第78話 悪魔の気配、燃えあがる闘志 7
それぞれに抱えている物はあろうが、三人の歓迎会もとりあえずは終わった。これからは、また新しい毎日。夢への精進がはじまる。自分の志を果たす、そんな感じの精進が。その精進はきっと、平坦ではないだろう。どんなに優れた才能があたって、現実の厳しさはそう簡単には超えられないのだ。だからこそ、自分の足を進めなければならない。
この美しい風景、活気に溢れた町の風景を見て、そこに潜んでいる影を乗りこえなければならないのだ。この腐った世界、悲しみに満ちた世界を変えるためにもね? 俺達はずっと、その光を信じなければならない。俺は両手の拳を握って、椅子の上から立ちあがった。
「よし」
気合いは、入った。
「う、ううん」
周りの少女達も、起きた。少女達はそれぞれにベッドの上から起きあがって、またそれぞれに自分の服を着はじめた。「自分の頭が起きていた奴ははやく、それがまた寝ていた奴は遅く」と言う風に。それぞれに自分の調子こそあったが、その全員が「よし!」と輝いていた。少女達は自分達の装備品を装うと、真面目な顔で俺の足を促した。
「行こうか?」
「うん!」
行こう。
「俺達の冒険へ」
俺は「ニコッ」と笑って、部屋の中から出ていった。少女達も「それ」につづいて、部屋の中から出ていった。俺達は宿屋の廊下を進み、その食堂へと向かって、今日の朝食を食べた。今日の朝食は、美味しかった。大人数で泊まれる大部屋を選んだ事で、料理の等級が僅か上がったのだろう。一人や少数で今日の朝食を食べている人よりは、ちょっと贅沢な朝食が置かれていた。俺達は「それ」を平らげて、椅子の上から立ちあがった。
「さて」
これは、俺。俺は店主に宿の料金を払うと、真面目な顔で仲間達の顔を見わたした。
「今日も、頑張りますか?」
その返事は、「うん」だった。みなさん、気合いがかなり入っているね。
「早速、ギルドセンターに」
向かった。ギルドセンターの中はもちろん、冒険者達の姿で溢れている。彼等は意識の違いこそあれ、それぞれに仕事の打ち合わせを行ったり、依頼の交渉に励んでいたりしていた。俺達はウェルナのところに行き、ビアラ達の加入を伝えて(ウェルナは何故か、微妙な反応だったが)、新しい依頼の一覧表を見た。
「炎鳥の討伐、か」
「はい。つい最近ですが、よく現われるようになったようで。炎鳥は、遊撃竜や刃虎と並ぶ強力なモンスターです。炎鳥はそれら二体に力こそ及びませんが、その再生能力が高くて。一部の冒険者には……既に知っているかも知れませんが、『不死鳥』と呼ばれています。何度倒しても蘇る、文字通りの不死身。『永遠の力を得た、聖獣の一体である』と」
「聖獣、ねぇ。モンスターは、聖なる存在じゃないけど」
でも、それだけ強いモンスターには違いない。俺は(幸か不幸か)、それに会った事はなかったが。
「とにかく」
「はい、倒す相手に変わりはありません。炎鳥はそこを通っただけで、眼下の地面を焼きはらってしまいますから。そこに住んでいる農民達は、堪ったモノではありません。今回の依頼も、そんな農民達から頼まれた領主の」
「なるほど。なら、早めに倒した方がいいね。封土の作物が焼かれてしまったら、多くの人が飢え死にしてしまう。本当に一刻を争う事態だ」
俺は、自分の仲間達に目配せした。「この依頼でいいね?」と言う合図だ。
「炎鳥に困っている人達を助けたい」
少女達は、その言葉にうなずいた。先程の合図もそうだが、その反対意見は誰もいなかった。少女達はみんな、今の話に闘志を燃やしている。昨日はどこかよそよそしかったティルノも、今日は真剣な表情を浮かべていた。
「オレ達も、同じだよ」
マドカさん、殺気がバチバチです。
「可愛い鳥なら別だけど。そう言う害鳥なら、すぐに倒さないとね?」
シオンさんも、「ニヤリ」としている。
「炎の鳥なら、そのまま焼き鳥にしてやるわ!」
クリナさん、ちょっと面白いです。
「封土の畑が、焼かれたなんて。これは、すぐに向かわないと!」
リオも、「うんうん」とうなずいている。
「食べ物は、どんな人にも必要だからね。美味しいご飯を奪う奴は、絶対に許さない!」
ビ、ビアラさん……。
「骨の髄まで、みんな噛みくだいてやる!」
き、君もなんですね、カーチャさん。
「鳥は、犬の餌だもん!」
少女達は、それぞれに「ニコッ」と笑いはじめた。ううん、みんないろいろと凄いね。ミュシアとティルノは、二人だけで話しているけれど。それ以外は、文字通りの闘志に溢れていた。
「ゼルデ!」
お、おおう、みんなの声が重なった。それには、周りの冒険達も思わず驚いている。
「頑張ろう?」
「とうぜん」
それ以外に何があるのだ?
「絶対に倒す。それが俺達の役目だ」
俺は仲間達の足を促して、ギルドセンターの外に出た。ギルドセンターの外はもちろん、晴れている。宿屋の中から出る時も同じだったが、その空に燃えるような太陽が浮かんでいた。俺は太陽の表面をしばらく眺めて、少女達の顔に視線を戻した。
「要らない火は、消さないと。この世に必要なのは、希望の炎だけなんだ」




