#8
翌日、三年の教室が並ぶ廊下はいやにざわついていた。
「辻浦、今日学校来てないんだって。やっぱ生贄になったのが怖いからしばらく休む気かな?」
周りからそんな声が聞こえた。確かに他人事なのだが決して良い気分とは言えなくて、三尋は買ってきたジュースを一気飲みする。
このモヤモヤはずっと消えなかった。ところが放課後、事態はまた急変する。
「おいおい、三組の生贄決まったって!」
「マジでっ?」
突然その報告を持ってきた生徒に、教室や廊下が騒然とする。
「っていうか、辻浦は? あいつ今日休んでじゃん。二組を抜かして次に進むの?」
「いや、それがもう執行したんだって。昨日の放課後に……」
周りで聞いていた生徒達は顔を青ざめる。あまりにも進行が早いからだ。選抜も、ゲームの執行も。
身体より、先に壊れるのは心の方かもしれない。立ち尽くしてその様子を見ている三尋の隣に、なづながやってきた。
「こんなこと、何の意味があんだろ」
「皆が大騒ぎするのを楽しんでるのかもしれない」
なづなは壁に寄りかかって呟く。
「因果応報だよ。絶対、自分の身に返ってくる。辻浦君を襲った人達は、クラスどころか全校生徒に襲われてもいいぐらい」
「そうかもしれないけど……お前怖いこと言うな。やめろよ、お前だけはホンワカしててほしいんだから」
「あ、ごめんごめん。やっぱりちょっと、許せなくて」
申し訳なさそうに笑う彼に、三尋も苦笑する。
本当は自分も彼と同じ気持ちだ。襲われた側の気持ちを考えれば、警察に突き出すだけじゃ足りない。強姦は許されない犯罪だ。打ち明けにくいのもよく分かるし、それをかさに好き勝手してる奴らがいるのももどかしい。
「辻浦だっけ? あいつ大丈夫かな……」
「うん……」
二人で話してる間に、議論は白熱していた。
「それで、三組の新しい生贄は誰なんだ?」
「何かそれが秘密なんだって」
「秘密? 今までそんなことあった?」
皆同様に困惑している。今回は人物を特定しないということか。それはまた、どういう意図だろう。
「……逃がさない為かな」
「えっ」
ちょっと考えてから、三尋はジュースを振った。
「今まで実際に襲われたひとがいる。選定されたら学校を休もうと思う人が絶対いるから、そうさせない為だよ。次は誰だって宣言したら逃げ道を作ることになるし」




