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第45話 追い剥ぎ少女、再び 2

 ビックバード。つまりは、巨鳥か。大きさは遊撃竜よりは小さいものの、その戦闘力はやっぱり高い。別名、「空の強襲者」とも呼ばれるモンスターだ。


 ビックバードは(通常は)単独で動くモンスターだが、それが夫婦になっていたり、その間に子どもがいたりすると、家族総出で冒険者に襲ってくる。


 ある意味、とても家族愛に溢れたモンスターだった。雛鳥は生まれてから数日で飛べるようになり、餌である動物や人間を襲うようになる。だから、雛鳥のいるところ、「その親鳥も一緒にいる」と考える方が自然だった。


「それを狩るわけだね?」


「はい。彼等はその、繁殖力がとても高いですから。つがいの一組でも見のがせば、あっと言う間に増えてしまうわけです」


「それは、知っているけど。ううん」


「どうかしましたか?」


「え? あ、いや、別に。ただ」


 俺は自分の顎を摘まんで、クリナの顔に視線を移した。クリナの顔は、「え?」と驚いている。


「『剣士にはちょっと、辛い相手だな』と思って」


 それに目を見開くクリナ様。別に怒っているわけではないが、あまり面白くはないらしい。俺が彼女の目を見ている間も、複雑な顔で俺の目を見かえしていた。


「剣士は普通、地上戦がメインだから」


「だけど!」


 クリナ様、声が大きいです。シオンがビックリしているではないですか。


「この間は、アイツ等を倒せたじゃない」


 アイツ等とはもちろん、遊撃竜の事だろう。クリナは「俺の力を受けていた」とは言え、空中にいた遊撃竜の一体を倒してしまったのだ。そのとんでもない身体能力があれば、ビックバードも簡単に倒せるかも知れない。だが、それでも……。


「不安はある」


「不安?」


「そう、不安が。あの力には、たぶん」


「たぶん」


「副作用がある。それも、悪い意味での。あの力は、その場しのぎだ。窮地に立たされた仲間を救う、一瞬の強化魔法。強化魔法は、ずっとかけられるわけじゃない」


 強化の途中で魔力切れ、それも充分にありえる。正確な情報は雑記帳に教本の内容をまとめてみないと分からないが、それでも用心するにこした事はない。不安な世界を突きすすむコツは、何にもまして「これでいい」と思わない事だった。


「だから、不安だ」


「ふうん、そう。だから」


「だから?」


「『アタシは、必要ない』って?」


「そんな事は、ない。君は、このパーティーに必要だ。地上の敵を倒すためにも、その力がどうしてもいる。前にも言ったけどね? クエストの最中に出てくるモンスターは、討伐対象のモンスターだけじゃないんだよ? それら以外にも、いろいろなモンスター達が出てくる。君には、それらの雑魚を倒してもらいたんだ」


「アタシに?」


「そう、君に。俺達が空の敵に意識が向いている間は、地上の敵が疎かになっちゃうからね。地上の敵に攻められたら厄介だ。一応はまた、パーティーの周りに結界を張るつもりだけど。モンスターがそこに攻撃を加えれば、ね?」


「ああうん、それはよく」


「だからさ」


 俺は、目の前の彼女に頭を下げた。「それが彼女に対する礼儀だ」と思ったからね。


「パーティーの規模が大きくなれば、それだけ使える戦術も増えていく。今回の場合は、空中がメインだ。実際には飛べなくても、空中への攻撃手段が必須になってくる。剣士のそれでは、空中には届きづらい」


「分かった、わよ。その代わり!」


 クリナはなぜか、俺の腕に絡みついた。しかも、思いきり。お陰で、鎧越しから柔らかい感触を覚えてしまった。


「次のクエストは、アタシがメインでやれるヤツを受けてよね?」


「え? そ、それは」


 そこから先がつづかなかった。周りの女性陣が、じっと睨んできたから。受付嬢のウェルナですら、無言で俺の事を見つめている。俺は「それ」に脅えるあまり、クリナが俺の腕を放した後も、震える顔で周りのお嬢様方を見わたした。


「み、みんな、どうしたの?」


「別に」


 ひぇええ、みんなの声が重なったよ。その中には、受付嬢のウェルナすらも入っている。


「自分の胸に聞いてみれば、いいじゃない?」


 そうは言われましてもね? 別にやましい事は、何もしていないよ?


「はぁ」


 なんで、溜め息?


「まったく」


 なんで、呆れ顔?


「これは、相当かもね?」


 新参者のシオンさんすら、何かに呆れているご様子。君達、一体何なのだ?


「まあ、いいか。ようは、負けなきゃいいんだし」


 シオンは、頭の後ろに両手を回した。それは別にいいのだが、彼女が言わんとした事は結局最後まで分からなかった。

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