表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シマネキヅキ~The World of SHIMANEKIDUKI~  作者:
二つの国の対立
65/77

テンレイ山脈

シエラ達は、シャーキス達にデルタミクシアへ下されて、そこから山の中をテンレイ山脈へと歩いていた。

正確には、デクス、ショーン、シエラ、シャデルは低く飛び、それに運ばれて義朋、寿康、アーサー、ゴードンは宙を浮いて進んでいた。

ゴードンは最初、走って進んでいたのだが、結構な音がするので、国境に近付くにつれて、シャデルが持ち上げて進む事にしたのだ。

国境を警備していないだろうと思われても、もし気が変わってこちらへ兵士を配置していたら、足音を簡単に気取られるだろうからだ。

山は険しく、頂上付近の尾根を行くのは目に付くし危ないという事で、少し下った場所の林の中をメグミへ向けてミマサカへと向かっていた。

デルタミクシアまで来るのに、休みなしでノンストップで飛んで、五時間掛かった。

さすがのシャーキス達もフラフラで、到着した直後にシャデルが気を補充した上、あの辺りに生息しているマシラという、グーラ達が好むという魔物をどこかから狩って来て、食べさせて労っていた。

その手際の良さには、シエラも驚いた。

シャデルは、本当に何でも出来る男のようだった。

シャーキス達はそれで回復して、ダッカへと帰って行った。

それから日が傾いて来る中を、必死にミマサカを目指して進んで、今はもう、とっぷりと日も暮れている。

先頭を行く、ショーンが振り返った。

「そろそろ、この辺りで休憩するか。もう、デルタミクシアを出て三時間ほどだ。」

シエラは、義朋をぶら下げている腰も段々だるくなって来ていたので、頷く。

「はい。腰に来てます。」

ショーンは、減速しながら苦笑した。

「お前、正味ぶら下げてるだろう。気で持ち上げてればいいんだよ。そしたら腰に重みは感じねぇ。気の玉に入れたら早いのになー。」

シエラは、慎重に義朋を下ろして、自分も着地した。

「あれは難しいってデクスが言ってた。」

デクスは、あちらでアーサーを下ろしながら言った。

「主には出来るのだぞ?ただ、力を絶たずにおらねばならぬから、初心者には危ないだけで。主の力は、アレクサンドルよりあるようだしの。」

ショーンは寿康を、シャデルはゴードンを下ろして、着地して言った。

「確かにオレには出来ねぇが、シャデル陛下には出来るよな。陛下、まとめて運びますか?」

シャデルは、首を傾げた。

「別に良いが、あの玉は薄く光るからの。それに、空を飛ぶことに慣れておらぬものには、かなり恐怖を感じるものらしい。何しろ、透明の薄い膜しかないゆえ、全てが丸見えでな。我らは落とす事はないとわかっておるが、俄にはそれを信じられぬものよ。」

言われてみたら、シースルー状態で飛べないのに上空を運ばれる恐怖は、半端ないだろう。落ちても自分ではどうにも出来ないのだ。

「…アレクサンドルは、何の躊躇いもなくあやつらを玉に入れて運んで行ったわ。となると、あやつらはかなりの恐怖を感じておったのやもしれぬ。」

シャデルは、頷いた。

「縋るものもない空間で空高く数時間も飛ぶのは、飛ぶことが出来ぬものには苦痛であろうな。心中察するに余りある。」と、義朋達を見た。「だが、確かにそれが速いのも事実。どうする?主らは耐えるか?」

義朋は、ビクッとして寿康達を見た。アーサーもゴードンも、縋るような目で義朋を見ている。確かにハーネスにぶら下げられただけでも結構怖かったのに、持つ場所もなく空中を行くのはかなりの恐怖だ。

義朋は、おずおずと答えた。

「その…我が王が今にも危ないとおっしゃるのなら。我らも、背に腹は変えられぬと思いますが…。」

ショーンが、手を振った。

「ああ、良いよ。一人一人運んでもまとめて運んでも何時間も変わる訳じゃねぇし。もう夜だから、少しぐらいスピードを上げても音に気付かれないだろう。やっぱり、同じやり方で行こう。」

シャデルは、いそいそと食べ物を出して準備する寿康を後目に、メグミの方向を遠く見た。

「…何やら、不穏な。エイシンの気が立っているのを感じるな。何かを恐れているような…?なんであろうか、何か起こったのか。」

シエラは、シャデルを見上げた。

「え、戦の準備ですか?」

シャデルは、首を振った。

「分からぬ。戦というには兵が集まっておらぬし、あちこち気が散っておるな。ヤマトから、何かしたのだろうか。」

コンラート…。

シエラは、思った。コンラートがおとなしくヤマトの城で自分達を待っているとは思えない。何か探ろうとして、誰かを差し向けたんだろうか。

「…急がなきゃならねぇ。」ショーンは、言った。「とっとと飯食って出発だ。」

シエラは頷いて、寿康から渡されたパンを齧った。ご飯が食べたい…。

シエラは、思った。主食は米なのに、保存が利くので持ち歩くのはパンばかりなのだ。シエラからしたら、パンはおやつの感覚で、そればかりだとお腹が心許ない。

だが、贅沢は言っていられなかった。

こんな場所で調理をしていられないし、急がなければならないのだ。

皆で座ってパンを齧り、缶詰めのニシンの煮付けを食べていると、シャデルが、ピタリと動きを止めた。

「…陛下?」

ショーンが言う。

シャデルは、暗闇の中を凝視した。

「…1キロほど向こうから、四つの命が近付いて来るのを感じる。」

1キロ?!

シエラは、仰天した。そんな向こうの命を気取れるのか。

だが、思えば遠くメグミの様子を探れるのだから、1キロぐらい何でもないのだろう。

「オレにはまだ気取れねぇ。」ショーンが言った。「猟師とかじゃなくて?」

シャデルは、首を振った。

「夜中であるぞ?山の気は全て把握しておる。この四つは、メグミ方向から真っ直ぐにこちらへ移動し続けていて、1キロまで迫ったので申したのだ。兵士ではないだろう…それにしては数が少ないからの。もしかして、戦が始まるのではといち早くディンダシェリアへ向かう民なのかもしれぬな。」

四人というと、家族か何かだろうか。

シエラは、同情すると同時に父母と妹が気になった。きっと、不安にしているだろう。シエラがいきなりヤマトへ行ってしまい、何が何だか分からないはずだ。もしかしたら、裏切り者の家族として、肩身の狭い思いをしているかもしれない。

そう思うといたたまれなくて、シエラは言った。

「ディンダシェリアへ行かせてやりたいですね。難民の受け入れはしてくれるのでしょうか。」

シャデルは、考え込む顔をした。

「城を出る前に書状を送らせたばかりであるから、国境を跨いだ先の両国はまだ、準備が出来ていないだろうの。」

ということは、あちらへ行っても落ち着く先がすぐには見つからないだろう。

しばらく黙って黙々と食事をしていた一同だったが、ショーンが立ち上がった。

「…さ!難民のことは気になるが、リーマサンデとライアディータに任せておくしかねぇ。こっちはその数が増えねぇように、戦を阻止しに行くのが先決だ。そいつらの目につかない間に、さっさとここを発とう。そろそろオレにも、気配が読めるようになって来た。」

実はシエラにも、もう気配が読めていた。

家族というより、大人が四人という感じなので、恐らく仲間同士ではないだろうか。もしかしたら、現状に耐えられなくて、新天地を求めて来たのかもしれない。

どちらにしろ、放って置くのも気が掛かりだったが、確かにその耐えられない現状を良く出来るのは、今事情を知る自分達しか居ない。

なので、ショーンが言うのに渋々従おうと食べ物を片付けて、重い腰を上げた。

「参るぞ。それぞれ、受け持ちの人をぶら下げるのだ。そのハーネスとやらに入るのだろう?」

義朋は、急いでハーネスを装着しながら頷いた。

「すぐに。」

四人がハーネスを着けるのを見守って、シエラもそれを腰に巻き付けていると、ショーンが遠く真っ暗な林を凝視しながら、言った。

「…なんか覚えのある気だな。」

シエラには、まだ気の色まで、しかも個々人の識別までつかない。

デクスが、ハッとした顔をした。

「…何もしたこと。シエラ、この気はセイジ達ぞ。ライナン、ミコトの気もする。もう一人は分からぬが…。」

シエラは、仰天した顔をした。誠二達が…?ヤマトに居たんじゃないのか!

「そんな!どうやってこんな所にまで?!コンラートはまさか、誠二達にまでディンダシェリアへ行けとか言ったの?!」

デクスは、顔をしかめた。

「知らぬ。なぜにこのような所にまで来ておるのだ。」

ショーンが、凝視したまま言った。

「もう一人はイライアスってミマサカの術士だ。ってぇ事は、あいつらはお前と一緒に逃げた奴らなんだな?」

シエラは、頷いた。

「はい。誠二は知ってるでしょう?残りの二人も観測会で知り合った人達で、みんなヤマトの王城に居るはずなんです。どうしてこんな所に…どうやって。」

それを聞いたシャデルが、言った。

「ならば話を聞かねばの。ミマサカの術士に連れられて来ておるが、兵士は居らぬ。ということは、どこかに護送されているわけでもないようよ。」

ショーンは、頷く。

「イライアスはエイシンに不信感を持ってましたからね。どこかで三人を見つけて、逃がそうとしているのかも知れません。」

どちらにしろ、話を聞くしかない。

八人は、そこで四人が近付くのを待った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ