#7
やり直すなんてことできるんだろうか。
こんな恐ろしいことを思いつき、始めてしまった自分に、罪を償うことができるのか。
分からない。はっきり言って、まるで自信がない。
────それなのに。
「……うん……っ」
おかしい。彼が……三尋がいれば、やり直せる気がしてしまった。
そんな保証はどこにもないのに、差し出されたその手を取りたくて仕方ない。
許さなくていい。全ては自分の醜いエゴだ。嘘をついたのも、廊下で突き放したのも、全て……彼だけは守ってやりたかったから。
「なづな……大丈夫だよ」
彼の震えた声を聞くたび涙が溢れる。
人に犯された。その憎しみから、罪を犯した。
そして最後に俺の心を犯したのは────多分、三尋。君だ。
「ほら、早く掴まれ」
「ん……っ」
涙のせいで視界がぼやける。不安定な足元で目測を誤り、バランスを崩しかけた。なづなは慌てて目元を袖で拭い、三尋がいる前方を見据える。
「あ」
そのとき見えてしまった。
三尋の後ろで、自身の首元をナイフで掻き切る少年の姿を。
暗い教室内でも鮮明に確認できた血飛沫。
目の前の友人の、叫び声。
淀んだ闇に思考が犯される。
自分は一体何を勘違いしていたんだろう。何を期待して、明るい未来など描いていたんだろう。
やっぱり間違っていた。やり直すことなんて……できない。
それが分かった瞬間、視界が真っ暗になり、壁を掴んでいた手が滑った。反応できない速さで身体が後方へ傾く。身体と感情、意識が落ちていく。
「なづな!?」
床に倒れる少年と、自分に気付いて振り返る少年。
またこちらへ向かって差し出された手は、あと一歩届かない。
奈落の底へ落ちていく。重力で身体がねじ切れそうな感覚に目を見開く。
怖い。
寒い。……暗いよ、三尋。
光が途絶える。最後に見えた景色は、飲み込まれそうなほど巨大で美しい夜空だった。




