第05話 兄と俺が最初の敵を倒すまで
俺は、ミドルスライムに向かって近づき、ミドルスライムの敵対範囲内に入ったのを確認して、杖を構える。そして、
「行くぞ! 『ウインド』!」
と唱える。と、どこからともなく風が吹いてきて、ミドルスライムを襲う。が、そこまで風は強くなく、ミドルスライムが怯むような様子はなかった。
と、ミドルスライムが、一を襲う。が、一は、冷静に飛び退いて、ミドルスライムを避けた。
その間に、俺は、新たな呪文を思いついていた。
「くらえ! 『ゲイル』!」
俺がそう唱えると、先ほどの風よりもさらに強い風が吹いてきた。すると、ミドルスライムは、風に立ち向かうように、前屈みになった。
「今だ! 『ダーク』!」
俺がそう唱えると、俺が前に出した手から、闇色の霧のようなものが放たれる。その霧は、ミドルスライムを覆うようにして、緑色だったミドルスライムを黒く染める。
しかし、ミドルスライムも黙ってはいない。ミドルスライムは、俺に向かって飛びかかってきた。俺は、魔法を放った直後の攻撃に反応が遅れてしまった。だが。
「周二、危ない!」
そう言って一が飛びついてきた。そのまま、俺と一は地面を転がり、ミドルスライムの攻撃をかわす。
俺は、転がって痛みを感じている間に、新たな魔法を思いついていた。
「行くぞ! 『マジックバレット』!」
『マジックバレット』は、日本語に訳すと、魔術弾、魔法弾を意味する。俺の狙いが当たっていれば……
俺がそう唱えると、俺の手から魔法弾のようなものが放たれる。その魔法弾は、ミドルスライムに直撃する。
よし! 狙い通りだ!
ミドルスライムは、この一撃によって、怯んでしまったようだ。
「今がチャンスだ! 一、仕掛けるぞ!」
「ああ!」
そして、俺と一でミドルスライムに集中攻撃を仕掛ける。
「行け! 『ゲイル』!」
「とどめだ! 【奇襲】!」
俺と一の攻撃が、ミドルスライムの左右から完全に決まった。と、ミドルスライムは、呻き声を上げながら、ドロドロに溶けて消えていった。
「終わった……な。」
「だな! やったぞ、周二! ……周二、勝てたのは周二のお陰だ。ありがとう。」
「いや、あの時、一が俺を庇ってくれていなかったなら、勝てていなかったかもしれない。それに、一がいなくて、俺一人で戦っていても、魔法の詠唱に集中できなくて、勝てなかったと思う。これは、一あっての勝利だ。これからもこの調子でやっていこうな!」
「ああ!」
俺と一は、勝利を共に喜んだ。と、隆司が声をかけてきた。
「さあ、依頼が終わったから、ひとまずギルドに……」
だが、その時。俺達を、のっそりと大きな影が覆った。俺がその方向に目を向けると、そこにいたのは……
「ド……ドラゴン……」
体長10メートルを優に超えるであろう巨大なドラゴンだった。
こんにちは、子りっくです。この作品の投稿は、実に三ヶ月ぶりになってしまいました。代表作の『ゲームプログラマーのゲーム世界冒険記』の執筆に力を入れた結果、かなり間隔が空いてしまいました。申し訳ございません。これからも、不定期での更新になりますが、よろしくお願いいたします。