#5
だけど確実に、混乱の魔の手は忍び寄っていた。三学年、一組と二組で一人ずつレイプされれば当たり前だ。そして次は三組の番。しかし未だにその対象が明かされないことで、三組の空気は緊迫し最悪だった。
膠着状態。ただでさえ受験シーズンでピリピリしてるというのに、身の周りまで気を張らなくてはいけない。
三組の前を通り過ぎる際に覗いてみると、誰も笑っていなかった。もはや誰も会話してない、という状況。
「おかしいよなぁ、皆。そんなに怖いなら攻撃に出ればいいのに」
放課後、三尋はなづなに相談するのが日課になった。
「誰が犯人なのか分からないからこそ、一致団結しなきゃ。レイプなんて真似するからには、きっと犯人はゲイだろ? そういう奴らを見つけて、問い詰めたらいい」
「その通りだけど、この学校じゃその手はあんまり使えないよ。だって、ゲイの方が絶対多いもん」
「マジで……」
なづなの言葉に、三尋はげっそりした。彼が言うには、大体の男子生徒が恋人とイチャイチャしてるらしい。そこから犯人を絞り込むのは至難の業だと言う。
「へへ。だからさ、なおさら厄介だよね。……あ、でも一人だけ頼れる人がいるよ。この学校の生徒会長は生贄ゲームの犯人を捜してるから」
「へぇ。生徒会長」
「そう。生徒会長の炭野健史。眼鏡かけてて、四組にいるよ。普段はだんまりだから、ちょっと近寄りづらい雰囲気だけど」
眼鏡か。今度四組を覗いたら捜してみようかな。
「ちなみに、三尋に言ったっけ? 俺も生徒会だよ。副会長」
「えっ初耳だよ」
意外だったけど、ちょっと納得した。彼の世話焼きな所、学校のことを懇切丁寧に教えようとしてくる所。考えると全体的に適任だ。
「とにかく、怖いけど早く終わることを祈ろうね」
「おう。……あ、俺ちょっとトイレ行ってくるな」
「分かった、行ってらっしゃい」
なづなに見送られ、三尋は校舎の奥にあるトイレへ向かった。そして普通に入ろうとしたが、中から妙な声が聞こえてきた。
「……う、あ……っ!」
苦しそうな声。何事かと思って中を覗くと、目を疑うような光景が飛び込んできた。
「ふ、っあ、ぁ……んん……っ」
通路の一番奥で、二人の男子生徒が抱き合ってキスをしている。あまり大胆で絶句した。
いやいや……やるならせめて個室に入ってやれよ……!
ドン引きしながら立ち尽くす。すると、生徒二人は三尋に気付いた。
「……あれ、もしかして君も入りたいの?」




