120.登るしかないみたいです。
「燃え盛る紅蓮の炎よ、深淵の灯火よ、その身を刃とせよ。穿て、ファイヤーバレット!」
炎に包まれた小さな石が飛んでいくと思っていたんです・・・オークにコツンと当たって睨まれる程度だと思ったんですよ。
あんな、直径1メートルはある大きな岩が真っ黒な炎に包まれて飛んでいくなんて思わないじゃないですか・・・
オークもオーガも合わせて半分くらい吹っ飛びました・・・消し炭のようなものがいくつか残っているだけです・・・爆風がこっちにまできました。今は、アヤハとイロハが残りのオークとオーガを片付け終わったところです。
「カオリ、今のはなんだったのか説明をしていただけますか?」
王女殿下に詰問されているところです。
「えっと・・・ファイヤーバレット?」
「なんで、疑問系なんですか。それに、あんなファイヤーバレットなんてありません。」
いえ、私もあんなふうになるだなんて知りませんでしたよ。できることでしたら私が説明して欲しいくらいです。
「私だって、なぜあんな風になったかわからないんですから。説明なんてできませんよ。」
杖にファイヤーバレットの呪文を入れたのがいけなかったのでしょうか・・・それともあの呪文でしょうか?今度、確認する必要があります。今はダメですけど・・・
「と、とりあえず休憩してから、上に行きませんか?」
「まぁ、いいでしょう。後でしっかり説明してもらいますからね。」
いえ、だから無理ですって。私がわからないことは説明できませんよ。
私が黒焦げにした魔物は、何も回収できませんでしたが、アヤハ達が倒した魔物からはいくらかの素材と、魔石が回収できました。
「ところで、王女殿下。お聞きしたいのですが、ダンジョンは下に向かっていくものだけですか?」
もしここが私たちが入ったダンジョンとは別の所だとして、上が出口だとは限りませんからね。
「そうですね。ダンジョンは全て下に降りていくものばかりです。私が知っている限りではですが。」
「そうですか、なら大丈夫ですね。ダンジョンと同じようなもので、塔とかはないですよね?」
「塔ですか?それならばありますよ。未開の地にある古の塔というものです。誰も出てきた人はいないと聞きます。」
まずいじゃないですか・・・転移トラップで飛んできたのが、その古の塔だったら上に行けば行くほど魔物は強くなるのですよね・・・
「ここが、その古の塔だという可能性は?」
「無いとは言えません。出てきた人がいないのですから・・・中の情報は皆無ですし。」
なんかフラグっぽいですね・・・いやですよ。実はここがその古の塔でしたなんて・・・
「王女殿下、どっちに行きます?上か、下か・・・」
「普通に考えれば上に行くのが正解でしょう?」
まぁ、そうですね。では上にしましょう。
「では、上に行くということで。イロハ、引き続き先頭をお願い。コトハは周囲の索敵を。アヤハも警戒をお願いね。」
これでいいでしょう。
『私はどうすればいいのです?』
あ、キクもいたのですね。
「キクは私の近くで警護をお願い。」
『わかったのです。』
王女殿下、何か聞きたいのでしょうが、ダメですからね。私たちは目の前にある階段を上り、上の階へと進むのでした。
「王女殿下、私にはあそこに窓のようなものが見えるのですが・・・」
通路を歩いていくと、明らかに窓のようなものがあります。ガラスはありませんが、窓だと思います。
「ええ、そうですね・・・窓ですね。」
普通、ダンジョンに窓はないと思うのです・・・塔になら窓くらいあってもいいかもしれませんが・・・
「アヤハ、周囲の確認をお願い。」
『はい、お母様。』
「やっぱり、塔みたいですね・・・」
「え、ええ。あまり考えたくないことですが、塔のようです。」
『お母様。ここの周りはかなり広い森になってます。ここもかなり大きな塔のようです。』
そうですか・・・やっぱり塔なのですね。
「王女殿下、その古の塔以外にこう言った塔をご存知ですか?」
できれば知っていて欲しいですね。
「人の住んでいない塔などはいくらもありますが、これほど広い塔というのは知りません。」
そうですか・・・やはりここは古の塔という所なのでしょうか・・・
「今からでも引き返して、下におりますか?」
私が下に降りることは提案した所でコトハが何か言ってきます。
『かぁさん、下に降りる階段はもうないよ。』
「もうないって?」
『うん、かぁさんが登ってしばらくしたら消えちゃったの。』
そうですか・・・上に行けということですか・・・これが帰ってこれない理由の一つのようですね。
「どうやら、上に行くしかないようです。」
とんでもない脱出劇になりそうです・・・
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