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ちゅうにだよっ☆



 ──皆さんはご存じだろうか? この世には一度罹患すると二度と治らない不治の病がある事を──





 ふと気付いた時には、既にその場所に私は佇んでいた。周りには何もない。足下の雲と青空の二色しかない不思議な場所。


 ここは話に聞く天の国とやらだろうか?


「やぁ、勇者アイリス」


 戸惑う私に声をかけてきたのは、金髪碧眼の少年だった。その服装はシンプルながらも、一目で人の技術で作られた代物では無いとわかる。この子──いや、この方は。


「もしや、ラーマ様……ですか?」

「──ああ、そうだよ」


 やはり。ラーマ様といえば、この世界の最高神。ただ立っているだけでも溢れ出す高貴さというかオーラが畏れ多い。


「ところで勇者アイリス。折り入って提案があるのだけれど」


 私の内心を知ってかしらずか、ラーマ様は割と気さくに話しかけてくるのがつらい。まあ当然聞きますけど。


「実は最近、あちら──ニホンというのだけど──の世界からの転生者が多すぎてねぇ……」


 ふぅとため息を吐くラーマ様。話によると、そのせいで魂の数のバランスが崩れてきているんだそうな。なので、とりあえず逆輸入してみようとしたらしいのだが、あちらから来た方々はこの世界の方が居心地が良くて、なかなか承諾してくれないそうだ。

 そして出た苦肉の策が、こちらの現地人の魂をあちらに転生させるという事らしい。さしずめ私は第一陣の実験台だそうで……。


「とりあえず、今まで身につけた技能と記憶は転生特典で引継ぎになるんだけど、どうかな?」


 ラーマ様直々のお願い。断るなど、もちろん言語道断です!





 最初の頃こそ『かるちゃーぎゃっぷ』で驚きの連続だったが、この国に生まれて早十三年。もう慣れた。というか今の私は最早、立派な日本国民である。

 せっかくラーマ様に貰った転生特典だが、魔物の居ないこの国では使う機会はまず無い。魔法より家電のが便利だし、剣術も使う相手がいないから宝の持ち腐れ。


 そして現在、私が一番恐れているのはアレだ、高齢者ドライバーである。彼らは一様にこう言う。「ブレーキ踏み込んだら急発進した」と。


 ちゃうねん。アナタたちが踏んだのブレーキやなくてアクセルや!


 巻き込まれたら痛いだけじゃ済まなそうなので、高齢者マークの付いた車や、ご年配が運転席に座っている車を見かけたら、極力近づかないようにしている。

 アレは大型の魔物の突進に匹敵するヤバさである。元勇者でも怖いものは怖いんです! 魔法でどうにかすればいい? 私は今生では殺生しないと決めてるの! 犯罪者にはなりたく無いし、後味が悪いのも嫌だ! 回避に使えるのが攻撃魔法位しか無い元勇者を舐めないでほしい。



 あともう一つ恐れているものがある。それは一度罹患すると二度と治らないと言われる不治の病。

 それにかかると目が疼いたり、右腕が疼いたり、力が制御できなくなって暴走状態になってしまうらしい。主に中学二年生が罹患すると言われるその病。そして今まさに中学二年生になろうとしている私。



 ──今年は試練の年になりそうである。



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