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メイドの忠告と虫の名前  作者: 柚屋志宇
第1章 メイドの忠告

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01話 婚約者の浮気

※短編の連載版です。

※04話までは短編と同じです(加筆修正有)

(ウォルター殿下は、またアグネスさんと一緒にいるのね)


 マーチンデイル公爵家の娘である私、ローラ・マーチンデイルは、その日の夜会でも一人で壁の花となっていました。


 もちろん付き添い役のメイドはいます。

 ですが私をエスコートするはずの婚約者ウォルター王子は、必要な挨拶をすませるとすぐに私を放り出してアグネスさんのところへ行ってしまいました。


 ウォルター王子は、今、アグネスさんと一緒にダンスを踊っています。


 アグネスさんはドーズ男爵家のご令嬢で、か弱い小動物のような愛らしい容姿の女性です。


 ウォルター王子は、王立貴族学院でアグネスさんと親しくなり、行動を共にするようになりました。

 最近は、夜会でも堂々とアグネスさんと親密にしています。

 婚約者である私を放り出して。


(……!)


 ダンスの曲が終わりました。

 ウォルター王子が、私のほうに向かって歩いて来ます。

 その腕にアグネスさんをぶら下げて。


(嫌な予感がするわ……)


 婚約者である私のことなど放置して、アグネスさんをエスコートしているウォルター王子が……。

 壁の花になっている私に気を使って、いたわりに来るというのは、希望的すぎる予想でしょう。


「ローラ、君はアグネスをいじめているそうだな」


 ウォルター王子は険しい顔をして、私にそう言いました。


(嫌な予感が的中ね……)


 ウォルター王子はまるで悪人を見るような目で、私を睨みつけています。


「ウォル様ぁー」


 ウォルター王子の腕にぶら下がっているアグネスさんが、ウォルター王子を愛称で呼びました。

 アグネスさんは私を恐れているかのように、怯えた素振りで、ウォルター殿下に身を寄せています。


「アグネス、怖がることはない。私がついている」


 ウォルター王子はアグネスさんに優しい目を向けてそう言いました。


(私に向ける目とは、大違い)


 私は社交用の笑顔を浮かべながら、内心でげんなりしました。


 私と、アグネスさん。

 ウォルター王子の心がどちらにあるかは明白です。


「ローラ、いい加減にするんだ。アグネスを威嚇するんじゃない」


 ウォルター王子は厳しい表情で私にそう言いました。

 私は何もしていないというのに。


「ウォルター殿下は何か誤解していらっしゃいます」


 私は弁明しました。


「私はアグネスさんをいじめたことも威嚇したこともありません」

「君は醜い嫉妬心から、いつもアグネスに圧力をかけているだろう」

「そのようなことはしておりません」


(嫉妬心などありませんもの)


 婚約した当初は、私とウォルター王子は良好な関係を築いていました。

 ですがウォルター王子は、アグネスさんに出会ってから、すっかり変わってしまいました。


 最初はアグネスさんに対して、私は嫉妬しました。

 ですが今はもう何もありません。

 ウォルター王子に対する私の気持ちはすり減り、何もなくなってしまったからです。


 私の自由意志で結婚を決められるなら、すぐにでも婚約を解消したいです。


「しらを切るのか。マーチンデイル公爵家の娘である君に睨みつけられたら、アグネスが怯えるのは当然だ。そのくらいのことも解らないのか」

「……私はアグネスさんを睨みつけたことなどありません」

「公爵家の権威をふりかざし、弱い者いじめをするとは見下げた行為だ」


(やっていないと言っているのに。私の話を全く聞いていないのね……)


「慈愛の心を持てない者は王子妃にふさわしくない。君が態度を改めないなら、君との婚約も考え直すことになる」


「そうですか……」


 もう疲れてしまって、私は無気力な相槌を打ちました。

 それが気に障ったのか、ウォルター王子はむっとした顔で私に言いました。


「反省をする気がないのだな」

「やっていないことを反省することはできません」

「残念だよ」


 ウォルター王子はそう言うと、踵を返しました。


「アグネス、行こう」

「はい、ウォル様」


 ウォルター王子はアグネスさんを連れて去って行きました。


「……」


 私は半ば呆然として、ウォルター王子とアグネスさんの背を見送りました。


(もう疲れたわ……)


 遠巻きにして、私とウォルター王子とのやりとりを見ていた人々が、ひそひそと囁き合っています。


 それはそうでしょう。

 こんなやりとりは話の種ですものね。


 王子が婚約者を放り出して、堂々と、別の令嬢に浮気しているのですもの。


 そして私は……。

 ウォルター王子が去り、実はほっとしています。

 婚約者が別の女性を連れて去って行ったら、悲しむ場面なのでしょうけれど。


 不機嫌な顔で、私に不満をぶつけるウォルター王子がいると、空気が荒れて居心地が悪いのです。

 いなくなってくれたほうが、ほっとします。


「ローラ嬢……」

「……!」


 声を掛けられて顔をあげると、そこには心配そうな顔で私を見る令息がいました。


「グレゴール様……」


 それはグレゴール・シェルベ様でした。


短編で省略したグレゴールとアグネスの正体、虫についてなどの補完です。

わりとすぐ完結予定です。

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