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第五話 釣り餌

 数週間が経ち、窓から見える隣家の玄関は、クリスマスツリーから門松に変わっていた。


 相互フォローのエミリちゃんから、『ミッシーのお誕生日をお祝いしたいから、人気のカフェでホイップクリーム山盛りのパンケーキご馳走するよ』と誘われた。


 決して嫌ではなかった。女子同士だし、SNSだけのつながりだけど、他愛もない話もできるし。相手が男の場合より危険も少ない。


 それでも断るしかなかった。プロフィールのワタシと、実際のワタシが違いすぎて合わせる顔がない。Switterではエミリちゃんと同じ十九歳だけど実際は二十九歳。


 若返りエステと美容整形して整えてからじゃないと会うなんて無理。 早くお金貯めて、中華系マレーシア人女子高生の顔を持つワタシにならないと。


  男なんて、夏の夜に電灯に群がる虫ケラだ。エミリちゃんは生身の人間の女子だから断りのメッセージを送る時に手が震えてしまう。


『ごめんね。今はバタバタしてて難しいから、また別のタイミングにね』

『わかった。大丈夫だよ。せめて誕プレだけでも送りたいけどダメかな』

『ありがとう。嬉しい。でも、どうやって受け取ればいいかな』

『ミッシーが住所教えるの嫌じゃなかったらお家に送るけど』

『母が気にするかな』

『てか、前に男のネッ友さんからプレゼント貰った時はどう受け取ったの』

『このサイトからプレゼント選んでもらえると、ワタシの方で受取先の住所を入力できて相手に伝わらないんだよ』

『じゃ、ここから選ぶね。ありがとう』


 ため息を吐き、眉間を指で揉み込む。無性にお腹が空いてくる。

 

 自室の中は十九歳から時が止まってるみたいだ。学習机、教科書、少女コミック、学生服。大人の女性らしい化粧台も、ポーチも、洋服も、カバンもない。母が血相を変えて嫌がるからだ。

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