#2
「は……?」
聞き間違いであってほしかった。
彼の低い声も、場に不釣り合いな可愛い笑顔も、血に塗れた制服も。全部全部、悪い夢を見てるんだと信じたかった。
「三尋。教師達は絶対こいつを庇う」
なづなが歩いた後バキッ、という大きな音が部屋に響く。丹波がいつの間にか落とした、彼のスマートフォンを踏み潰した音だった。
「それじゃ困るんだよ。ゲームはまだ終わってない……最後の丹波がぐちゃぐちゃに犯されて、やっと終了だ」
彼が何を言っているのか、理解するのに時間がかかった。
耳に入っても、それを脳が解明しようとしない。むしろパズルをバラバラにするように、ひとつひとつ取り零していく。理解……したくないと言っている。
「それはそうと丹波って、本当に鈍くて馬鹿だよね。炭野に聞かされて分かったんだ? 自分が五組の生贄だってこと。アハハ」
「う……ぐ……っ」
丹波は、まだ激痛に呻いている。そんな彼に、なづなは屈んで優しく語りかけた。
「ご丁寧に一組から一人ずつ進めてあげたのに、自分の番が回ってくるまで気付かないなんて頭悪いとしか言いようがないよ。普通おかしいって思うでしょ、去年つるんでた仲良しグループが全員選ばれてたら」
「やっぱり、お前、が……」
「そーそー。でも俺は君の、そんな頭悪いところが好きだよ。“また”同じクラスになれた記念に、君は最後に回してあげたんだ。メインは最後に残した方が楽しいしね」
異様な会話が交わされている。それは分かるのに、話の内容はさっぱり理解できない。
三尋はただ、現状を突っ立って見ていた。
しかしようやく、少しずつだが頭が回り出す。
これだけは違ってて欲しかったけど、彼らの口ぶりから分かってしまう。
なづなが、このゲームの実行犯だったということ。
────でも、未だに信じられない。
「なづな、何かの冗談だろ。ちょっと悪ノリしてるだけで……」
それにしては、あまりに自然な素振りだけど。
まるで、“こっち”が本当の彼のよう。目の前にいる彼は、俺の知らない誰かの気がした。
「冗談だったら良かったんだけど、ほんとなんだよ。全部俺が考えたことなんだ。五人を犯す痛快なゲームは俺のオリジナル。でも生贄ゲーム自体はずっと前から、この学校であったらしいよ。多分誰も知らないけど、去年もちゃんと実行された……。丹波はそれをよく知ってる」




