#8
十数年後。
改装工事をしたばかりの高校で新学期が始まった。この学校は以前は男子校だったが、近くの学校と合併して共学になったばかりだ。
頼りない蛍光灯、少し薄暗い教室で、生徒達の出欠席をとる。休憩時間になれば、打って変わって明るく賑やかな声が飛び交った。
一年生の教室。高校生になりたての彼らにとっては何もかもが新鮮で、溢れる好奇心を抑えきれないのだろう。授業のこと、部活のこと、趣味や遊びのこと、……好きな人のこと。様々な話が上がっては、すぐまた次の話題へ移っていく。
忙しないが、その様子は傍から見てて微笑ましい。
「……あ。そういえば、この学校ってさぁ」
すると、ひとりの女子生徒が周りの生徒に低い声で語りだした。
「十年以上前に、すごい事件があったらしいよ。ひとりの男子生徒が教室で首を切って、もうひとりの生徒が教室から飛び降り自殺したんだって!」
「何それ!? やだぁー!」
「いきなり怪談?」
生徒達はオーバーに身を竦めている。冗談だと笑う者もいれば、本気で青ざめている生徒も。
過去のことは分からない。だから、完全に否定できない。本気で受け取っている生徒はきっと素直で、そして聡い子かもしれない。
「ほんとだったらマジで怖いよねぇ……あ、そうだ! ねぇ、先生って、この学校の卒業生なんでしょっ? 何か知ってる?」
女子生徒達は急に方向を変え、教壇に立っている青年に声を掛けた。
「ねぇ、国崎先生!」
生徒達の笑い声が重なる。ここは、ずっと昔から変わらない。誰かの想いが集う場所は必ず何かが絡まり、解けない鎖へ姿を変えていく。
「知ってるよ」
どれだけ時が過ぎ去ろうと決して変わらない。
純粋な感情ほど簡単に汚されてしまう。どんなに長い時間洗濯機にぶち込んでおこうが、その汚れは一生落ちない。
そして自分の心に巣食う汚れも十一年前から変わらない。ずっと中を蝕み、食い荒らし、膿んでいる。少しずつ、しかし確実に根を張って……醜い芽を出している。
「でもそれ、話すと長いからなぁ……。そうだ、それよりもっと面白い話があるんだよ」
俺はずっと語り継いでいく。
この汚れを絶やすことなく、次へ繋げていく。それが“彼”にできる最大の供養。
「皆。生贄ゲームって知ってる?」
今から話すこれは、懐かしくも愛おしい。俺を犯した君の話。




