初めての馬車、父との生活
私は、馬車に揺られながら考えていた。
なぜ、この男が自分をフローレス伯爵令嬢だと思っているのか。
私は幼い頃に両親に捨てられた。下町の路地で途方に暮れていたところ、育ての父であるレイモンドに拾われ、今はカフェになっている小さな家で育てられた。
その父も2年前の暮れに病にかかりそのまま逝ってしまった。父が、しばらくは生きるのに困らない程度のお金は残しくれていたが、家の一部を改築し、カフェを開き働いていた。
大好きだった父を思いだしながら馬車についている窓の外を眺めていると、突然、私を攫うかのごとく、この馬車に乗せた男が話し出した。
「突然お連れしてしまって申し訳ございませんでした。私、パトリック殿下に仕えております、ブレンダンと申します」
「ブレンダン様?私はルシルです。あの・・・本当に、私、フローレス伯爵のことは何もわからないのです。人違いではないですか?」
家からここまで、一切わからないと言っても、聞き入れてもらうことができず、ようやく落ち着いて自分がフローレス伯爵とは関係ないことを訴えた。
ブレンダンと名乗るこの男はよく見るとやはり貴族階級の人間だと感じるほど整った顔立ちをしていた。
「ルシル様。私も詳しいことは聞いておりませんが、人違いではないと思います。どうかこのまま、私どもについて来て頂けませんか?」
「・・・はぁ」
納得することはできなかったが、もう馬車に乗せられてしまっている以上、飛び降りることもできない。万が一、飛び降りたとしても怪我だけではすまない可能性もあるので、このままついて行くことにした。
なんにせよ、生まれて初めて乗る個人馬車である。
外観に反し中は思ったほど豪華ではなかったが、揺れによる体への負担を軽減するためかクッションがふわふわとして心地よく感じた。
しばらくキョロキョロと興味深く見ていたが、心地良い揺れに身を任せているうちに眠くなってきてしまった。
読んでいただきありがとうございます!
第2話目いかがでしょうか?この先どうしようかと悩みながら投稿しております!
2021年6月14日に編集しました(*≧∀≦)
2021年6月15日脱字治しました!