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~プロローグ~

初めてきちんと投稿するので、誤字や文章のおかしい部分も多いと思いますが、よろしくお願いします。

「ごめんなさい、私、ほんとにごめんなさい。」

俺の前で、長い黒髪の少女が俺の名前を呼んで泣いている。俺は、下を向いてる彼女と同じ視線にするためにかがんだ。

「大丈夫。ーーーのせいじゃない。俺のせいだ。」

俺は、なるべく優しい声で彼女に話しかける。すると、彼女は、俺とばっちり目を合わせて言った。綺麗な綺麗な、パッチリとした桃色の瞳は、何かに怒っていた。

「私のせいよ。全部私のせい!私が終わらせないといけないのに、私には終わらせることができないの。私で、断ち切らないといけないのに…」

「ーーー‼急がないと!もう時間がない!」

違う少女の声が聞こえてきた。少し、怒っているような鋭い声。

「ーー‼刻印を!ーーーと合わせろ!もう、術が解ける!」

次は、何かを急いでいるかのように切羽詰まっている少年の声。

「でも、刻印を合わせたら…」

黒髪の少女が何かを呟いてる。急に、体中が痛いと叫びだした。座っていることも苦しくて、俺は地面に仰向けに倒れた。

「ーー‼大丈夫!?どうしたの?!」

黒髪の彼女が、俺に駆け寄ってくる。

「ーーー‼もう術が解けたの!もう引き延ばせない!急がないと!」

怒っているような鋭い少女の声がまた聞こえてくる。それでも、彼女は俺に近づく。

そして、声を小さくして俺に言った。

「私には、終わらせることなんてできない。だって…」

せっかく止まっていた彼女の涙が、また零れだした。

「もっと…ーーといたかった…一緒に食べたいものも、やりたいこともたくさんあったの」

彼女は、最後に涙を目にいっぱい貯めて、俺の耳に囁いた。

「ーー、目を閉じて。」

「これが、俺の…最後に…な…るのな…ら、最…後に…君…の笑顔…を見…せ…て。」

もう、息をするのでさえつらい。とぎれとぎれの俺の最後の願いを、彼女は、うなずいて笑ってくれた。今まで見た中で一番悲しげで、せつなげで苦しそうな笑顔だった。

「私、ちゃんと笑えてる?」

「あ......ぁ。」

そして、彼女は俺の心臓に手を当てた。俺は、目を閉じた。

「また、また、会おう…ね」

ポツリ、ポツリと彼女の涙が俺の胸に落ちるのを感じる。

「あぁ…もち…ろん…だ…」

「…封印…」

彼女が短くつぶやく。俺は、そこで意識が途絶えた。


「夢…か…」

目を開けると、いつもと変わらない自分の部屋だった。

「桜…」

おれは小さく、その名を呟いた。夢に、出てきた黒髪の少女の名前だ。ありふれた名前だ。それでも、この名前を俺は確かに知っていた。そしてこの町のどこかに彼女がいるってことも。


お読みいただきありがとうございました。

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