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迷宮(短編)

車の逝く先

作者: ぬりかべ君


それは葬式の帰り、見覚えある1台の軽トラ。


霧雨に濡れるフロント越しに人影が見える。

その人は微動だにせず、助手席に佇んでいる。


他にも何台か車が停められていたが、私はその軽トラに何故か視線が引き寄せられていた。


車体はよくある白、荷台には緑のシートが被せてあり、運転席側のシート留めの黒いゴムが一箇所取れていて、応急措置として黄色のビニール紐で結わえてある。


荷台のそれもだが、バックミラーに某人気アニメの動物をベースにした、キャラクターマスコットがぶら下がっている様子が、濡れてぼやけたフロントガラス越しでも見て取れる。


さっきまで参加していた葬儀の関係者所有に間違いないだろう。


参列者や葬儀社が出入りする為、玄関先や車庫などから一時的に何台かある自家用車を空き地に置かせて貰っているとは聞いてた、だからそこに停められていることに、さほど疑問は無く。そのすぐ側を自分の車で通り過ぎた。


そして、しばらく走った所で思い出す。


あそこの空き地に街灯があっただろうか?と。


私は割と近い親戚に当たる為、葬儀や納骨式、その後の宴会の片付けなど簡単に手伝いをしていて、一般の参列者より帰りが遅くなっていた。


晩秋で、外が暗くなるのも早い。


現に私の車もライトをつけて走行している。


何度も思い返してみるが街灯は無かった。


では、何故、車の中の様子が見えたのか?他に停められた車の中は見えなかったと断言できる。


なら、ルームランプが点いてた?そこまで考えると、私はひとりで納得し帰宅した。







翌朝、目覚めた私は昨夜の軽トラの事を思い出す。


あの人影は誰だったのか?と、見間違い?もし見間違いだとしてもルームランプは点いていたはずだ。


私は直ぐに親戚に電話した。



「もしもし?はい、お疲れ様でした。いえ、私は大した事は出来なくて・・・あの、実は昨日の帰りなんですが・・・」


私は人影の事は言わず、軽トラのルームライトの事を伝えた。もし一晩点けっぱなしならバッテリーあがりをおこすかもしれない。手遅れだったとしても早目に対処出来るに、越したことはないだろう。


しかし、返事は『今朝、空き地から車庫に移したが、ルームライトは点いて無かったし、バッテリーも大丈夫だったよ?』だった。


私はもしや?と思い、空き地に街灯があるか聞いてみた。『あそこは電柱すら無いよ』との返事。わたしは


「そうですか、何でも無かったなら良かったです。何かと見間違えたんでしょう、朝早くから電話してすみません」


そう告げ、電話を切った。


あの空き地、その直ぐ隣は墓地。昨日、納骨された故人のお墓がある場所だとふと思い出した。




『亡くなって四十九日は、この世を彷徨う。』




良く聞く話だが、それは案外、本当かもな?と思った。


あれは、故人がまだ自分が亡くなった事に気が付かず、見覚えのあるあの車に乗ったとか、それか、何処かへあの車で行けると思ったのかもしれない。



怖いとは思わず、不思議な体験だったと感じ。



取りあえず、四十九日を過ぎたら迷わず逝って下さいと祈っておいた。




ー終わりー

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