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時間を巻き戻す力を授かったら呪われたみたいにやたらと死に戻るのですが。~おそらく不死身の令嬢エミリア~  作者: 有郷 葉


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16 エミリア、戦車の砲台になる。


 私がハンターになって一週間が過ぎた。

 最初のマウルス討伐の依頼をこなしてから、私とセレーナ、リーシェのチームは受ける依頼の難易度を徐々に上げていった。現在は大体中級の仕事を選ぶようになっている。


 私達は全員がランクAなので、本来なら最上級に近い依頼も可能らしい。だけど、無理はしない。セレーナとリーシェは早くもっと上をとせっつくけど、決して無理はしない。

 ランクは高くても私達はハンターとしてはかけ出しの新人であり、経験を積まないと思わぬことに足をすくわれることもあると思う。とにかく何より慎重に、を常に心がけている。


 チームとしてはそんなスタイルで、私にはあの重装備があるので、この一週間は一度も死にかけるような目に遭っていなかった。

 とてもいい感じだ。このまま私は手堅い硬いハンターとして生きていく。


「エミリア、なんか上機嫌だな」


 車内で向かいに座るセレーナが私の顔を覗きこんできていた。


「順調だからね、……とちょっと待って、リーシェが呼んでる。どうしたの?」

(敵です。まだ遠くですがウルギトスを見つけました)


 兎の契約獣からの思念を受けて、立ち上がった私は備え付けの梯子を下ろす。天井の扉を開けて外に上半身を出した。

 リーシェに方角を聞いて目に魔力を集中させると、二頭の大狼の走る姿が確認できた。


(接近すれば私やセレーナでも……、ってもうそのポジションにいるということはエミリアが仕留めるんですね。射程距離が長すぎてもう反則の域ですよ……)

「遠くから倒した方が安全でしょ。とにかく何より慎重に」


 ここ最近の信条を述べながら腕輪を起動。鎧は出さずに魔導砲だけを手の上に出現させた。

 魔導砲を構えて、呼吸をウルギトス達の動きに合わせる。

 ……よし、捉えた。


「〈ファイアボール・キャノン〉発射!」


 ドォー……ン。


 砲撃後、草原の向こうで爆発が起こる。二頭の大狼が黒焦げになって力尽きているのを確認した。


 私の魔導砲は大砲なだけにかなり射程が長い。なので近頃はこうやって車の上から魔獣を狙撃することも多くなってきた。ここに来て天井にも扉を付けたのが活きている感じだ。


 厚い装甲の車に大砲が備え付けられた兵器を何と呼ぶか、転生者である私は知っている。戦車、そう、これはもう兎戦車と呼ぶ他ない。


(私はこの兎戦車を気に入っていますよ。装甲もさらに強固になって、もうどんな戦場でも突撃できそうです)


 リーシェは嬉しさを表現するようにピョンと跳ね、連結されている車がガタンと揺れた。


「……分かったから安全運転でお願い。兎だからって好きな時に跳ねていいってものじゃないよ」


 ため息をつきながら私は車内へと戻る。


 この一週間で稼いだお金の使い道の一つが車の防御力アップだった。装甲を厚くし、加えて特殊な魔法コーティングまで。戦場に突撃するつもりはないけど、大抵の状況に対応できると思う。

 残りの報酬は二人と一頭で分けていて、私のお金は新しい魔法の習得に使ったりしていた。強化魔法と、ああ、もう一つ攻撃の魔法も覚えたね。


 さっきの砲撃はそっちを使ってもよかったんだけど、と思っているとセレーナが目の前にギルドの依頼書を出して見せてきた。


「早速二頭討伐だ。今回の作戦、私達はトップを狙うぞ」

「まだ新人なんだからもっと控え目にいこうよ……」


 私達は今、コルテシアの町から西に向かって走っている。この先には広大な森が広がっていた。そう、コルテシアを目指していた時に迂回したあの森、一度は私が死にかけたあの森だ。

 以前もかなりの数のウルギトスがいたわけだけど、現在はさらに増えて大変なことになってしまっている。もう森から溢れて、近隣の村々やコルテシアにも影響が出そうなんだよね。


 そこでハンターギルドはウルギトスの一斉討伐を決断した。参加可能なハンター全員に依頼書を配布。私達以外にも多くのチームや、支部長のカイルさんまで参戦する大規模な作戦になっている。討伐数がトップのチームには特別報酬も出るとか。


 私は別に順位なんかはどうでもいいんだけど、ただ、以前のように隠れているだけじゃなく一戦力としてちゃんと戦いたいという思いはあるかもしれない。


(またウルギトスがいますよ、今回も二頭です。やっぱり増えすぎて森から溢れてきているんですかね)


 再度のリーシェからの思念で、私は下りたばかりの梯子を再び上った。車の上で魔導砲を構え、引き金に指を当てたところでふと考えが変わる。

 次はあっちを撃ってみるか。


「〈サンダーボルト・キャノン〉発射!」


 魔導砲から放たれた雷が一直線に二頭のウルギトスに向かって飛んでいく。大狼達に当たると稲光と同時に轟音が響いた。


 私が習得したもう一つの攻撃魔法は〈サンダーボルト〉だ。

 魔法の属性は敵によって手札を変えられるように二種類くらい覚えるのが定番らしい。なので、私は火以外に雷を使うことにした。


(破壊力の高いその二つを選ぶとはいいセンスです。これで私の兎戦車は高い防御力に加え、二種の高威力砲を備え、まさに盤石!)


 リーシェが興奮気味に鳴き声を上げた。

 まあ引っ張っているのはリーシェだから、私の、でいいけどね……。人を備え付けの砲台みたいに言わないで。

 呆れていると下の車内でセレーナも何かぶつぶつ言っているのが聞こえた。


「……そう、火に加えて雷が発射できれば完璧……、……エミリアは完璧な人間兵器だ!」


 ……あ、確か私に雷属性を勧めてきたのはセレーナだった。このオタク、幼なじみをどうする気だ。


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