#7
足音が聞こえなくなり、ようやくまともに呼吸できた。
よく分かんないけど助かったみたいだ。
三尋は安堵し、壁に寄りかかる。
「あの、助けてくれてありがとう」
少し乱れた服を整え、彼に向き直る。
「放課後のトイレは危ないぞ。ああいうのがよくいるから」
「え、じゃあ放課後トイレ行きたくなったらどうすりゃいいの?」
「一階と二階が安全。教師がいるから」
つまり、三階以上は掘られる危険があるのでダメらしい。ふざけんな、どんな学校だよ。
「俺、五組に転校してきたばっかだから……ビビったよ、ほんと」
「そうか……転校生か。名前は?」
「国崎三尋。そっちは?」
「俺は炭野健史。三年四組で、生徒会の会長もやってる」
堂々としてるが、決して嫌味ではない印象。
彼がなづなの言っていた生徒会長だと気付いた。まさか、さっそく彼に助けられるとは。
「炭野。サンキューな。なづなから聞いてるよ」
「あぁ、五組ってことは芦苅と一緒か」
炭野はまた出口の方へ向かう。
「気をつけろよ。一応、俺は放課後こうやって巡回してるけど。迂闊に歩き回って、また襲われないようにな」
「へぇー! パトロールしてんの? いいね、俺も参加したい。強姦魔撲滅運動ってことだろ?」
「話聴いてたか これは俺一人で十分。お前や芦苅じゃむしろ足手まといだから、放課後はさっさと帰ってもらった方が助かる」
それだけ言って、彼はいなくなってしまった。
なんだ、つれないなぁ。
でも助けてくれたし、彼はなづなと同じ常識人みたいだ。しかもゲームを食い止めようと頑張ってる。俺も何か協力できたら良かったけど。
現状では何もできそうにない。二人相手に手も足も出なかったんだから。
落ち込んで教室に戻ると、なづなが安心した様子で駆け寄ってきた。
「三尋、遅かったね」
「あ、あぁ。いや、実はトイレで襲われて」
「お……え!?」
狼狽えながら言うと、なづなは血相を変えて叫んだ。
「襲われ……って、何!? 一体何されたんだよ!」
彼はまた真っ青になり、全身をチェックしだした。そのテンパり加減は半端ない。
「大丈夫だよ、落ち着け。襲われたんだけど、助けてもらったんだ。ほら、お前が言ってた生徒会長に」
「えっ……ほ、ほんと?」




