心臓の高鳴り
ブレンダンとルシルが出て行った部屋で、先ほど出て行ったばかりの少女のことを考えていた。
薄い水色の少女は、緊張した面持ちで部屋へ入ってきた。体格は線が細いが、四肢が長く、可憐という言葉がしっくりくるような姿であった。
その可憐な躯で、どこかの王女かと見間違えほどの堂々とした優雅な挨拶をした。その後に向けられた瞳は、溢れんばかりの大きさで、一度見たものの目を離さないのではないかと思うほどであった。
ブレンダンから受けた報告では、貴族とは似つかわしくない瞳であると聞いていた。外見も一般的な茶色の髪であると。
確かに、髪は茶色だ。だが、ウェーブがかかって光の加減で赤や黄色にも見える美しい髪だ。
瞳も悪魔と呼ぶにはもったいなほどの美しさでガラス細工のような儚さに引き込まれそうだった。
ドクンッドクンッと脈打つ心臓の高鳴りを沈めようとしていたところ、扉をノックしてブレンダンが戻ってきたようだった。
「殿下、ルシル様をお部屋にお連れしてまいりました」
ルシルを部屋へと送りとどけたらしいブレンダンが報告をした。
「ブレンダン、ルシルの様子はどうだった?」
この部屋を出て行く時のルシルがあまりにも動揺していた様子を思い出した。
「自宅に帰りたいと訴えておりましたが、王命であることを説明して留まるようには話しました。また、明日から教養を身に付けるための教育が始まることもお伝えしました。」
ブレンダンは淡々と報告した。
「おい。俺はルシルの様子を聞いたのだ。ルシルに話した内容を報告しろと言っていない」
ブレンダンは、パトリックが何を言いたいのか分からず首をかしげた。
「お言葉ですが、まだゆっくりと考える時間もなしにいろいろなことを言うのは酷だと思い必要事項だけ話してまいりました。気になるのであれば、ご自身でご確認なさってはいかがですか?一応、婚約者という立場になりますので。」
ブレンダンに自分で確認と言われて、それもそうかと思い立ち、椅子から立ち上がった。
「そうだな。少し様子を見てくる」
そう言い残すと部屋を出て行ってしまった。
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2021年6月15日編集しました!