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〈キッチンファイターズ〉のラストイヤー

「味の素くんはピンでやっていきたいらしいわ……」

「そうか……」

「他に捜してくるわ」

「捜さんでええ。解散しよう」

「ちょっと待てよ。十五年間も頑張ってきたんやで。無駄にするんか」

「俺たちに才能はなかったんや。もう別の道を歩きたい」

「諦めるなよ! 十五年間を無駄にするんか!」

「無駄にするんやない。俺は、この十五年間は幸せな時間やったと思う」

「どういうことや? 売れてへんのに無駄やないか」

「なんもしてへんかったら無駄な時間やった。でも、俺は十五年間も頑張った。全然、無駄やない。大事な時間やった。必要な時間やった」

「コショウ……」

「死ぬとき、絶対に漫才をしていたことを思い出す。自分の人生で頑張っていた自分を思い出せるなんて、誇らしいことやと思わんか?」

「コショウ……」

「自分の好きなことを見つけて、売れるために、夢を叶えるのために真剣に頑張った。こんなにも好きなことにひたむきになれた自分を、俺は凄かったと自分で思う」

「コショウ……」

「俺は夢を叶えるためにひたむきになった時間が十五年間もあった。十五年間も好きに生きられた。俺は幸せ者やった」

「コショウ……」

「十五年間は無駄やなかった。だって、俺たちが夢に向かって輝いていた時間やぞ」

「……分かった。じゃあ、いつ解散するんや?」

「そうやな……。M-1の出場資格は十五年以内やったな。今年がラストイヤーか……」

「じゃあ、これが最後の舞台になるんやな」

「そういうことやな」

「やってやろうやないか」

「当然や」

塩とコショウはお互いに笑うと、力強く手を打ち鳴らした。




M-1の審査が始まった。

一次、二次、三次と通過し、今日は初めての準々決勝だ。二人で緊張しながら、舞台袖で出番を待つ。

ネタは完璧に頭に入っている。二人で壁に向かって何度も練習をした。劇場の地下でも何度も披露してきた。あとはお客さんと同じ様に、審査員の前でやるだけだ。

一つ前の組が終わった。

二人で目が合い、お互いに微かに頷く。


この四分間に、人生の全てを賭ける――


「エントリーNo.4056、キッチンファイターズ!」


当たり前の見慣れた光景。

二人揃って、舞台袖から出る。

今まで、山程、やってきたいつもの動作。

二人は、板の上で待つマイクスタンドへと向かった――

読んでくださって、ありがとうございました。

なにを書いてるんだろう。どう考えてもポエムじゃないですね。すいません。

実は解散バージョンをすでに書き上げ、後は投稿するだけだったのですが、なぜか投稿する気分にならなくて、そのまま放置。そして、なぜか今回の内容に突如、書き直して投稿しました。

こんなに好き勝手に動く人たちは、この二人が初めてでした。

キッチンファイターズを書き終わったので、また普通の詩集に戻ります。……普通の詩集に戻るってなに?


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