもしれないと言うのです。……国王陛下はウォルター殿下の行動をご存知なのでしょうか?」
「ふむ……。解った」
◆
それから、しばらくすると……。
アグネスさんは姿を見せなくなりました。
学院からいなくなりました。
そしてアグネスさんの実家ドーズ男爵家は、当主が代わったそうです。
ウォルター殿下は国王陛下の命令で、しばらく謹慎になりました。
表向きは病気療養です。
私はキャッサと父の忠告に従い、グレゴール様と二人きりになることは避けました。
それで解ったのですが。
キャッサが言う通り、グレゴール様は私と二人きりになるチャンスを狙っているようでした。
グレゴール様は、私を心配する素振りで話しかけて来て、私の話を聞くという口実で二人きりになろうとしました。
隣国の公爵令息が、我が国の王子の婚約者である私と、二人きりになろうとするのは、よく考えてみれば怪しいです。
王子の婚約者を、隣国の公爵令息が誘い出したら、国際問題になります。
グレゴール様が優秀ならその程度のことは解るはずで、グレゴール様が真面目ならそんなことはしないはずです。
キャッサに言われるまで、そんな単純なことにすら私は気付きませんでした。
グレゴール様などに一瞬でも絆されていた自分が恥ずかしいです。
グレゴール様なんかにときめいてしまったのは、私の黒歴史です。
あのときの私を、永遠に土に埋めたい……。
(キャッサがいてくれて良かった。あんな男によろめいてしまったことは墓場までの秘密よ……)
持つべきものは、有能なメイドですね。
◆
私とウォルター王子との婚約は解消されました。
私は王立貴族学院を卒業した後、アチソン伯爵家の三男ジョエル様と婚約しました。
ジョエル様は爵位は継げませんが、宰相府にお勤めの文官で、宰相閣下が後継者として目を掛けているお方です。
私がジョエル様と結婚すれば、私の実家マーチンデイル公爵家がジョエル様の後ろ盾となるので、ジョエル様の宰相への道は確実となるのでしょう。
ジョエル様はとても真面目で誠実なお方です。
いつぞやの、私が土に埋めた思い出の中の、真面目という触れ込みで行動がともなっていないお方とは違い、正真正銘の真面目なお方です。
「ジョエル様、一つお願いがありますの」
私はジョエル様と結婚後の生活についての話し合いをしました。
その話し合いの中で私はジョエル様にお願いをしました。
「メイドを一人連れて行きたいのです」
「メイドなら一人でも二人でも、どうぞご自由になさってください。私は仕事で王宮に詰めていることが多いので、家政はローラ嬢にお任せします」
「ありがとうございます」
有能なメイドは手放せませんものね。
「そういうわけだから、キャッサ、これからもよろしく頼むわね」
「かしこまりました、お嬢様」




