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俺を犯した君の話  作者: 七賀ごふん
除け者

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29/44

#20



冷たい床のタイルに手をついても、その上から踏みつけられる。身体は血反吐を吐きそうなほど痛んだ。彼の動きはスローモーションのように見えた。


頭が痛い。

グラグラして、何も考えられない。

犯される、なんて恐怖はどこにもない。強いて言うなら殺されるかもしれないという恐怖があった。

腹を蹴られてからずっと息が苦しい。まともに呼吸できないことが何よりも怖かった。


このまま死ぬかもしれない。そう思ったけど。


「おい! 何やってんだ!?」


心臓が止まりそうなほど大きな怒号が聞こえた瞬間、暴力も止まった。

ぼやけた視界の先で、誰かがこちらを見ている。数回瞬きして、目を凝らした。そこには、見慣れた友人の姿。

────三尋が、来てくれていた。


彼は足早にこちらと距離を詰めると、丹波を殴り飛ばした。

「おい……お前、何考えてんだ」

「いってぇな……俺はクラスの為にやってたんだよ。芦苅なら絶好のカモだと思って」

「は?」

三尋の怒りがおさまる様子はなく、丹波の襟を締め上げて壁に押し付けた。丹波は苦しそうに呻いている。


三尋……。

全身が、まるでバキバキに折られたみたいに言うことを聞かない。それでも何とか力を振り絞り、なづなは身体を起こした。

「俺は大丈夫だよ。……だから落ち着いて。暴力で返したら同じになるって、三尋が言ったんじゃん……」

「なづな……」

三尋の瞳は揺れていたが、力無く丹波から手を離した。なづながそれにホッとすると、数人の生徒がトイレの中に入ってきた。

「芦苅!」

「炭野君……」

そこにいたのは、なづなにとって見覚えのある顔ぶれだった。会長の炭野に、生徒会のメンバー達。彼らはこの状況を見ると苦い顔で駆け寄ってきた。

「大丈夫か、芦苅」

「うん。三尋が庇ってくれたから」

「俺も……お前がいないから捜してくれって、あの転校生に頼まれたんだ。そしたら、こんな……もっと早くに来れなくてごめんな」

生徒会のメンバーは丹波を囲み、どうするか物議を醸している。なづなはそれを黙って見ていたが、三尋がこっちを見てることに気付いて笑った。

「ありがとう」

「ありがとうって……そんなボロボロになって言うことじゃないだろ」

三尋は散乱した服を拾い、なづなの姿を周りから隠すように手渡した。




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