3.夜食
夢から覚めました
遠くで声がする。
「…………りー……………えりー……………エリー………!」
ゆっくりと目が開かれる。
「エリー!よかった……」
ぼんやりとした意識の中、ホッとしたようなアンディの顔に、夢から覚めたのだと気づく。
「……アンディ………」
「戻ってきたらエリーが寝てたから、起こしちゃ悪いなって思って出て行こうとしたんだけど、急に魘され始めて……」
少し涙目のアンディに胸がギュッと痛む。
「……ごめんね、変な夢を見ちゃって」
スッと手が伸びて、額に触れる。
「酷い汗……タオル持ってくる」
「あ、大丈夫だよ。あとで着替えるから」
部屋から出て行こうとするアンディを引き留め、夜着の袖で額の汗を拭う。
「心配かけてごめんね。私は大丈夫」
「……エリー……」
まだ心配そうな顔のアンディに笑顔を見せる。
「ほら、今日は色々あったじゃない?それで頭が混乱しているのかも」
「…………そう……かもしれないね」
不安気なアンディに手を伸ばす。
「大丈夫だよ。ゆっくり眠れば大丈夫」
私の手を取り、優しく握り返してくれる。
「……わかった。もう遅いから部屋に戻るね」
名残惜しそうに手が離れる。
「うん、おやすみ、アンディ」
「おやすみ、エリー」
そう言って出て行くアンディの後ろ姿を見送る。膝が痛いけれど、寝汗でぐっしょりと濡れた夜着のままでは気持ち悪いので、痛みを我慢してベッドから降りた。
チェストからタオルと夜着を取り出し、身体にべっとりと張り付いている夜着を脱ぎ、汗を拭いてから洗濯済みのきれいな夜着に着替えた。気持ち悪さが解消されて、さっぱりした気分になる。
ぐぅ~…………
静かな部屋の中に響くお腹の音に、アンディが出て行ったあとで良かったと心から思う。
机の上に置かれた夜食を食べようと、サイドテーブルの上のランプを移動させる。トレイの上には、パンと野菜のスープ、茹でたソーセージとポテトが丁寧に並べられていた。
夜中に食べるのは良くないけれど、朝に食べたきりだから今夜はいいでしょう、と自分で自分を許すことにして。
椅子に座り、手を組み、目を閉じ、豊穣の女神様へ畑の恵みに感謝を込めた祈りを捧げてから、食事を始める。まだほんのり温かさが残るスープにちぎったパンを浸して口に入れた。
質素な食事ではあるけれど、孤児院にしては充分豪華な食事だと思う。以前は酷いようだったけれど、先々代の王妃様が改善してくれたおかげだという事を、神官長様が教えてくれた。
――ありがとうございます、先々代の王妃様
行儀が悪いかもしれないけれど、アンディが運んでくれた食事を王妃様にも感謝しながらしっかり完食する。
――あー、美味しかった
手を組み、目を閉じ、豊穣の女神様と先々代の王妃様に感謝の祈りを再度捧げ、空いた食器を纏めて机の端に寄せておく。膝の痛みを我慢しながら椅子から立ち上がり、再びベッドに戻る。
満たされたお腹が眠気を誘う。目を閉じると、ゆっくり意識が落ちていくのを感じながら、意識を手放した。
子供の成長にはしっかりとした食事が必須
孤児院でもしっかり食べられるの大事
先々代の王妃様は良き王妃様です




