ちーとだちーと!
「うえぇーん。もうしませぇーん」
だから許してと幼女が泣きわめいておりますが、私そんなに酷い事してないよ……? ちょーっと異世界仕込みの魔法ぶちかましただけなんですけどー?
ちなみに戦闘シーンは割愛だよ!
木の根っこ&アリスちゃんバーサス私の血沸き肉踊る決戦かっこ笑いかっことじは、一撃で終わったので説明のしようがありません。何ていうかね、もう面倒だから異世界魔法使わせていただきました。紙防御二倍体質の私があんなのと真正面から馬鹿真面目に戦うとか無理ゲーなので。何度死に戻るか分かったものじゃあない。
ちなみに異世界魔法は自前。転生特典で引継ぎしたやつ。実は私、今流行りの転生者というヤツなのです。まさかゲームの中でも使えるとは思ってなかったけど、まあ偶然の産物というヤツ。レベル上げの時についウッカリとね……。ゲーム内魔術と違って詠唱必須じゃないし、溜めがいらないから便利なんだよーコレ。
リーダーさんに頼まれたのは、ぶっちゃけアリスちゃん討伐のお手伝いでした。それもこの一発で台無しだけどな。まさか私の魔法がボスを一撃必殺してしまうほど威力高かったなんて……! よかった。現実世界で自制出来ててホント良かった! 使ってたら大変な事になる所だった!
「ふぇぇーん! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「ところでそのー、アリスちゃん? そんなに泣き叫ばれて許しを請われても、お姉さん困っちゃうカナーなんて……」
もうそろそろ泣き止んで頂きたい。同行していたリーダーさん——他の人はダメージが抜けてなくて来ていない——も、扱いが分からなくてオロオロしてるし。さすが紳士。今までノータッチだったから経験不足なんですねわかります。
私たちが戸惑っている間に、アリスちゃんは自分で涙を拭って言った。
「……うん、わかった。もう泣かない」
うん、お姉さん強い子は好きだよ。素直な子もね。流石というべきか、アリスちゃんってば仕草がいちいち可愛い。
「あと、プレイヤーのお兄さんたちにはごめんなさい。もう、無理やりお茶会したりしません」
無理やりお茶会とは、この子が攻略組にやらかしたヤンデレじみた所業である。木の根で縛りつけたあげくママゴトの如く、お茶やお菓子を無理やり流し込んだとか。そりゃ死屍累々にもなるわーといった感じではある。
「ところでお姉さんのお名前教えて欲しいの」
「アイリスだよ」
「……まあ、奇遇だわ。縮めたら私と同じ名前ね!」
「言われてみればそーだねぇ」
『アイリス』の短縮形は『アリス』。そういえば転生前はよく、そう呼ばれてた。妙な縁もあったもんだ。
「そうだわ! お姉さん、私とお友達になりましょう? なってくれたら、次の世界へのトビラを開けてあげる!」
ん? それはゲーム攻略が一歩進むという事では……? 少しでも攻略に貢献できるのは喜ばしい。普段は自分優先で好き勝手している身の上であるし。あとこの子、ちょっと敬遠してた所はあったんだけど……もしや根は良い子なのではないだろうか。可愛い妹分……イイ。
しかもステージボスなので強いし、一緒にお出かけするのも楽しいかもしれない。そんな打算も浮かんでくる。ふとリーダーを見たら、なんかグッと親指立てて満面の笑顔を返してくれた。気が早すぎるよ! いや、友達になるつもり満々だけども!
「……ま、まあ良いんじゃないかな。友達少ないからイマイチ何したらいいかわかんないけどさ」
「それならお茶会っ、お茶会しましょう! お姉さんのこと色々知りたい!」
どんだけお茶会に縛られてんのこの子は……と思わない事もないけど、たぶん拠り所のようなものなのだろう。それに私自身について話すだけなら話題には事欠かない。念願の女子力も高まりそうです。ならば——
「よっしゃー、そんな事でよければ任せなさい!」
「あのー、俺はどうすれば……?」
ヤル気溢れる私とは対称的に、リーダーが所在無さげに手を挙げた。うーん、男子が女子のお喋りタイムに同席はキツかろう。なので「とっとと帰ってもらって結構です」と言ったら、なんか今にも捨てられそうになってる子犬のような目で見つめられた。けど、しーらないっと。
そして私は今日、不思議の国で『ぼっち』を卒業しました!