第03話 兄と俺がギルドに登録するまで
俺と一は、隆司の後をついて行く。そして、五分程歩いた後、隆司が、ある建物の前で立ち止まる。そして、
「ここがギルド本部だ。」
と隆司が言った。が、その建物は、とてもギルドとは思えない外見をしていた。周りの住宅と、特に大きさや見た目が変わらなかったのだ。俺は、思わず、
「本当にここで合ってるのか?」
と隆司に問いかける。
「ああ。外見はちょっとあれだが、中は、『空間拡張』がかけられてるから、見た目の数倍はでかくなってると思うぜ。」
隆司は、そう答えると、ギルドの中に入って行く。俺と一も、その後を追って、冒険者ギルドに入って行った。
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「……広い」
冒険者ギルドの中に入った俺の第一声は、その言葉だった。冒険者ギルドは、隆司の言っていた通り、外見はあれだったが、中は、都会の方の大きな駅程の大きさがあり、冒険者達で賑わっている。
「登録窓口はこっちだ。ついてこい。」
そう言い、再び歩き出す隆司の背中を、俺と一が追いかける。
隆司の歩いて行く先には、異世界人専用のギルド窓口があった。
「窓口の人も日本人の異世界人だから、自分達で登録できるはずだ。試しにやってみろ。」
そう隆司に言われたので、俺は、窓口に立っている女性に話しかける。
「すいません、ギルド登録をしたいのですが……」
「はい。お名前をお伺いしても宜しいですか?」
「勿論。俺は、中野周二と言います。」
「中野一だ。」
「なるほど。どちらも、日本人のようですね。それでは、お二人の適性をはかるので、この魔力球に、順番に手を翳してください。」
俺が、窓口の女性にそう言われ、俺が、魔力球に手を翳す。と、魔力球の上に、アクリル板に文字を入れたような、不思議なウィンドウのようなものが出てくる。そこには、俺の適性が書いてあった。
中野 周二 年齢 24 男
打攻撃 S 打防御 E 打回避 E
斬攻撃 A 斬防御 E 斬回避 E
突攻撃 A 突防御 E 突回避 E
炎攻撃 A 炎防御 E 炎回避 E
氷攻撃 A 氷防御 E 氷回避 E
雷攻撃 A 雷防御 E 雷回避 E
風攻撃 A 風防御 E 風回避 E
魔攻撃 S 魔防御 E 魔回避 E
聖攻撃 A 聖防御 E 聖回避 E
耐久 E
総合 D+
次に、一が魔力球に手を翳す。
中野 一 年齢 27 男
打攻撃 E 打防御 E 打回避 S
斬攻撃 E 斬防御 E 斬回避 A
突攻撃 E 突防御 E 突回避 A
炎攻撃 E 炎防御 E 炎回避 S
雷攻撃 E 雷防御 E 雷回避 A
氷攻撃 E 氷防御 E 氷回避 S
風攻撃 E 風防御 E 風回避 A
魔攻撃 E 魔防御 E 魔回避 A
聖攻撃 E 聖防御 E 聖回避 S
耐久 E
総合 D+
何だ、このステータス? と俺は思い、目をこすってみるが、やはり、俺の目に映るステータスは変わらない。俺のは攻撃に、一のは回避に、ずらっと並んだAとS。そして、それ以外のところにずらーっと並ぶE。何なんだ、このステータス……と俺が考えていると、受付の人が、
「それでは、次に、職業を決めるので、今から私の提示する職業の中から、一つだけ選んでください。まずは、周二さんからです。」
と言って、俺に、いくつかの職業を提示してきた。
・ブレイカー……ハンマーを使い、圧倒的な物量で相手を押し潰す。攻撃属性は主に打。〘クラス特性〙打攻撃・防御・回避適性+1
・ランサー……槍を使い、遠くからの攻撃が強み。攻撃属性は主に突。〘クラス特性〙突攻撃・防御・回避適性+1
・ソードメン……剣を使い、多彩な攻撃技が魅力の一つ。攻撃属性は主に斬だが、その他属性を操る事もある。〘クラス特性〙斬攻撃・防御・回避適性+1
・ソーサラー……主に魔・風属性魔術を使い、一撃一撃の威力が大きいのが魅力。〘クラス特性〙魔・風攻撃適性+1
・ウィザード……主に炎・氷属性魔術を使い、速射性の高い術が多いのが魅力。〘クラス特性〙炎・氷攻撃適性+1
・シャイナル……主に雷・聖属性魔術を使い、放つ光は幻想的。〘クラス特性〙雷・聖攻撃適性+1
「この中から、一つだけ、選んでください。」
俺は、どの職業が良いかと思案する。出来るだけ、得意属性を生かせる職業を選びたいが……問題は、SSランクが存在するかどうか、だな。俺は、この世界に関しては無知なので、受付の女性に訊いてみる事にした。
「すみません、訊きたい事があるのですが、良いですか?」
「はい、何でしょう。」
「適性ランクって、何ランクまであるんですか?」
「適性ランクは、EランクからSSSランクまであり、高ければ高いほど、ステータスの初期値や、存在レベル上昇時に上昇するステータス量が高いなります。他に質問したい事はありますか?」
「存在レベルと言うのは何ですか?」
「存在レベルとは、自分の存在の大きさを表すもので、弱い敵を倒した場合や、簡単な依頼をこなした場合には、1~3ほど上がり、強い敵を倒した場合や、難しい依頼をこなした場合には、6~8ほど上がります。存在レベルが上がると、先ほど申し上げました通り、ステータスが上昇し、また、存在レベルが一定以上に到達すると、ギルドランクのランクアップテストに参加する事ができます。」
「なるほど。ありがとうございます。」
さて、適性ランクがSSSまである事が分かった今、俺は、ソーサラーかブレイカーを選ぼうと思っている。どちらかと言えば、多属性を操れるソーサラーの方が良いと思っている。一も随分待っているだろうし、ここは思いきって……
「ソーサラーで登録します。」
「了解しました。一さんの職業が決まるまで、少々お待ちください。」
受付の人は、そう言うと、一に向き合う。その間に、俺は、現実世界への帰還方法について考える。
普通に考えると、魔王とか、神とか、そう言う最終目標の討伐なんだろうけど、相当な時間がかかるに違いない。もしくは、冒険者ギルドの最高ランクに到達することだろうか。だが、それも、莫大な時間と労力を要するに違いないだろう。最悪なパターンとしては、そもそも帰れないパターンだな。まあ、帰れなくなっても、それならそれで楽しそうだから、構わないが。
そう俺が考えていると、一の職業が決まったらしく、受付の人が俺に声をかけてきた。
「今から、お二人のステータスを示した情報球をそれぞれにお渡しします。なくさないようにお気をつけください。試しに見てみてはいかがでしょう。情報球に向かって、『ステータス』と唱えてみてください。」
「分かりました。ステータス!」
俺がそう唱えると同時に、一もステータスと唱えていた。
そこには、俺と一のステータスが載っていた。
中野周二 職業ソーサラー
属 攻 ,防 ,回
打 60,10,10
斬 50,10,10
突 50,10,10
炎 50,10,10
雷 50,10,10
氷 50,10,10
風 60,10,10
魔 80,10,10
聖 50,10,10
HP50
存在レベル 1
中野一 職業 アサシン
属 攻 ,防 ,回
打 20,10,80
斬 20,10,60
突 20,10,60
炎 10,10,80
雷 10,10,60
氷 10,10,80
風 10,10,60
魔 10,10,60
聖 10,10,80
HP50
存在レベル 1
「それでは、お二人を冒険者ギルドに登録しますね。まずは、Eランクからのスタートになります。存在レベルを200まで上げれば、Dランクへのランクアップテストの挑戦資格を得る事ができます。まずは、依頼を一つ受けてみてはどうでしょう。あそこの掲示板から依頼を受けられますよ。」
「よし、周二、行くか!」
俺と一は、最初の依頼を受けるため、掲示板へと向かうのだった。