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シマネキヅキ~The World of SHIMANEKIDUKI~  作者:
二つの国の対立
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ディンダシェリアへ

挿絵(By みてみん)

その頃、デクスはシエラと他四人を連れて、クラトスとトリトン、そしてエサイアスの背に分かれて乗せられ、ディンダシェリア大陸上空を飛んでいた。

クラトスの背にはデクスと義朋、トリトンの背にはシエラと寿康、そしてエサイアスの背にはアーサーとゴードンに分かれて乗せられていて、先頭をクラトスが飛び、その両脇に少し遅れるようにして、エサイアスとトリトンが並んで飛んでいる。

さぞかし揺れるのだと思ったのだが、三体のディーラ達は飛ぶのがとても上手く、人を乗せて飛ぶことに慣れているようだった。

どうやら本気で飛べばもっと速いようだったが、上に乗る六人を気遣ってゆっくり飛んでくれているようだ。

デクスは、言った。

「懐かしいディンダシェリア大陸ぞ。しかし、シャルディークが居るのはアーシャンテンダ大陸だと言うておったな。このまま飛ぶとまだまだ掛かりそうだが。」

クラトスが、答えた。

『確かに一度、ライアディータで降りて休もうと思うておる。ダッカというこの地の同族が住む村があるのだが、夜明けにはそこに到着するだろう。我らだけなら、そう時は取らぬのだがの。』

デクスは、他のディーラに乗る者達を見てから、言った。

「…あまり時をとると…龍雅王が捕らえられているのだ。ならば、そこからは己で飛ぶ。地図は持っておるし、方角は分かるのだ。確か、シャルディークは今サラデーナの王であったな。首都はデンシアであったか?」

クラトスは、少し振り返って言った。

『ならば、少し休んだら我らも飛ぼう。分からぬだろう?』

しかし、デクスは首を振った。

「良い。主らは翼を振るゆえ、疲れよう。夜通し飛んでくれるのだから、後は己で参るから。主らは、同族と募る話もあろうし。ゆっくりするが良い。」

クラトスは、隣りを飛ぶトリトンと顔を見合わせたが、言った。

『…ならば、あちらへ着いたら他のディーラに乗り換えるが良い。この土地の事をよく知っておるから、迷う事は無いからの。我が頼んでやろうぞ。なに、こちらのディーラ達はもう、長く人と共存し、人を乗せる事には慣れておるから問題ない。では、休む間も無いのだから少し寝ておくが良いぞ。』

それを聞いた義明が、ぎょっとした顔をした。この、鐙も何も無い背で地上から数百メートルの上空で寝ろと。

「その…我らは起きておりますから。」

それを聞いて、デクスが苦笑した。

「まあ、寝てしもうては落ちるかもしれぬしな。少しぐらい寝ておらぬでも我らは大丈夫ぞ。」

シエラは、それをトリトンの背で聞いて、眠いとは言えなくなった。トリトンの背は温かいし、疲れているのでさっきからうつらうつらして来ていたのだ。

クラトスは、それを知ってか知らずか言った。

『疲れておるだろうが。落ちても拾いに行ってやるから心配せずとも良いのに。案外に、人は寝てもガッツリと掴まっておるものよ。』

…怖くて無理だ。

義明もアーサーもゴードンも、寿康も思っていたが、何も言わなかった。

そんな六人と三体の目の前には、リーマサンデとライアディータの境界に当たる、山岳地帯が見えて来ていた。


その頃、アレクサンドルと邦光、直秀、克重、アントニーの五人は、暗い、全く日が差さない地下の狭い洞窟を、ケインが残していた印の玉を頼りに進んでいた。

確かに、あちこちまるで網目のようになっている洞窟なので、少しでも別の方向へ行ってしまったら、迷って戻れなくなる可能性もありそうな場所だ。

その昔、噴火したらしい火山の溶岩が流れて出来た洞窟のようで、ごつごつとしていて当たると肌が傷つくので、気を付けて歩く必要もあった。

とても広い場所もあれば、這って進まねばならない場所もあって、ずっと浮いて進んで行くのは無理そうだった。

それでも、全員が浮いて移動できるので、まるで水中のように空気中を泳ぐように進む。普通の人が、歩いたり這いずり回ったりしながら移動するよりは、格段に速かった。

とはいえ、地から無尽蔵に命の気を吸い上げるアレクサンドルとは違い、邦光も直秀も、克重もアントニーもそこまで長い間、術を使って移動は出来なかった。

特にアントニーは、力はあるとはいえ、瞬発的に出す力が強いだけで、そう多くの気を持っている訳では無いので、ものの数十分で浮いていられなくなる。

なので、アレクサンドルが頻繁に止まっては、アントニーを始め、皆に術で気を補充し、そうやって何とか、休み休みでも進んで来ていた。

「…そろそろ、地上では朝が近付いております。」邦光が、アレクサンドルに背後から声を掛けた。「一度食事を摂って、ここらで休憩を。」

アレクサンドルは、横倒しに浮いて進んでいる、足元へと目をやって、頷いた。

「分かった。開けた場所があったら、そこで一休みしよう。」

邦光は、最後尾で皆の進み具合を見ながら進んでいたが、ほんの少し前に気を補充したばかりのアントニーの進み具合が遅い。恐らくは、何度も気を補充して無理に進んでいるので、体の疲れが取れないのだろう。

「アントニー?」邦光は、声を掛けた。「大丈夫か。食事をして少し休めば、楽になるぞ。」

アントニーは、頷く気力も無いのか、とりあえず答えた。

「分かってる。大丈夫だ。」

顔色が悪い。

邦光は、こんな旅になるとは思ってもいなかった。最初に思ったのは、恐らくミマサカの軍の中をかいくぐって行くので、軍隊経験の多いアントニーは頼りになるし、自分が足手まといにならないようにと思っていたのだ。

それが、実際は術ばかりが重要になり、こんな行軍も、徒歩で行くならアントニーはこの中の誰より鍛えているので、体力があった。

生まれ持った能力である、術士の才能ばかりは、体を鍛えてもどうにもならないのだ。それが、恐らく本人も歯がゆいだろう。

しばらく行くと、先頭のアレクサンドルが言った。

「…広い場所に出る。そこで休むぞ。」

邦光は、やっとかとホッとした。

狭いデコボコの空間を抜けると、地下に広がる広めの空間に出て、アレクサンドルはようやくそこで止まった。

そこは、小さな地底湖が脇にある、少し湿っぽい場所だった。

脇の少し平たくなった場所に腰かけると、アレクサンドルは地底湖に寄って行って、水を確認した。

そして、振り返って言った。

「…この水はとても良い。飲料水に出来るぞ。今汲み上げる。」

そして、腰の鞄から水筒を出してせっせと水を汲んで来た。こちらでは、見るからに疲れ切ったアントニーをごつごつした岩の上に寝袋などを大きくして乗せ、何とか横になれるように整えた上に寝かせていた。

「何度も気を無理に補充して使いを繰り返したから、体が消耗してるんだ。少し体を休めて、自分の気として体にしっかり馴染ませてから使うようにすれば、ここまで疲れぬから。」

邦光が言う。アレクサンドルは、頷いて水をコップへと注いでアントニーに手渡した。

「こればかりは、生まれ持った性質であるからの。とにかくは、ここで食事を摂って、しばし眠ろう。そうしたら体の力が元へ戻るゆえ、次は我が主を運んで参る。」

アントニーは、それを聞いて慌てて首を振った。

「アレクサンドル様にそんな事はさせられません。少し休めば、大丈夫です。」

アレクサンドルは、同じように首を振った。

「無理をしてはならぬ。主の能力はあちらへ行ってから発揮させようし。本来なら、ここを歩いて参るのだから、問題なかったのだ。我らが全員、術に長けておるからこうなっておるだけで。もしかしたら主が我ら全員を背負って歩く事になったやもしれぬのだぞ?今は己の体に合った療養をせねば。」

アントニーは、訴えるように言った。

「ならば、我は皆を追って走ります。足腰だけは強いので。同じスピードで行けますし、足元が悪い所だけ浮いて行けば、少しは体の気の節約になりましょう。雪山も最速で登ったんです、これぐらい何でも無い。」

アレクサンドルは、その言葉にアントニーの誇りのような物を感じて、頷いた。

「ならばそのように。主ならば術などに頼らずとも、我らと同じスピードで進むことが出来よう。さ、では食事ぞ。」と、直秀を見た。「直秀、準備は出来たか。」

さっきから、脇の岩と岩の間に板を渡して、その上に皿を並べて食事を振り分けていた直秀が、振り返った。

「はい。後はスープを温めますので、お待ちを。」

克重が皿を皆に渡して回る。その上には、アンナからもらったサンドイッチと、城から持って来たフルーツとチーズが乗っている。

そして、魔法で一気に温めたスープが良い匂いをさせ始め、邦光もアントニーも、やっとホッとしたような顔をした。

「…山の洞窟の中は冷えるし、温かい食べ物は有難い。食べてとにかくは休もう。」

食べ終わった食器は、皆で手分けして側の地底湖の水で洗いながし、五人はそれぞれ横になれる場所を見付けて、そこで目を閉じた。

光の魔法を消すと真っ暗だったが、その闇が逆に皆を安心させ、そうしてチョロチョロという水がどこからか流れて来る音を聴きながら、そのまま五人は眠りについたのだった。

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