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シマネキヅキ~The World of SHIMANEKIDUKI~  作者:
二つの国の対立
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デンシア

シャデルは、デンシアの城に戻って政務を片付けると、居間へと戻って来た。

災害の後の復興はスムーズに進んでいるようで、もうシャデルが逐一指示を出さなくても順調に進みそうな様子だった。

ショーンが、戻って来たシャデルを迎えて言った。

「陛下、時間が惜しい。落ち着いて来たなら、なんとかヤマトへ向かいませんか。」

シャデルは、考え込む顔をした。

「しかし、恐らくアレクサンドルならなんとか我に話をしようとこちらへ向かっておるのだろう。ならばここに居なければ、面倒な事になろうし。」

ショーンは、それでもイライラと言う。

「リュウガ王が、あのままでは死んでしまうんですよ?ヤマトはとても平和に統治されていて、王を失ったらみんな路頭に迷ってしまう。エイシンの思う通りになっても良いと言うんですか。」

シャデルは、息をついた。

「分かっておる。だが、内政に干渉は出来ぬのだ。あちらにはあちらの歴史があって、その上で成り立っておる。我らが外から何某かするわけにはいかぬのだ。もしかしたら我らが知らぬ何かがあるのやもしれぬし、ようよう調べてからでなければ手を出す事は出来ぬ。デクスの事もある…あれの事もアレクサンドルに聞かねば。」

ショーンは、焦りを何とか胸に仕舞い込もうと同じように息をついた。龍雅が死んだら、恐らくコンラートがヤマトを治めるのだろう。そうなった時、あの激しい性格が何をするのかと考えると、ミマサカの罪もない民の事が案じられて仕方がないのだ。

「…陛下、戻った時に申していませんでしたが、実はコンラートがリュウガ王の従弟として地上に降りています。」

シャデルは、驚いた顔をした。

「コンラートが?そんな場所に降りているのか。」

ショーンは、頷く。

「ミマサカの城へ、リュウガと一緒に来た時に顔を見ました。オレの顔を見ても反応しませんでしたし、記憶は無いようでしたが、元があの性質なんです。リュウガ王が死んだ後、あのコンラートがミマサカに何をするか。今、攻め込んでいないのが不思議なくらいなんです。もしかして、側近たちが必死に止めているからかもしれないし、リュウガ王が死んだとなったらそんな抑えも利かなくなるでしょう。あの力をもって王座に就いて、あの性質だったら大惨事は免れないのではないかと心配なのです。」

シャデルは、それを聞いて長く息を吐いた。コンラート…ウラノスから離れず、ウラノスに心酔していて自分の学びには全くな命だった。まだ未熟なコンラートなら、従兄が殺されでもしたら確かに皆殺しにする勢いで攻め込むだろう。

「…困ったことよ。どう動いたら良いものか。とはいえ、軽はずみに動けぬ事は変わらぬのだ。とにかく情報が必要よ。まだ二週間は時があるのだろう?ならば、ギリギリまでアレクサンドルを信じて待とう。」

ショーンは、首を振った。

「二週間はオレの予想であって、もっと早いかもしれないんです!出来るだけ早く…もし、三日待っても来なかったら、オレは単独でもう一度ミマサカへ行きます!」

シャデルは、ショーンの剣幕に眉を寄せたが、仕方なく頷いた。

「分かった。それならばそうせよ。だが、主はこちらの立場を背負っておるのだと弁えよ。主の行動一つで、こちらの立ち位置が決まる。真実が分からぬのに、ミマサカと敵対関係になるような事にはならぬようにの。」

ショーンは、下を向いた。つまりは、助け出したければ密かにやれと言っているのだ。

ショーンが助け出してしまうと、サラデーナどころかディンダシェリア全てがヤマトについたという事になってしまう。もし、ヤマトに知られていない非があったとしたら、取り返しのつかない事になるのだ。

ショーンは、黙り込んで答えることが出来なかった。シャデルはそんなショーンを見て、確かに見殺しは気持ちの良い事ではないが、下手に手を出す事も出来ない立場なのだ、と心の中で思っていた。他の世界の事まで、視野を広げる余裕もない。自分達の大陸も、これほどに大きいのだ。自国の民を平和に治める方が優先しなければならないのだ。

二人が、気まずい空気の中で向き合って黙っていると、ふと、ライアディータの方向から、感じ慣れた気が複数近付いて来るのを感じた。

ショーンが、これはもしかしてシャーキスとハーキス、それにルークの気では、と窓の方へと寄って、遠く気を探った。

「…シャーキス達が来たんじゃ。」

シャデルは、椅子に座ったまま、思っていたのとは違う顔でショーンを見返した。それは険しい、鋭い目だった。

ショーンが、思わずぎょっとして目を丸くすると、シャデルは言った。

「…デクス。デクスの気がする。あれらの背に乗ってこちらへやって来るのは、デクスぞ。」

ショーンは、体を固くした。デクス…自ら乗り込んで来たのか。

「…まさか、シャーキス達はデクスに言いくるめられて。」

シャデルは、首を振った。

「分からぬ。だが、ここへ来たのなら度胸のあることよ。我の前に出て、我を昔のように謀る事が出来ると思うておるとしたら愚かな事よ。」

シャデルの目は、鋭く光って空を睨んでいる。

その空には、遠く点々とグーラ達の羽ばたく様が見え始めていた。


シエラは、海の向こうに見えて来た大きな街に建つ城を指差した。

「あ!もしかしてあれがサラデーナ城?」

尻の下の、ハーキスが答えた。

『そうだ。いつもは直接行きたい部屋へ降りるのだが、今回はそうも行くまい。城の庭にでも降りるか。』

シャーキスが、デクスの下で言った。

『庭へ降りよう。シャデル王に、参る事も知らせておらぬしな。ルークも、ソッと降りるのだぞ?主はたまに人を落とすからの。』

それを聞いて、その背に乗っているアーサーと義朋が身を強張らせる。

ルークは答えた。

『シャーキス、いつの事を言うておられるか。オレも少しは成長しておるわ。』

そうして、これ以上はないほどゆっくりと城の庭へと着地し、三体のグーラ達は人型へと戻った。

そこへ、男が一人駆け寄って来た。

「シャーキス!ハーキス!ルーク!」

三人は、そちらを見た。

シエラは、男を見て固まった。

見覚えがある顔だったからだ。

「…翔太先生。」

シエラが思わず言うと、翔太はシエラを見た。そして、驚いた顔をすると、言った。

「なんでぇ、シエラじゃねぇか!お前、国を抜け出してヤマトへ行っちまって、親父さんもお袋さんもそりゃあ心配してたんだぞ!栄進王にも強く叱責されてたしな。」

シエラは、バツが悪げに言った。

「先生も、あっちに居たんじゃないんですか。国に帰ってるんですか。」

翔太は、答えた。

「オレの国はここじゃねぇ。ライアディータ国民なんでぇ。だが、シャデル陛下にの指示であっちへ行ってたから、また内政不安で留学生達を連れて戻れって命令が来て、ここへ戻って来た。それより、何しに来たんでぇ。ヤマトからミマサカへ入れねぇだろう。よくここまで来られたな。」

義朋が、答えた。

「私はヤマト軍士官の義朋です。あの、王の一大事で、至急こちらのシャデル陛下にお話をせねばと、リーリンシアからクラトス殿に連れられてダッカへ渡り、後にこちらのシャーキス殿らに助けられてこちらへ運んで頂きました。シャデル陛下は居られますでしょうか。」と、懐から書状を出した。「ただ今の王代理であられる、王のお従弟のコリン様よりの書状をお持ちしました。」

翔太は、それを受け取って顔をしかめた。

「今も言ったように、オレはここの国民じゃねえ。ちょっと待ってろ、シャデル陛下の臣下に渡してくるから。」

そうして、翔太は城の中へと走って行く。

遅れて来た兵士達が、困ったように言った。

「その…では、しばしこちらでお待ちを、ヤマトの使者殿。」

義朋は頷いて、デクスを見た。

デクスは、ここへ来て何も話さなかった。恐らくは、自分が何か言う事で場がおかしくなるのを恐れているのだと思われた。

何しろ、ここはデクスを消したいと思っているだろう、シャデル王の本拠地なのだ。最初から自分がデクスだとこれまでのように言って、まともに話を聞いてくれるとは思っていないようだった。

シャデル王が、話を聞いてくれる王だと信じるしかない。

シエラは、待つ時間が限りなく長く感じた。



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