#5
「でもやっぱり、自分じゃ自分をコントロールできないんだよね。だからお前みたいに、傍でアドバイスしてくれる奴がいるとすごい助かるんだ」
彼と同じように、近くの椅子を引いて腰掛けた。座面はとても冷たくて、ちょっとドキッとする。
「俺、お前に会えて本当に良かったよ。それだけは命懸ける」
「三尋……」
驚くことに、彼は泣き出した。目元で光る雫がボロボロと下へ落ちていく。
「ごめん、泣くとこじゃないよな。でも、嬉しくて……っ」
「ばか。……でも、俺も何か嬉しいよ。何でだろ」
乱暴に袖で涙を拭う彼の頭に手を乗せ、前屈みになる。
「なづな。丹波のこと、どうする?」
「……」
手が触れた。掠めるように、離れていく。
なづなは俺の手を握って、ゆっくり立ち上がった。
「気持ちは変わらないかな。彼は、もう帰してあげよう」
彼は俺の手を引いて、立ち上がる手助けをしてくれた。確かに、見た目よりは力がある。
「わかった。じゃあそれも伝えてくるからちょっと待ってろ」
なづなが頷くのを確認し、三尋は炭野達に事情を説明した。彼らはやはり怪訝な表情で聞いていたけど、なづなの気持ちを汲み取って丹波を解放した。
でもまだ安心しちゃいけない。何故なら、ゲーム自体はまだ終わってないから。
丹波を帰した後、炭野達とも別れた。ボロボロのなづなを見るとまた腸が煮えくり返るけど、その度に宥められるからため息ばかりついてしまう。
教室から出て、長い廊下を渡る。電気は点いてるのに、窓の外の闇は不気味さばかり醸し出していた。
何となく気持ちまで沈んでしまいそうだったけど、俺はなづなのことを注意して見ていた。ちょっと歩くのが遅いし、手が震えている。
やっぱり痛むのか……それとも……。
「なづな」
「うん?」
「夏休みに入ったら、どっか遊びに行こうぜ」
隣に並んで笑いかける。突然の話に彼は少しぽかんと口を開けていたけど、意味を理解して笑顔になった。
「うん、行こう!」
「約束だぞ。よし、とりあえず海行くか。毎日暑くてしょうがないし」
「三尋泳げんの?」
「もちろん 俺水泳二年ぐらい習ってたんだ~」
他愛のない会話を交わし、階段の手前までやってきた。
何でかな。なづなといると、素で話せる。
別にいつも取り繕っているわけじゃないのに、不思議な感覚だった。




