5
「はい。私の刻印はこの人の刻印にリンクしています。」
刻印?リンク?何のことだ?
「一ノ瀬さん、私と昨日会いましたよね?」
少し、高めの声。聞いたことのある声色。というか、夢の中で聞いた桜の声と全く同じ。でも、こんなしっかりしていないはずだ。
「はい。刻印桜の前ですよね。」
「じゃあ、このようなものが体のどこかに出現しませんでしたか?」
どこか桜ではない彼女が、俺に向けて右の手のひらを突き出した。彼女の手のひらには俺と色違いのピンクの星の刻印があった。俺と同じように淡く光っている。
「はい、出ました。心臓のあたりに。」
そう答えると、彼女は少しこわばった。それから、へにゃっと笑った。思わず、呆然としてしてしまう。笑顔、かわいい。見たことのある笑顔。この顔は間違いなく桜だ。桜は、ニコニコしたまま言った。
「よかったぁ~、良くはないけど、私と対になっている刻印者、もうこの世にいないんじゃないかって思ってたぁ。さっきは、ちょっとキツイ感じでごめんね。七瀬に、ちょっと怖い感じにして、っていわれててね~。七瀬って言われてもわかんないか。こんにちは、一ノ瀬君。天空学園刻印部2年神楽桜です。」
同じ声のトーンだけど、さっきとは全然雰囲気が違う。もっと、柔らかい感じ。この感じは間違いなく桜。だけど、刻印者ってなんだ?
「一ノ瀬君は、刻印伝説知ってるでしょ?」
「うん。常識程度にね。」
「あれ、ほんとのはなしなんだよね~。」
ニコッと桜は笑っていった。は?ホントってどういうことだ?
「まあ、私が説明してもよくわからないと思うから、七瀬に説明してもらった方がいいと思うの。あっ、さっきからごめんね、七瀬って言ってもわかんないよね。」
一応うなずいておくが、七瀬って聞いたことあるんだよな。多分、前世の記憶だと思う。
「おじいちゃん!一ノ瀬君の制服ってある?」
「今から連絡して作ってもらおうと思ってたんじゃよ。」
うん?おじいちゃん⁇
「ちょっと待って、おじいちゃんってどういうこと?」
「そのまんまの意味だよ。校長先生は私のおじいちゃんなの。」
いや、そんな顔で言われてもね。桜、かなりのお嬢様だったのか。俺が通っている天空学園は、私立の大きな学園グループである。幼稚園や、小学校、中学校、高校、大学、ほかにも専門学校なども持っている。高校の校長は、学園長がやっているのは有名な話だった。
「で、制服って何?」
天空学園は、もちろん制服である。女子はセーラー服。男子は学ラン。昔から代々受け継がれてきた古いデザインの制服。だが、桜は違った。めっちゃ今風のブレザーなのである。白とピンクのストライプのネクタイに、襟の所には星のバッチがついていて、ベージュのジャケットに紺色のスカート。ジャケットの中には、ピンクのチョッキの様なものを着ている。ワイシャツは、一番上のボタンを開けており、ネクタイはそこまできっちりではないがきちんと結んでいる。人気者タイプだな。あまり気にしていなかったが、この格好で校内を歩いていたら目立つよな。というか、校内で桜を見たことがない。どういうことだ?その疑問に答えるように桜が言った。
お読みいただきありがとうございました。