第04話 兄と俺が最初の敵に挑むまで
俺達が掲示板についた。掲示板は、縦2m、横10m程の大きさがあり、100程の依頼が貼ってあった。その依頼のランクも、SSSランク推奨のものから、Eランクでも簡単にこなせるものまで、様々だ。
すると、俺と一に声をかけてくる者がいた。その声の主とは……
「まずは、Eランク推奨の依頼からの方が良いぞ。最初の方は、地道な積み重ねが大事だからな。」
明らかに、隆司の声だった。
「隆司か。それで、隆司、今あるEランクの依頼だと、どういう感じのものになるんだ?」
「えっと、だな。今あるやつだと、採集が三件、魔物の討伐が五件、護衛が一件、忘れ物拾いが一件って感じだな。」
「なるほど。一、どうする? やっぱり、ここは、魔物の討伐か?」
「そうだな。戦い方にも慣れておきたいからな。で、今、討伐対象になっている魔物は何だ?」
「今は、ドッグマン、ゴブリン、スライム、キャッツメン、ソードモンスターだな。」
「ソードモンスター?」
「ソードモンスターは、昔、粗末に扱われていた剣に、怨念の意思が宿り、それが魔物として覚醒したものだな。危険度はDランク中位として扱われるはずだが……」
「ちなみに、隆司、そのソードモンスターって、普通に群生してたりしないよな?」
「この辺じゃしてないが、治安の悪い街の近くだと、普通に大量発生してたりするらしいぞ。」
「嘘だろ……」
ソードモンスターが大量発生していると言うことは、それだけ、粗末に扱われている剣が多いと言うことだ。俺は、そんなところには、できるだけ近づきたくないなと思いながら、一と相談を始める。
「一、ここは、スライムとか、ゴブリンとか、そう言う弱いやつにしておいた方が良いと思うんだが、一はどう思う?」
「俺も同感だ。初戦で大敗して、心に傷を負うよりは、少しずつでも良いから、勝利を積み重ねていく方が良いと思う。」
「よし、じゃあ、スライムの依頼を受けることにしよう。」
「それじゃあ、依頼の受け方を説明するぞ。まずは、依頼の紙が留められているピンを外して、依頼の紙を抜き取ってくれ。」
俺は、隆司に言われた通り、依頼の紙を抜き取る。
「できたぞ。」
「次に、点線に沿って、依頼の紙を丁寧に破る。」
俺は、本当か? と疑いながら、点線に沿って、依頼の紙を慎重に破る。
「これで良いのか?」
「ああ。最後に、上の部分の空いているところと、下の部分、依頼のエントリー用紙の枠の中に、それぞれ、自分の名前を書いて、エントリー用紙の方を、受付に提出する。ペンは俺のを使ってくれて構わないのと、上の部分は、なくさないように、自分で、大切に保管しておいてくれ。」
俺と一は、言われた通り、上の部分と、エントリー用紙の枠の中に名前を書き入れ、エントリー用紙を、受付に提出する。
「できたぞ。」
「よし。次に、最低限必要な物と、あと、武器を渡しておくぞ。このバッグに全部入っているから、今、開けて確認してくれ。」
俺は、隆司からバッグを手渡される。俺は、バッグを開けて、中身を見てみる。中には、次のような物が入っていた。
・非常用食料七日分……ダンジョンや依頼途中で遭難してしまった場合の為の非常用食料。
・鍵縄付きロープ……ダンジョンで落とし穴に落ちてしまった時や、高い所に登る時に使える。
・ピッキング装置……ダンジョンの中の宝箱にかけられている罠を解除するときに使える。
・帰還球……ダンジョンの中や依頼途中で、街に帰還するときに、これを使えば、最後に訪れていた街に帰還する事ができる。
・魔石……この魔石を入れているバッグの容量は、大幅に増加する。
・金色の一万円玉×5……この世界の金貨。
・ソーサラー用の杖……ソーサラー専用の杖。
・アサシン用の短剣……アサシン専用の短剣。
「これだけで良いのか?」
「ああ。これさえあれば、生活していけるはずだ。最後に、ソーサラーの呪文を教えるぞ。風魔法の基本は、『ウインド』、魔属性の基本は、『ダーク』だ。そこからは、自分で呪文を考えて、新しい術を作り出して行ってくれ。それと、この依頼を受けている間、俺も一緒についていくからな。」
「それは助かるんだが……門番と案内の仕事は大丈夫なのか?」
「ああ。一応、あの仕事も、十数人で交互に回してるからな、そんなにたくさんの初心者異世界人が、この都市だけに集まってくるはず無いからな。さて、もうそろそろ行くか?」
「そうだな。それじゃあ、出発だ!」
俺と一、隆司は、冒険者ギルドを出て、依頼の場所へと向かうのだった。
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俺達が向かったのは、俺と一が、あのウサギと対峙した、あの草原だ。正式な地名は、『南の草原』と言うらしい。
で、依頼内容だが……
『南の草原の、町に近いところに、普通よりも強いスライムがいて、安心して遊べません。楽しく遊ぶために、倒してください。
報酬 1000マニー』
と言うものだった。どう考えても、小学校低学年レベルの子供が書いたとしか思えない文面だったが、困っているというのなら、手を差し伸べない訳にはいかないだろう。そう思い、俺は、依頼を受けたのだ。
と、前方に、体高50cm程の、普通よりも大きいスライムが見えた。
「止まれ、周二、一。」
俺は、隆司に呼び止められて、立ち止まる。そして、隆司の話を聞く。
「一、隆司、前に見える、あの大きなスライムが今回のターゲットだ。だが、あのスライムは、そこら辺にいる、スモールスライムなんかじゃない。あれは、ミドルスライムだ。スモールスライムよりもずっと狂暴で、ずっと強い。子供達からすれば、脅威でしかないだろうな。で、役割としては、どうするつもりだ?」
「そうなんだよな……」
一の職業は、敵の攻撃を回避した後の、カウンターが得意な、『アサシン』というもので、今、一の回避適性は、全てSランク以上に上がっている。が、攻撃適性が低いので、一には、回避のみを任せて、攻撃は、俺が受け持つようにしようと考えている。
「一、攻撃なんだが、俺に任せてくれないか? 一は、攻撃適性は高いんだが、攻撃が低くてな……そこで、一には、前衛で、敵の攻撃を避ける役目を任せたいんだが……」
「ああ。任せてくれ。」
あれ、思っていた反応と違う……もっと、なんか、地味な回避より、派手な攻撃がしたいなんて事を言ってくるのかと思ってたんだが……
「よ、よし。じゃあ、一、行くか!」
俺はそう言い、ミドルスライムに向かって、歩み寄って行くのだった。