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シマネキヅキ~The World of SHIMANEKIDUKI~  作者:
二つの国の対立
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トウキ山脈

挿絵(By みてみん)

先ほど座っていた場所にアレクサンドルを始め、邦光、直秀、克重、アントニーが座ると、広げたままにしてあった地図を見下ろした。

そこへ、スコットが来て、脇の椅子を引っ張って来て、座った。

「ダンナらが見ていた地図は、全体図でしかねぇ。オレ達地元民には、地元民が使ってる道があるんでさあ。ここから物をミマサカへ運ぼうと思ったら、アレク大河が山脈の向こう側からしかないんだから、こっちの細い川を使って行くしかねぇでしょう。」

細い川の方は、実はスエヒロ川と名前があるのだが、そうするとミマサカのトウキが、あちらではトウキ川と呼んでいるので角が立つと、地図に名前は表記しないことになっていた。

邦光は、顔をしかめた。

「トウキへ抜けるこの川か?これはダメだ。敵の只中へ自ら船で飛び込んでいくことになるからな。」

スコットは、同じように顔をしかめ返した。

「だからダンナ、オレはあっちへ行って来たんだ。川なんか使ってるはずはねぇでしょう。」と、地図上のトウキ山脈の場所を指で辿った。「ここを行くんでさあ。」

アレクサンドルは、それを見て息をついた。

「山脈は無理ぞ。魔物が多いし道が険しい。何より山も見張りが居るはずであるからな。抜け道があるのか?」

スコットは、得意げに胸を張った。

「山脈の地下には、空洞がたくさんあって洞窟になってます。トウキ山脈はミマサカとヤマトに股がってるので、洞窟もそう。そこを通るんです。」

アレクサンドルは、考え込むような顔をした。

「…恐らくこの土地を作った時に、噴火させた火山の影響で溶岩が空気を含んでそうなったのだろうの。しかし、無数にあるのでは。道があるとして、それをあちらでも知っていて見張ってはおらぬか?」

スコットは、首を振った。

「この道は、代々受け継がれるものなんでさぁ。もちろん、一番分かりやすい一本はあっちも知ってるし多くの商隊が使うのであっちでも警戒してますが、道は一つじゃねぇ。今おっしゃったように無数にあるんでさ。昔々、あっちへ行く道をいろんな冒険家達が開拓して、それぞれの家族に伝えたんで。オレだって若い時にゃ、親父と一緒に新しい道を探そうってちょっとした冒険を楽しんだもんだ。まあ、大体は行き止まり、また印を付けた場所まで戻る事になるんですが、あっちへ抜けた時の達成感は大したもんで、夢中になったもんです。ここらじゃ都会と違って、そういう娯楽ぐらいしかなかったんでね。」

ケインが、サンドイッチを片手にやって来て、椅子に座った。

「オレも、友達がまだこの町に居た時には夏休みに弁当を持って行きましたよ。」ケインは、微笑んで言った。「それが結構向こうまで行ってもまだ行き止まりにならなくて、凄い所へ出たな。」

アンナが、お茶を運んで来ながら頷いた。

「あの時はなかなか帰って来ないから、本当に心配したわ。知らない土地に出たって興奮気味に話してくれたわね。でも、お父さんが商売の役に立たないって。」

スコットは、顔をしかめた。

「だってな、あの時はなんて言ったか、メク?」ケインが頷く。スコットは続けた。「知らねぇ名前の山脈だとかそこの知らねぇ村の住人に言われたとか言って。そこで食べ物を分けてもらって、また戻って来たんだよな。」

アレクサンドルは、眉を上げる。邦光が、言った。

「メク?それは、ディンダシェリアの山脈の名前では。」

スコットは、少し驚いたように目を丸くした。

「ほんとですかい?オレ達はあっちの地理なんかからっきしで。」

邦光は、食い気味にケインを見た。

「ケイン、そこの住人は何か言ってなかったか?」

ケインは、遠い記憶を類い寄せるように眉を寄せた。

「ええっと…そういえば、ここを真っ直ぐに三日ほど歩けばラピンという村があって、そっちはその村より発展しているから何も分からないならそこで聞けばいいとか言ってました。それか、メクにはアトラスという王が治めるグーラとかいう種族の住み処があるから、そっちに聞いてもいいとか。」

アレクサンドルは、言った。

「グーラは翼竜ぞ。あちらでは人型をとって人と交流して生きておる。そうか、主らはディンダシェリアへ抜けていたのだ。ならば、その道を行けば、ミマサカの誰にも気取られずにディンダシェリアへ入れる。」

ケインは、慌てて手を前に出して振った。

「そんな、あの道はまともに歩いたら一週間以上掛かるんです!ずっと地下ですよ?オレ達だって、何度引き返そうと思ったか。」

邦光が、言った。

「それでも、ミマサカの中を歩いたら捕らえられるやも知れず、もっと時が掛かるかもしれぬのだ。それを思ったら、地下を行くのが一番良い。」

寿康も、それには頷く。

「我らは少し浮いて進む事が出来るゆえ、普通の人よりは早く進めるのだ。時速百キロまでは何とか。まあ、そんな洞窟ではスピードは出せないだろうが。」

ケインは、頷く。

「狭い場所もあるし、うねうね曲がっていますからね。這って進むしかない場所もある。でも、オレ達よりは速いでしょう。」と、手を上げて、手の平の上に緑色の玉を浮かせた。「これが、オレの印の玉です。波動を覚えてくだされば、それを辿れば行き着けます。でも、オレが案内した方が良いでしょうか。」

アンナが、それにはとんでもないと首を振った。

「あなたはまだ回復したばかりなのに、そんな大層な冒険なんかさせられないわ!」

スコットも、険しい顔で腕を組んで下を向いている。

邦光が、首を振った。

「良い。波動などすぐに覚えられるしな。それを辿れば、我らは問題ない。」と、アレクサンドルを見た。「一般人を巻き込むわけには行きませぬ。それでなくても、陛下のことは漏らさぬと決めておったのです。これらにこれ以上負担は掛けられませぬ。」

アレクサンドルは、考え込む顔をしていたが、頷いた。

「そうよの。知れば知るほどこやつらには危険が及ぶ可能性がある。」と、三人を見た。「スコット、アンナ、ケイン。主らはここで見たこと聞いた事を、絶対に誰にも漏らしてはならぬぞ。それが主らの命に関わる可能性があるのだ。もし、我らを探してミマサカの兵士が忍んででも来たら、知っているとなれば術を掛けられて白状させられ、殺される。忘れるのだ。」

三人は、ゴクリと唾を飲み込んだ。戦を起こそうとしている敵なのだから、確かに殺されてもおかしくはない。

「…誰にも。ミマサカがあんな風なんで、ここらの見回りに来ていたらしいとだけ、話しておきまさぁ。ダンナらが来た事は小さい町だしみんな知ってるから。それは言わなきゃ、逆に怪しまれる。」

アレクサンドルは、頷いた。

「それで良い。では」と、立ち上がった。「行かねばならぬ。暗いうちの方が見咎められる事もなかろう。ケイン、入り口に案内してくれるか。時が惜しい。」

ケインは、食べ掛けのサンドイッチを置いて、頷いた。

「はい。ご案内します。」

アンナが、慌てて立ち上がって言った。

「待ってください、だったら、サンドイッチを持って行ってくださいな。長い旅になるんです、食料はあった方が良いでしょう。」

そう言うが早いかアンナは厨房へとすっ飛んで行った。

スコットは、立ち上がって言った。

「オレも行きます。山まではここから一時間ぐらいでさ。」

アレクサンドルは、首を振った。

「ものの数分よ。」スコットが驚いていると、アレクサンドルは苦笑した。「我は飛べる。まとめて運ぶゆえ、大体の場所を申せ。そちらへ向かって飛ぶ。」

克重が、飛んで来たのを思い出したのか、顔色を悪くしながら言った。

「…力の玉に籠められて、運ばれるのだ。タキからここまでそれで来たので、数時間だった。ま、休まねば一時間ぐらいであったろうがな。」

アントニーも直秀も顔を強張らせた。

邦光が、呆れたように言った。

「お前達は弱すぎるわ。ちょっと高く飛んだぐらいで。爽快であったではないか。」

直秀は、邦光を睨んだ。

「あれが爽快だと感じるお前の気持ちが分からないな。」

スコットとケインは、不安げに顔を見合わせた。

そこへ、アンナが息を切らせて紙袋を持って入って来た。

「これを。一食分にはなりますから。」

邦光は、それを受け取って頷いた。

「すまないな。では、行こう。」

皆の不安な顔は変わらなかったが、それでも一同はアンナに見送られて、暗くなって誰もいない町の中を、町外れに向かって歩いたのだった。

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