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せんどうしゃアイリス


「まいどありー」


 おじさんの小気味好い挨拶を聞きつつ肉屋を後にした私、アイリス。やはり初心者向け金策なだけあって、野うさぎは実入りが良かった。目に付いてついつい買ってしまった、ほっくほくのコロッケを頬張りながら街を散策する。

 野うさぎ狩りに夢中になって、ロクに見て回ってなかったからなぁ……。元々ファンタジー系のナーサリーテイルを選んだのは、ファンタジー世界でお気楽に観光旅行できるからだったのだけど。……早速、本末転倒している。

 まあでも、いろんな所に行くためにはそれなりにレベルが上がらないとだし……資金も必要だし……って、普通の旅行より大変な気がしてきたぞぅ!?

 ……いやいや、まずはこの街の観光から始めれば良いじゃない。はじまりの街なら旅費はタダである。



 まずやってきたのは『はじまりの広場』。その名の通り、ログインしてきたプレイヤーが初めに転送されてくる場所である。ちなみに死に戻りした時とかもココに転送されるよ!

 一度に大人数が転送されることも想定して、コンサートが開けそうなくらい広い。中央には巨大なモニュメント、ほか広場を囲うようにアートな石像が配置されていて圧巻です。……動き出したりしないよね、これ?

 それにしても、なんだか人が多い。初日限定イベントでもあるのだろうか? 恐る恐る近くの人に声をかけてみた。


「え、何があるか知らないでここに来たって?」

「(こくこく)」

「メッセージボックス見てみ」


 そういえばそんな機能もありましたね。メッセージ交換する相手なんかいないから眼中になかったわ。というわけで確認確認っと−−ふむ、ピコンと点滅する新着マークを発見。開いてみる。


『運営より重大発表がありますので、十八時に『はじまりの広場』までお越し下さい。妖精ノーグより』


 重大発表とな。でもこういうお知らせって、もっと分かりやすく周知すべきでは? 現に私みたいに気付かなかった人間もいるし。それにしてもあの妖精、ちゃんと名前あったんだ……。


 十八時というと、あと二、三分か。見物していくのも悪くはない。……しっかしまー、ログインしたのがサービス開始の十三時だったから、かなりの時間野うさぎ狩りに夢中になっていた計算になる。もう初心者卒業でいいのではないだろうか?


 次なる獲物は何にしようかと悩んでいたら、あっという間に時間になった。のだが−−


 ──突如。空の色が反転した。


 そして何時の間にか、ふわりとひるがえるフード付きマントを着た、男とも女ともわからない何かが上空にいた。


『親愛なるプレイヤーの諸君。私はこのゲームの創造主である』


 ──私、これ知ってる!


「あれでしょ、デスゲーム宣言した後しばらくしたら、しれっと何処ぞのギルド幹部になって高みの見物するタイプのラスボス! こないだラノベで見たもん!!」

『──ちょ、其処のキミ。誤解を招くような不穏な思考ダダ漏れだからね!? デスゲームとかしないから!!』


 創造主とやらのメッキがいきなり剥がれた。興ざめである。


「『高みの見物』と『ラスボス』を否定しなかった辺り、何か企んでるのは明白では?」


 明後日の方向を向く創造主。図星か。


『と、とりあえず。このゲームからログアウトするには、六つのエリアを攻略しなくてはならない事をお知らせしておく!』


 ふむ。デスゲームじゃなくてログアウト不可パターンでしたかー。つまり──


「今ラスボスを倒せば、残りは五つだよね!」


 というわけで元勇者奥義・真空斬りィ!


 管理者に迫る衝撃波。他のプレイヤーも、「言われてみれば一理ある」と次々に戦闘準備に取り掛かる。


『え、ちょ、えぇっ!?』


 これが後に語り継がれることになる『プレイヤー錯乱一揆』の顛末である。創造主はボロボロになった上、泣いて帰っていった。……ワタシ悪くない。




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