#3
「大変だなー、伏美は。俺の親みたいに、迷惑かけなきゃ進学でも就職でも構わないって感じなら良かったのに」
「はは、それはそれで大変そうだけどね」
マイペースに話す二人を、なづなは黙って見ている。しかし、何か閃いたように両手を叩いた。
「そうだ! 帰りにさ、駅前にできたパンケーキ屋さんに行こうよ。テスト期間に入ったら遊べなくなるし」
「お、いいね。腹減ってきたし行こうぜ」
でもパンケーキ屋“さん”って……。そういう所が男になりきれない原因だぞ、と内心苦笑した。
学校を出てから、なづなが案内したカフェに入った。やはりかなりの人気ぶりで、席に着くまでは結構待った。
それでもメニュー表を見てると、そんな不満や疲れは一気に吹き飛ぶ。
「うわっ、この生クリームの量すごくね? なづな、お前これ頼めよ。俺こっちのハチミツのにするから」
「良いね、そうする。伏美君は?」
「俺は、このイチゴが乗ってるやつにする」
注文したパンケーキが運ばれた時は、もうテンションはマックスだった。
「写真の倍は大きいよ。全部食べられるかな」
「食べれなかったら俺が食ってやるよ。でも先に一口交換しようぜ」
「うん!」
三尋となづなは自分のパンケーキをフォークに突き刺し、互いの口に入れた。
「うま!」
「おいしー!」
二人の盛り上がりは最高潮。しかしその前で向かい合って座る伏美は、嫌な汗を滝のように流していた。
「仲良いね、君達……何か、アレ……カップルみたい。もしかしてそういう関係だった?」
「え!?」
三尋は危うくフォークを落としかける。なづなも、飲んでたジュースを吹き出しそうになった。
「俺は別にそういうの偏見ないから良いけど。ウチの学校多そうだし」
「いや違う!! ごめん、確かに……ちょっとあれだな。ベタベタし過ぎだわ」
興奮しすぎて普段なら絶対にやらない事をやってしまった。男同士で「あーん」とか、有り得ない。もちろん人生初の経験だが、恥ずかしさに臍を噛む。
「俺もごめん。何かテンション上がっちゃって」
なづなも申し訳なさそうに謝る。
「見苦しいものをお見せして申し訳ない……」
「いや、別にいいじゃん。仲良いのは」
伏美は笑って、ケーキを二口分ナイフで切った。
「俺のも食べてみない?」
「サンキュー!」
「あ! 伏美君、俺のも食べて!」
結局最後は三人で味見して、スイーツを満喫して店を出た。久しぶりに長い時間誰かと笑い合った、満たされた空間だった。




