054.竜は珍しいみたいです。
「ガンテツさん、転生者って聞いた事ありますか?」
「転生者?こことは違う世界から来た奴らの事だろ?たまに現れたとか聞く事があるな。」
「そ、そうなんですか・・・意外と多いのですか?」
「いや、10年に1人といった所か?そこまで多い物でも無いが、少なくは無いな。で、それがどうした?」
そこまで珍しい事じゃないんですね。意外と認知されてるようですね。
「この刀ですが、その転生者が作った物らしいです。けっこう危ない物ですね。色んな意味で・・・」
「ほう・・・転生者が作った物なのか・・・それで作り方なんかがわからなかった訳か。」
まぁ、それもあるでしょうが普通の刀じゃ無いからなんですけどね。私が転生者である事を話したらガンテツさんはどんな反応を示すでしょうか・・・
「えっとですね・・・この刀なんですが、お返しするのが難しいかもです。」
「どういうことだ。」
あ、怒りますよね。うん、わかります。修理で預かった物が直ったのに返せないなんて怒って当然ですね。
「ガンテツさんだから正直に言いますね。この刀、刀であって刀で無いんですよ。」
「なんだそりゃ。それが返せない理由になるのか?」
見せるのが1番でしょうね。
「コトハ、菊一文字を貸してくれる?」
『はい、かぁさん。』
コトハに菊一文字則宗を返して貰います。
「キク、出ておいで。」
菊一文字が軽く光るとキクが出てきます。
『カオリ様、呼んだですか?』
ガンテツさんが口をパクパクやってますね。そりゃ刀がいきなりロリっ娘になれば驚きもしますよね。
「ええ、ちょっとあなたの事で色々お話しがあるので呼んだの。」
『そうなのですね。それで、何のお話しなのです?』
あなたの所有権のお話しですよと言えたらどれだけ楽でしょうね。誰の所に行きたいと聞けばとりあえず私たちの所に来るでしょうし・・・難しいです。
「おい、嬢ちゃん・・・そりゃ何だ・・・」
「まぁ、驚きますよね。これが刀であって刀で無いの答えです。これは転生者が趣味で作った物なので一般の人が持つには危ないのですよ。」
「なぁ、嬢ちゃんよぉ。それはお前さんが一般の人間じゃ無いって事か?」
頭の回る人ですね・・・いえ、ドワーフですか・・・私が普通で無い事は薄々気がついていたでしょうがそろそろ核心に近づいたでしょうね。自分でばらしましょう。
「ガンテツさん、ここだけの話にして欲しいんですがいいですか?できないなら、刀持って逃げますよ?」
「お、おぅ・・・俺も商売上、客の情報は誰にも言わねえよ。」
なら大丈夫そうですね、職人であるガンテツさんを信じますよ。
「気がついているかとは思いますが、私も転生者です。ですからこの刀の事はよく分かっているつもりです。だから余計にここには置いておけないと思うんですよ。」
「そっか、普通じゃ無いとは思っていたが、転生者とはな・・・だからといって、はいそうですかと言って渡すわけにはいかんぞ。」
まぁ、そうでしょう。わかってますよ。代わりの物が必要ですよね。
「この刀の複製品を作りました。こうして人型にならないだけでほぼ同等の物です。これを渡します。それではダメですか?」
これでいいと言ってくれるとありがたいんですが・・・ちょっと弱いですかね・・・一応物も渡しましょう。
「これか・・・う~ん・・・」
何かうなってますね。ダメですかねぇ・・・
「嬢ちゃん、その刀は遺跡から発掘されたやつだ。けっこう高価な物だぞ。」
ああ、これはもう少しなんとかなら無いかって事ですか・・・何か出せって事ですね。
『カオル様、その刀は私よりずっといい物なの。私より上位の素材を使っているの。』
え、そうなのですか?確かに古龍の鱗を使った憶えはありますが・・・
「確かキクには竜種の素材が使われていたんですよね。」
『ハイです。』
「な、竜の素材だと・・・」
あ、竜の素材って貴重なのでしょうか・・・
「ガンテツさん、竜の素材って貴重だったりします?」
「貴重とかどうとかの問題じゃねぇぞ。」
これは相当貴重な素材だったようですね。それで私の作った剣はそれより上位の素材が使われているって事ですか・・・古龍の素材の事は内緒にしましょう。
「私はよく分かりませんが、修理した刀よりいい刀だそうですが・・・それではダメですか?」
何かガンテツさんがブツブツ言い始めましたね。竜より上位の魔物がどうたら言い始めましたよ・・・ヤバそうですね・・・
「わかった。この刀と交換って事で手を打とう。その代わりと言っちゃなんだがこれからも何かあったらよろしく頼むぞ。」
ああ、そういう事ですか。何かあったら手を貸せって事ですね。まぁ、いいでしょう。持ちつ持たれつって事で、防具関連の事は全部ガンテツさんに任せる事にしましょう。
「わかりました。私も防具関連の事はガンテツさんに頼りますからね。」
「おう、任せとけ。」
「それと、私が転生者であるって事も内緒で頼みますよ。」
個人情報は漏らして欲しくないですからね。しっかり口止めをしておきましょう。
預けていた剣と作って貰った盾を受け取り帰る事にします。
「嬢ちゃん、また何か面白いもんがあったらもってこいよ。見せて貰うだけでもいいからよ。」
なるほど、見るだけでも刺激になるのでしょう。仕事熱心ですね。
さて、これでやるべきは全て終わりましたし。もう少し色んな町を回ってみるか、早めにお店を立ち上げるか・・・悩ましい所です。
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