#3
その瞬間、蹲っていた丹波の肩がビクッと揺れたのが分かった。
「実は俺も……彼らと去年、同じクラスだったんだ」
なづなは床に膝をつく。俺に話してるのに、丹波にも聞かせるような形だ。
「地獄だった。毎日毎日、あの五人の言うことを聞いて。反抗したら蹴られて、殴られて。早くクラスが替わることを毎日祈ってたよ。あっごめん、ゲームの話だったね。よく分かんなくなっちゃった、ははは」
二人とも、今はボロボロだ。どんなに暗くても、それだけは分かる。
「信用できる生徒会の皆に手伝ってもらってさ。最後に丹波を犯したら無事ゲームセット。めでたしめでたし。ってなるはずだったんだ。……なのにさっきはビックリしちゃった」
なづなは笑ってる。笑ってるけど、壊れた人形のような笑みだった。
「ナイフを向けられて、トイレに引き込まれて、服を脱がされて。わー大変! ……また君に犯されるのかと思っちゃった」
それまでの高い声から一変し、なづなのトーンは二つは下がった。
しかしそれ以上に、彼の放った言葉の方に気をとられる。
「ま……た……?」
「うん。また同じ目に合うかと思った。去年、彼らが始めたゲームで、俺が生贄に選ばれた時みたいに」
そう。誰も味方はいなかった。
でも味方がいてもいなくても、殴られるのは慣れていた。痛みには強い方だと思っていた。……あの日までは。
放課後、いつものようにクラスの五人組に体育館の裏に連れていかれた。いつもなら絶え間ない暴力だけだったのに。
『芦苅、そんなビビんなよ。今日は大人しくしてれば殴ったりしねーから』
……殴られる方が、どれだけ良かっただろう。
手足を拘束されて、口を塞がれて、脚を開かされて。
包丁で下から突き刺されたような痛みに視界が真っ暗になった。
『あははは、男も処女喪失って言うんだっけ? 良かったな、芦苅。お前、絶対女なんか抱けそうにないし』
『おい丹波、早く代われよ。俺もヤリてえ。……こいつ顔はもう女だし、ただの穴だと思えば、悪くないからな』
狂う。身体がぐちゃぐちゃに潰れて、切れて、弾けて。理性から、正義から真っ赤な液体が吹き出す。どっかの偉い人が決めた立派な法律なんてどうでもよくなるぐらい、黒い憎しみに支配される。
犯されたから犯しただけだ。やられたからやりかえした。同じ方法で同じ痛みを与えただけ。




