ルームメイトの前で被っていた仮面を脱ぐ
「バン!」
隣の部屋から響いて来た銃声で目を覚ました俺は、ベッドから飛び出て隣室に走った。
後頭部から流れ出る血で毛布やシーツを汚したルームメイトが、ベッドの上に仰向けに倒れている。
やっぱり一緒にいるべきだった。
先月ルームメイトの恋人が交通事故で死んだ。
彼を迎えに来る途中での事故。
自分が悪いんだと思い詰める彼を慰め叱咤して来たのだが、全て無駄になった。
俺は彼の身体を抱きしめて叫ぶ。
「何故だ! 何故死を選ぶんだ! 俺はお前を愛していたのに……」
俺はルームメイトの彼を愛していた。
ただ、異性愛者の彼に同性愛者だとバレて嫌われる事を恐れ、友人という仮面を被り続けたのだ。
「お前に愛され無くても良かったんだ、近くにいられるだけで幸せだったのに……」
叫びながら俺は彼の血まみれになったシャツを脱がし、血を拭き取る。
それから抱きかかえて血まみれの彼の部屋から運び出し、俺の部屋のベッドのヘッドボードに寄りかからせるように横たえた。
俺もシャツを脱いで上半身裸になり、彼の隣でヘッドボードに寄りかかりる。
それから彼の肩に手を回して肩を組むような体勢になり、スマホで写真を撮った。
彼が生きている時に同じような格好で写真を撮った事がある。
彼は彼女を驚かせようと冗談で、俺は内心の高揚を彼に知られないように必死に平静を保ち撮った写真。
あの時と同じように俺の心臓はドキ! ドキ! ドキ! ドキ! ドキ! と鳴り響く。
写真を撮ったスマホを足元に投げ出してから彼の頬にお別れのキスをする。
それから俺は彼が使った拳銃を手に取り、顎の下に当てて引き金をひいた。