第24話 螺旋階段での戦い①
そうして、魔力を回復することが出来る青リンゴを手に入れたアレスはついに螺旋階段を降り始める。
螺旋階段を降り始めた時、下に視線を向けてみると、最下層にはゾンビは一体もいなかった。
最下層にゾンビが確認できなかったアレスは、ゾンビが時計塔に入れないと言う仮説は正しいのではないかと思い始めた。
しかし、その期待は大いに裏切られた。
アレスが螺旋階段を降り始めてから数分が経った時、一体のゾンビが時計塔の中へ入ってきた。
そして、アレスとバッチリ目が合った。
それも最低80メートルは離れているのにだ。
彼らはゾンビにはなっているものの元々は獣人であったため、視力が人間よりも高いのだろう。
そして、ゾンビになってもなお、その視力は衰えていない可能性は十分にあり得る。
アレスも80メートル下にいるゾンビと目が合っていることから、彼もゾンビのことが見えていることが分かる。
どうやら、アレスも獣人にも負けないほどの視力を持っているようだ。
アレスはゾンビと目が合った後、ゾンビは80メートル先にいるアレスにも届くほどの遠吠えをあげた。
その瞬間、時計塔の中へ大量のゾンビたちが雪崩れ込んできた。
その数は凄まじく、ゾンビたちは入り口の辺りで渋滞を起こしている。
おそらく、先ほどの遠吠えでこの辺りにいるゾンビたちを引き寄せたのだろう。
渋滞を起こしながらもゾンビたちはアレスに襲い掛かろうと螺旋階段を登り始めた。
螺旋階段を登り始めたゾンビたちは我先にと言わんばかりに周りを押し除け、必死に階段を駆け上がっている。
中には他のゾンビに押されたことで階段から踏み外し、中央の穴へ落下してしまったゾンビも存在していた。
しかし、中央の穴へ落下するゾンビたちがいたとしても問題ないほどの大量のゾンビが螺旋階段を駆け上がってきている。
そんなゾンビの群れを見たアレスは即座に迎撃の態勢に移る。
今のところ、ゾンビたちはアレスに向かって走ってきているだけであることから、遠距離攻撃手段を持たないと考えて良い。
そのため、アレスは今いる位置から少しでも多くのゾンビを駆除する方針で動く。
早速アレスは魔力の矢を生み出す。
それも5本同時にだ。
威力はゾンビたちを一撃で葬り去るギリギリのラインにしており、魔力消費をなるべく減らしている。
魔力を回復させる青リンゴを手に入れたのだが、この青リンゴにも数の限りもあるのに加え、魔力を全回復させるほどの効力もない。
そのため、あれだけの数のゾンビを倒すためにはなるべく魔力の消費を抑える必要がある。
魔力の矢を生み出したアレスは迫り来るゾンビの群れに向けて狙いを定める。
そして、アレスは5本の矢を一斉に放つ。
放たれた5本の矢は見事に命中し、最前線にいたゾンビ二体、中腹にいたゾンビを三体の頭を撃ち抜いた。
頭を撃ち抜かれたゾンビたちはバランスを崩し、倒れてしまった。
先頭を走っていたゾンビがいきなり倒れたことからそのゾンビに巻き込まれたゾンビが数体中央の穴に落ち、倒れたゾンビに引っかかって穴へ落ちたものもいた。
中腹で撃ち抜かれたゾンビたちも同じようにその場で崩れ、巻き込まれて穴へ落ちたゾンビたちもいた。
だが、この頭を撃ち抜かれたゾンビたちは雪崩れ込んでくる多くのゾンビたちに本気で踏みつけられることで肉が弾け飛んでいき、いつしか原型を留めない挽肉へと様変わりしていた。
そして、このゾンビたちは直ぐに障害物としての役割すらも担えなくなった。
そんなゾンビたちにアレスは構うことなく新たに8本の魔力の矢を生み出す。
再び狙いを定め、一斉に放つ。
一斉に放たれた魔力の矢はアレスの狙い通りにゾンビたちの頭を撃ち抜いた。
そうして、アレスが魔力の矢を生み出してはゾンビの群れに放ち、この一連の流れを数十回繰り返した時、アレスの魔力が残り少なくなる。
一方、ゾンビの群れはまだまだ健在であり、アレスを襲おうと必死に螺旋階段を駆け上っている。
アレスは尽き掛けている魔力を回復するためにも収納魔術でしまった青リンゴを取り出し、勢い良く齧り付く。
そのままアレスは勢い良く青リンゴを食べ尽くす。
青リンゴを食べ終わると、アレスの体内から魔力が溢れ出し、尽きかけていたアレスの魔力を回復させる。
魔力が回復したことで、アレスはそのまま戦闘を再開する。
アレスは再び魔力の矢を生み出しては螺旋階段を駆け上ってくるゾンビを狙い撃つと言う作業を繰り返す。
何度も何度も同じ作業を繰り返していたアレスであるが、ゾンビの群れの数の勢いは凄まじく、彼らを抑える事はできず、その距離はどんどん縮まっていく。
ゾンビの群れとの距離が縮まるにつれ、アレスの顔に焦りが見え始める。
焦り始めたアレスであるが、直ぐに深呼吸をし、焦る心を落ち着かせる。
心を落ち着かせたアレスは再び攻撃を再開する。
そうして、アレスが迎撃を始めてから5分が経過した時、アレスとゾンビの群れとの距離は20メートルを切っていた。




