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シマネキヅキ~The World of SHIMANEKIDUKI~  作者:
二つの国の対立
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デンシア3

デクスは、シャデルを見上げて、言った。

「何を聞きたい。我はそう深くコンラートの事を知るわけではないぞ。封印が解けた時、コンラートが傍に居ただけ。混乱する我を、ヤマトの神殿へと連れて参ってくれたのだ。そこからぞ。」

シャデルは、頷いた。

「コンラートはどんな様子よ。天で見ておった時は、あれはウラノスにべったりで学ぶこともなく、天から出たくないと駄々をこねておるばかりであった。それが地上へ降りて、どんな様子であるのか聞きたいのだ。」

デクスは、答えた。

「相変わらずウラノスの事を慕っておるのは分かるの。だが、ウラノスも台座で呼んでもそうそう出ては来ぬらしい。地上へ下りた意味を考えよと言われておるようで。ただ、リュウガが居らぬようになって、あれが急に王代理に担ぎ出されてしもうて、最初は躊躇っておったようだったが、急に顔つきが変わってサクサクと処理するようになった。考え方がしっかりして来たように見える。」

シエラも、頷きながら視線を落とした。

「そう…コンラートは、とってもハキハキしてて。オレが、何も思い出さないのに…。」

デクスが、それを聞いて気遣うようにシエラを見た。

「また主は。気にするでない。本来、天での記憶など無いままに生涯を終えるもの。地上と天は違うのだ。天の記憶を持っているなど、言うなれば…ええっと、ドーピングのようなものよ。学びもそう多くは無かろう。前の生の記憶を使うなど、卑怯と言われたらそうなのだからの。」

それを聞いたシャデルが、渋い顔をした。

「確かにその通りよ。とはいえ、今は天が絡んだ事態であるし、あちこちに思い出した刻印持ちが居るし、我は思い出しておって良かったと思っている。地上の命達が、巻き込まれて己の学びに支障をきたすような事態にはしたくないからの。」と、デクスを見た。「コンラートは、よう我慢しておるな。あれなら民など構わず攻めこんでリュウガを取り返そうとするだろうに。」

デクスは、頷いた。

「確かに民が犠牲になろうと、天の循環に還るだけでまた生まれるとか言うておったが、止めた。地上では地上の繋がりがあって、やはりその共に生きたもの達と別れるのはつらいものだとの。アレクサンドルが上から封じ直して、リュウガが殺される事はない。そう説得したのだ。」

しかし、それにはシャデルは首を振った。

「ショーンがあちらへ潜入して調べて参ったには、その封じは問題ないが、術士達が各々術を放ってその下に八重にも封がされていて、リュウガはそれにじわじわと押し潰されつつあるそうな。もって二週間だと、あれもなんとかせねばと焦っておる。」

それを聞いた義朋が、慌てたように割り込んだ。

「そのような!我が王にもしもの事があっては、戦は止められぬ!陛下を失う事など、絶対にあってはならぬのに!」

シャデルは、息をついて頷いた。

「分かっておる。しかし、アレクサンドルが掛けた術は我ぐらい力が無くては解けまい。ショーンにもそれは無理だった。ならば…やはり、リュウガを取り返すのに手を貸さねばならぬか。」

デクスが頭を下げた。

「シャルディーク、こんなことを頼める義理ではないが、アレクサンドルがいつ到着するかも分からぬ。すまぬが、リュウガ王を助けるだけでも力を貸してはもらえぬか。戦だけは、どうあっても阻止せねばならぬ。コンラートが居るゆえ、ヤマトの民は恐らく大丈夫だろう。だが、ミマサカの罪もない民達が、犠牲になるのは見過ごせぬ。一般の民達は、本当に何も知らぬのだ。コンラートの性質なら、リュウガが殺されたとなれば皆殺しも厭わぬだろう。そんな惨事を目の当たりにしとうない。」

シャデルは、黙って考えていたが、必死に見つめるシエラにも目をやって、そして息をついて頷いた。

「…仕方がないの。我しか出来ぬなら、やるしかない。だが、表立って行くわけにはいかぬ。あくまでも我個人がリュウガを助けるのだ。国や大陸は関係なくの。そうでなければ、我は動く事が出来ぬ。国として内政に干渉することは出来ぬのだ。」

シエラは、何度も頷いた。

「それでもいいです!とにかく、オレの父さんと母さんと、妹が居るんです。コンラートがミマサカに攻め込んだら、きっと無事では済まない。だって、みんなメグミに住んでるんですから…戦になって、首都が無事に済むはずはないんだ。」

シャデルは、頷いた。

「主の地上での家族か。わかった、では参る。とはいえ、気付かれぬように参るのは難しい。弱まって来ておるとはいえ、空の網はまだあるので飛ぶわけにも行かぬしな。とりあえず、リーリンシアへ一度参って、そこからミマサカを目指そう。」

シャデルが、龍雅を助けるのを助けてくれる。

シャデルの力を目の当たりにしたわけではなかったが、コンラートからは龍雅と同等の力を持つと聞いていた。龍雅の本気の力を見たわけではないし、いったいそれがどんなものなのかシエラには分からなかったが、それでも自分達より大きな力を持っているのは確かなのだ。

何より、あのコンラートが言うのだから、間違いないだろう。

シエラがホッとしていると、脇に垂れていた布が揺れた。

そして、出て来たのは、ショーンだった。

「…ショーン先生!」

シエラは、思わず叫んだ。

ショーンは、驚いて後ずさるシエラを軽く睨んだ。

「お前、オレに何も言わずに出て行きやがって。あのな、オレはお前がクロノスだって知ってたんだっての!だからおかしなことにならねぇように見張ってたってのによ、大事な事もオレに隠して。結局デクスが復活したのは、お前達の仕業だったんだろうが!」

シエラは、それを避けるように手で顔を隠しながら言った。

「だって、あの時はあれが最善だって思ったんです!オレは自分の事をクロノスなんて知らなかったし、ウラノスが出て来て術を教えてくれたから…!」

デクスが、慌ててシエラの前に出て、言った。

「あの事故の原因は全て我にあるのだ!あの時はまだ、ウラノスの黒い我の封印が無かったゆえ目覚めてすぐの混乱で力を暴走させて崩落させてしもうた。封印を解いたのは確かにあの場に居た者達だが、ウラノスが知りたい真実は我の中にあると申したようで…ただ、政務の偽りを暴きたいと思ってやった事なのだ!」

ショーンは、そんなデクスを睨んだが、じっと見つめてから、肩で息をついた。そして、言った。

「…まあ、こいつらが何かしたんだろうなとは思ってたさ。シエラは、まだ何も思い出してはないがクロノスだ。力があるんだから、封印を解く術さえ知ったらできるだろうってな。ゆっくり信頼関係を築いてから話を聞いて行こうって思ってたのに、あの後すぐにメグミから消えちまって。だから聞けずじまいだった。」

シャデルが、ショーンを見て言った。

「主が申しておった通り、我はこれからミマサカへ参る。まずはリーリンシアへ参って、海から飛んで参ろう。それしか、今は方法はあるまい。」

ショーンは、それに首を振った。

「陛下、それじゃあヤマトにしか上陸出来ません。陛下が前回通った、テンレイ山脈を抜けて行く道を行く方が、メグミには近いでしょう。それで行きましょう。」

シエラは、地図を頭に浮かべた。テンレイ山脈は、そのままディンダシェリアの山脈に繋がっていて、途中に国境がある。しかし、リーマサンデやライアディータの国境警備は緩い。よく分からない、ディンダシェリアの国へと入ろうとする民が居ないからだった。

入ったとしても、あちらのシステムとこちらのシステムが違うので、腕輪が違う。なので、現金を持っていなければあちらへ行っても何も出来ないし、すぐに異国民だと気取られてしまうのだ。

そして、リーマサンデは科学が発達していて、いろいろな道具がある。ヘリコプターという飛ぶ道具まであるので、命の気が無くて魔法が使えないし、こちらの民には不利だ。

ライアディータの方は、術に長けているので、一般人ですら戦う術を持っている。普通の民が行って、太刀打ちできるものではない。

そんなわけで、ディンダシェリア側から見てミマサカは全く脅威ではないので、警備もしていなかった。

逆にミマサカから見て、ディンダシェリアはかなりの脅威なのだが、友好関係を築いているので大丈夫だという認識があるようだ。

「…あの、でも戦が始まったらあの辺りも国境警備が始まるんじゃないですか。ミマサカの民は、ヤマトヘ逃げられないとなるとこちらしか逃げ道は無いんです。難民が流れ込んで来るんじゃ。」

シャデルは、頷いた。

「で、あろうな。戦にならぬ方向へと持って行きたいが、しかし龍雅を騙し打ちしたとなればそれも難しかろう。コンラートが踏みとどまっているだけでもありがたい。このままでは、ミマサカの民が逃げ場を求めて出て参ろう。それを阻む事は、恐らくライアディータもリーマサンデも無いと思う。入ってすぐの辺りは、住民が居らぬしの。支援はする。だが、兵士達は入れぬ。なので、両国の王には我から警戒するよう知らせを送っておく。」

シャデルは、言うが早いか傍に膝を付くサマルに手を差し出した。サマルは、慌てて懐から紙を出して渡し、ペンを渡した。

シャデルはそれにサラサラと何かを書いて、そしてサマルに渡した。

「この内容で、正式に書状を作ってライアディータのアーロン王と、リーマサンデのリークス王に送れ。」

サマルは、ぴょこりと頭を下げると、それを持ってまた、駆け足でそこを出て行く。

シャデルは、ショーンを見た。

「主も参るの。では、まずはデルタミクシアを目指そう。飛べぬ者達は、シャーキス達に送ってもらってデルタミクシアからは地上を参ろう。地上すれすれを飛べば大丈夫なのだが、グーラ達は大きいので目立つ。とてもあちらまで行かせるわけにはいかぬしな。」

ショーンは、今にも飛び出して行こうというような風で、言った。

「急ぎましょう。出来るだけ早くリュウガ王を助け出したい。あのままでは、本当に危ないんです。どうしても助け出さねば。」

それを聞いたこちらのヤマトの兵士達も、落ち着かない風で言う。

「今から出てもらえましょうか。我が王の事が、気になって仕方がなりません。」

義朋が、悲壮な顔でそう言った。ゴードンが、その肩に手を置いて、沈痛な面持ちでいる。

シャデルは、それに頷く。

「すぐに出る。シャーキス達は疲れておらぬか。とりあえず、あやつらの様子を聞いて、大丈夫そうならすぐにデルタミクシアまで飛んでもらおう。ここからまた半日ほどかかるが、主らは大丈夫か。」

そういえば、途中ライアディータの首都、バルクで昼食を摂って、それから何も食べていない。

自分達は乗せてもらっている背中で食事も出来るだろうから、このまま出ても大丈夫だった。しかし、もう夕方だが、シャーキス達は大丈夫だろうか。

「…シャーキス達は、途中で食事も出来ないし、先に済ませてもらっておいた方がいいかもしれません。」シエラが、言った。「オレ達は最悪空でも食べられるけど、シャーキス達はそれが出来ないし。」

シャデルは、それには首を振った。

「あれらは命の気があればとりあえず持つ。我が補充してあやつらを持たせよう。申し訳ないが、デルタミクシアまで主らにも食事は我慢してもらうぞ。出来るだけ早くテンレイ山脈へ入った方が良い。コンラートが内偵させていて、リュウガの窮地を知ったらすぐに攻め込むのではないかと案じられるのだ。そうなったら、ミマサカは民を出さないために国境警備を強化するだろう。入り込むのが面倒になる。それまでに、ミマサカへ入っておかねば。」

状況は悪い。

言われてみたらそうなのだ。コンラートが、おとなしく黙って城で籠っているだけとは思えない。調べさせていたとして、それが優秀な術士だったら、もしかしてショーンと同じように、龍雅が危ない事を気取るのではないだろうか。

そうなったら、コンラートが烈火の如く怒って攻め込んでも、おかしくは無いのだ。

そう思うと焦って来たが、シャデルは落ち着いた様子で歩き出して、そうして出発の準備をサクサクと始めたのだった。

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