#6
「この学校ができた時からあったらしいよ。あくまで噂だけどね。学年もクラスもバラバラで、誰が始めたのかも分かんない。でも今年は三年生だったんだ。三年の、しかも全部のクラスだった」
「頭おかしいんじゃないの? 大体、男が男を、……って、そんなのに参加する奴いないだろ」
「いやぁ……それがいるんだよ。いるから、こんなおおごとになってる。先月に一組の棚沢ってひとがターゲットになったんだ。その子、それから学校に来てないよ。それで次は二組の辻浦君だって噂が」
誰もいない廊下を二人で歩く。さっきの場所が騒がしかったせいか、今は静か過ぎて薄気味悪い。
「皆、怖がってるんだ。誰の仕業か分からないから対策のしようがない。ただ生贄の的にならないようにビクビクしてる」
そんな馬鹿な話あるだろうか。高三だぞ……と、何故か高三というワードに執着していた。
「犯す、ってさ。レイプだよな。教師に話したらどうかな。普通に警察沙汰じゃん」
「話したことあるよ。でも、被害者の方も公にしないから……あまり真面目に取り合ってくれなかったみたい」
なづなは視線を泳がし、暗い面持ちで俯いた。
「この学校は不良とか全然いなくて、皆良い奴ばっかなんだよ。なのに、馬鹿みたいなルールがあるんだ。……放課後は何しても良い時間なんだって、暗黙の了解がある」
「何しても……って、例えば?」
三尋が聞き返すと、なづなは周りを見回した後、彼の耳元で囁いた。
「そ、その……セックスとか」
「はぁ!?」
驚愕して、廊下全体に響くぐらい声を出してしまった。
「やばすぎ! 不良の方がずっと良くないか!?」
「そう。だから三尋も気をつけてね。よく人気のないトイレとか入ると誰かしらがヤッてることあるから」
そんなの聞いたら怖くてトイレにも入れない。戦慄した。
「三尋、鳥肌立ってるよ。大丈夫?」
「大丈夫じゃない! 怖すぎる!」
「大丈夫だよ。頼りないかもしれないけど、何かあったら俺が守るから!」
なづなは自分の胸を叩いて目を輝かせる。……本当に悪いけど、あまり期待できない。彼は俺より身長が低くて、女子とも変わらない体格だ。
「ありがと。でも自分の身は自分で守るよ。どっちかって言うと俺がお前を守るし」
「ええ、心強いなぁ、そんな風に言ってもらえると。……でも、絶対無茶はしないでね!」




