ぼくさつまじゅつしちゃん(仮)
やっぱり町の様子が気になったので——一度気になるともうどうしようもない——、キリのいいところでお茶会という名の一人ピクニックを切り上げて戻ってきましたはじまりの町!
……そこはある意味死屍累々でした。なんかお腹を膨らませた大量のプレイヤーが、うめき声をあげて倒れてたんだよ……一体何があったの。大食い大会でもしてたの? 平和か! ……いや、こんな時に一人ピクニックしてた私が言えるセリフじゃねーですけど。
ただ一つ言わせて欲しい。私は勇者でも英雄でもないただのゲーム初心者なので、自分の欲に忠実になっても良いと思うのです。チームワークの必要な攻略メンバーとか無理だから! 固定砲台でも良いならいけるけど、たまーに呪文噛むよ? 呪文唱えたりチャージするよりも、殴ったほうが早いってどっかの有名な魔術師も言ってた。自分のペースで進むって大事。とか考えている間にも——
「——クッ!」
新たに転送されてきた人達が数人。彼らは、お腹を膨らませてはいなかった。代わりに装備がボロボロだ。間違いなく戦いの跡がそこにはある。このゲーム装備の耐久度の再現が滅茶苦茶凝ってるので見た目もリアルなのだ。流石に痛覚はある程度遮断されてるけども、それでも辛そうだ。人数が人数なだけに、これは大事に違いない。よくよく見たら攻略組の有名人がチラホラ。……あれっ? もしかしなくてもこの人たちって攻略組の皆さん? 重要イベントの攻略に失敗でもしちゃったのだろうか……?
そして転送されてきた内の一人が、私を見て口を開いた。
「君は——殴って殺す撲殺魔術師ちゃんか!!」
はい! ってだれが歩く殺人鬼だ!? 名前広めたやつ出てこい!! こんなに可愛いダークエルフさんになんつー二つ名を付けてくれた。……たしかに殴る事もあるけど撲殺じゃないもん、居合斬りだもん!! あと時々刺殺。杖の尖った部分を使って、こーグサッと。そういえば、貴方たしか攻略リーダーさんですよね? 後でOHANASHI良いですか?
それにしてもゲームが始まってそんなに経ってないというのに、何故に有名人である攻略リーダーさんにまでそんな二つ名が広まっているんだ。
「むしろ開始して間が経ってないが故に、なんだと思う」
「リーダーさんエスパー!?」
「君の『解せぬ』という表情を見れば誰だって言いたい事はわかるさ」
「そこのところ詳しく」
「君、普通に他の人に混じってレベリングしてたろう? あれで目立たない方がおかしい」
なん、だと……?
私は普通に戦ってただけなのに、ただそれだけで撲殺魔術師とかいう可愛くないあだ名をつけられただってー!?
「俺らの中では『なんで魔術師選んだんだコイツ』って有名だよ」
「魔術師選んだのは趣味ですよっ。コツコツ地道に一体ずつ倒すより、一掃するほうが気持ち良いじゃないですか!」
現状だと、そこまで行けてないけどさあ……。後はゲームにまで現実を持ち込みたくないだけですよーう。私のプレイヤースキルは単体用特化だから、ゲームの中でくらいはパーっと派手に行きたいんですー。
「そ、そうか」
だというのに何故引いているのだリーダーさん。
「それはそれとして……頼みがあるんだが——」