第11話 囚われの騎士
アレスは全速力で時計塔の中へ駆け込むことで、グリフォンから何とか逃げ切ることができた。
最初は時計塔の中まで追ってくるのでないかという不安もあったが、グリフォンの体が時計塔の入り口よりもはるかに大きかったため、中へ入ってくることはなかった。
そして、グリフォンをまじかで見たアレスはその想像を優に超えるほどの大きさを誇るグリフォンの体に驚きを隠せなかった。
世間一般的に認知されているグリフォンは大きいと言っても2、3メートルほどである。
だが、今アレスの目の前にいるグリフォンは10メートルを優に超えており、世間一般的に認知されているグリフォンの三回りほど大きい。
それに、このグリフォンの目は血走っており、必死に獲物であるアレスのことを捕まえようと前足を時計塔の中へ入れてかき回すという殺意が高すぎる行動をしている。
そんな殺意の高いグリフォンを見たアレスは普通に怖かった。
あまりにも殺意が高すぎて。
アレスはこのままグリフォンの視界に居続けたら永遠に時計塔の中へ入ろうと足掻き続けそうだったので、下へ降りようと思った。
そうして、下へ降りることにしたアレスであるが、一つ気になる装置があった。
それはこの時計塔の上についている鐘を鳴らすためのレバーだ。
別に時計塔を降りるだけならこのレバーを引く必要はない。
だが、アレスはこの殺意の高すぎるグリフォンが下へ降りてもついてくるかもしれないという恐怖心を抱いていた。
そして、このレバーを引いて鐘を鳴らせば、グリフォンが驚いて逃げるのではないかと考えたのだ。
しかし、鐘を鳴らすということはこの地区一体に音が響き渡るということであり、アレスが時計塔にいることを教えるようなものだ。
この鐘の音に気づいたこの国の者たちが一気にこの時計塔に押し寄せ、自分のことを狩りにくる可能性もある。
そんなことになれば、アレスは押し寄せてきた敵たちによって蹂躙されてしまうだろう。
そのため、アレスは鐘を鳴らすのか迷った末にやっぱり鐘を鳴らしてグリフォンを追い払う選択肢を取ることにした。
グリフォンを追い払うことを選択したアレスは早速レバーを勢い良く下ろした。
その瞬間、
『ゴォォオオンンン!!!ゴォォオオンンン!!!ゴォォオオンンン!!!』
時計塔に吊るされている鐘が鼓膜が破れんばかりの轟音を放ちながら揺れ始めた。
アレスはあまりの大きさに耳を塞いでいたのだが、グリフォンはアレスよりも耳がいいのに加え、耳を抑えることが体の構造上できないので、モロに鐘の音を聞いてしまった。
そのため、グリフォンはあまりの大きさに怯んでしまい、勢い良く時計塔からどこかへ飛んで行ってしまった。
グリフォンがどこかへ飛んで行ったことを確認したアレスは安堵すると、時計塔を降りることにしたのだった。
時計塔を降りることにしたアレスは昔ながらの機械仕掛けであるエレベーターに乗ると、下矢印のボタンを押した。
そうすると、中に乗っている人が落ちないよう入り口が閉まった後、ゆっくりと下へ向けて降下し始めた。
そうして、エレベーターに乗ってからしばらくすると、エレベーターは目的地に到着した。
どうやら、このエレベーターは一階まで繋がっているわけではないようで、一階に向かうには階段を降りなければならないようであった。
なので、アレスは階段を降りていると、
「誰か!誰かいないか!」
誰かが助けを呼んでいる声が聞こえてきた。
アレスはこれは何かの罠かと思い、警戒しながら階段を降りていくと、そこには吊るされた檻の中に全身を鎧で固めた男が幽閉されていた。
その男が着ている鎧は上等なものであり、背中には何かの紋章が描かれたマントがついている。
この騎士の鎧にもマントに描かれた装飾がいくつも施されており、彼はどこかの騎士団に所属していたのだろう。
そして、腰には左右それぞれ一本ずつ剣を携えており、彼が二刀流の使い手であることが窺えた。
アレスがこの囚われている騎士のことを隠れながら観察していると、彼の視線に気づいたのか、騎士がアレスの方へ顔を向けた。
騎士とばったり目があったアレスはまずいと思い、その場から急いで離れようとしたのだが、
「まっ!待ってくれ!!貴公がこの塔の鐘を鳴らしたのだろう!?それなら、私は貴公の仲間だ!私も貴公と同じ獣王ガルフィンドを討ち取りに来たのだから!!」
檻の中に囚われていた騎士が必死に自分はアレスの仲間であると訴えた。
どうやら、この捕まっている騎士はアレスと同じ獣王ガルフィンドを討ち取りに来たようだ。
もしも、彼が本当に獣王ガルフィンドを討ち取りに来たのなら、ここで檻に閉じ込められていることに説明がつく。
それに、彼はアレスが鐘を鳴らしたことで獣王ガルフィンドを討ち取りに来たのだと判断した。
これは彼がアレスの知らない情報を持っているため、こう判断したのだと考えるのが妥当である。
他にも彼が本当にアレスと志を共にする仲間であるならば、これからの旅で彼に助けられる場面も出てくるだろう。
これらの理由から、アレスはこの騎士の話を聞いてみることにしたのだった。




